高所得者の「年金保険料」が上がる!?年収いくら以上が対象になるの?

配信日: 2025.04.21 更新日: 2025.10.21
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高所得者の「年金保険料」が上がる!?年収いくら以上が対象になるの?
「高所得の会社員らが支払う厚生年金の保険料を増額する」といったニュースが話題になっているようです。
 
厚生労働省は厚生年金保険における標準報酬月額の上限の改正を検討していて、これが実現すると改定後に一定の年収以上の会社員の保険料が上がると予想されています。物価高が続く昨今、毎月支払う保険料が増額されると、家計の負担が大きくなると心配する人もいるでしょう。
 
そこで今回は、以前に実施された厚生年金保険における標準報酬月額の上限の改定をおさらいしつつ、今回検討されている件で年収いくら以上の人に影響するかを調べてみました。高所得者の割合も紹介しますので、参考にしてください。
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2020年に実施された標準報酬月額上限の変更で保険料はどうなった?

2020年に厚生年金保険における標準報酬月額の上限が変更され、一定の年収以上の会社員の保険料が引き上げられました。
 
日本年金機構によれば、厚生年金では、標準報酬月額の等級が1等級(8万8000円/報酬月額9万3000円未満)から31等級(62万円/報酬月額:60万5000円以上)に分けられていましたが、1等級が追加され、32等級(65万円/報酬月額:63万5000円以上)までとなりました。
 
厚生年金保険料は「標準報酬月額×18.3%(保険料率)」で計算し、被保険者負担分は折半額の9.15%です。2020年に実施された標準報酬月額の上限の変更にともない、変更前と変更後の被保険者負担分の上限額は以下のように増えました。

●変更前:標準報酬月額62万円(31等級)×9.15%=5万6730円
●変更後:標準報酬月額65万円(32等級)×9.15%=5万9475円

標準報酬月額65万円は報酬月額が63万5000円以上の人、つまり年収の目安としてボーナスを除く762万円以上の人に当てはまり、従来の保険料5万6730円から2745円増えて5万9475円に引き上げられました。
 
「年収762万円以上」はあくまでも目安であり、必ずしも標準報酬月額が上限の65万円(32等級)になるとは限りません。
 
というのは、標準報酬月額の決定は、毎年7月1日現在で使用されている事業所において、直近3ヶ月(4月・5月・6月)に受けた報酬総額をその期間の月数で割って算出し、その年の9月から翌年8月まで適用するからです。
 
毎月の給料に大きな変動のある人の場合は、年収762万円より低くても32等級になるケースもあれば、高くても32等級未満になるケースもある点に注意が必要です。
 

2027年9月からの標準報酬月額の上限の改正が実現すると保険料の引き上げは年収いくら以上が対象?

現在の標準報酬月額の上限は32等級の65万円ですが、報道によると2027年9月に68万円、その後71万円、75万円と段階的に引き上げることが検討されているようです。
 
もしも2027年に1等級増えると、24等級~32等級までは標準報酬月額が3万円刻みになっていることから、同様の基準が適用されると33等級の標準報酬月額の上限は68万円になると予想されます。
 
そうなると該当する会社員の厚生年金保険料の負担額は6万2220円となり、報酬月額が66万5000円以上、あくまでも目安ですが、ボーナスを除く年収798万円以上の人に影響が及ぶ可能性があります。今までの負担額は5万9475円だったのに、改正が実施されると2745円増える計算です。
 

保険料が引き上がる可能性のある高所得者の割合

ボーナスを除く年収798万円以上の人を高所得者として、厚生年金保険料の負担額を増やす方針が検討されていますが、日本において高所得者に該当する人の割合はどのくらいなのでしょうか。国税庁長官官房企画課の「令和5年分 民間給与実態統計調査-調査結果報告-」を基に、高所得者の年収を「800万円超」とすると、その割合は11%です。
 
厚生年金保険料の引き上げ案は、まだ検討中であるため決定事項ではありません。しかし今後標準報酬月額が75万円へと引き上げられて等級が増えると、報酬月額が72万5000円以上、つまりボーナスを除く年収870万円以上の人は、厚生年金保険料の負担額が現在の5万9475円から6万8625円と、約9000円増える可能性があります。
 

2027年9月からボーナスを除く年収の目安として798万円以上の人の保険料負担額が増える可能性あり

厚生年金保険における標準報酬月額の上限の改正を、2027年9月から実施することが検討されています。これが実現すると、一定の年収以上を稼いでいる人は、厚生年金保険料の負担額が増える可能性があります。
 
現状では、ボーナスを除く年収の目安として762万円以上の人の厚生年金保険料の被保険者負担額は上限の5万9475円です。この金額は2020年に実施された標準報酬月額上限の変更により、5万6730円から2745円増えました。
 
2027年9月の実施が検討されている今回の改正が実現すると、ボーナスを除く年収の目安として798万円以上の人の厚生年金保険料負担額は、さらに2745円増えて6万2220円になる見込みです。
 
厚生年金保険料の引き上げ案はまだ検討中ですが、予定通りに実施されると、保険料の上限は約9000円増えて6万8625円になり、目安としてはボーナスを除く年収870万円以上の人に影響が及ぶと考えられます。
 
年収800万円以上の人の割合は11%ほどのようですが、年収アップを目指している人は、改正案の最新情報と合わせて自身の年収の等級や保険料の上限にも注目するとよいでしょう。
 

出典

日本年金機構 厚生年金保険における標準報酬月額の上限の改定
国税庁長官官房企画課 令和5年分 民間給与実態統計調査-調査結果報告- II 1年を通じて勤務した給与所得者 3 給与階級別分布(23ページ)
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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