春から「新社会人」になり在学時の「年金」を追納すべきか迷っています。老後の「老齢基礎年金」にはどのくらい影響がありますか?
配信日: 2025.04.27

学生納付特例制度は在学中の保険料の納付が猶予されますが、猶予されていた期間は老齢基礎年金額の計算の対象となる期間には含まれません。したがって、在学中の保険料を追納しない場合、老齢基礎年金が満額受け取れる条件を満たせなくなるおそれがあります。
本記事では、学生納付特例制度や老齢基礎年金の仕組み、猶予された保険料を追納しないと老齢基礎年金にどのくらい影響を与えるのか解説します。

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目次
在学中は申請することで「学生納付特例制度」を受けられる
日本国内に住むすべての方は、20歳になった時点で国民年金への加入が義務づけられています。しかし、学生は十分な収入を得ているわけではないため、毎月保険料を納めるのは厳しいかもしれません。
そこで、前年の所得が一定以下の学生は申請を行うと在学中の保険料の納付が猶予される「学生納付特例制度」が設けられているのです。日本年金機構によれば、大学や大学院だけでなく、短期大学や高等専門学校などの学生も対象となります。また、学生納付特例制度は、家族の所得に影響されません。
猶予された国民年金保険料は「10年以内」であれば「追納」が可能
日本年金機構によると、学生納付特例制度を受けて猶予された年金保険料は、10年以内であれば、経済的に納付が可能になった際に申し出ることで追納ができます。追納をすることで、将来もらえる老齢基礎年金の年金額を増やすことができます。
老齢基礎年金とは、保険料納付済期間と保険料免除期間などを合わせた受給資格期間が10年以上あると、65歳から受け取ることが可能な年金です。20歳から60歳になるまでの40年間に厚生年金へ加入した期間や国民年金の納付月数などに応じて年金額が変動します。
学生納付特例制度の承認を受けた期間は老齢基礎年金の受給資格期間に含まれます。ただし、老齢基礎年金額の計算の対象となる期間には含まれないため、期間内の保険料を追納しなければ老齢基礎年金の支給額が減少するのです。
なお、追納した保険料は社会保険料控除の対象です。支払った保険料の分だけ所得税額を抑えることで、税負担の軽減にも役立つかもしれません。
追納しないと「老齢基礎年金」が毎年「4万円以上」減額になることも
厚生労働省が公表した「令和7年度の年金額改定について」のお知らせによると、令和7年度の国民年金(老齢基礎年金)額の満額は月6万9308円、年額では83万1696円です。
また、日本年金機構によると、老齢基礎年金の支給額は以下の計算式で算出できます。
・その年の老齢基礎年金満額×{保険料納付済月数+(全額免除月数×4/8)+(4分の3免除月数×5/8)+(半額免除月数×6/8)+(4分の1免除月数×7/8)}÷480ヶ月
老齢基礎年金額を令和7年度のものとし、他に未納や免除期間がなく、20歳から学部卒業の22歳までの2年間のみ、学生納付特例制度によって保険料の納付を猶予されたと仮定したケースで、老齢基礎年金の支給額を試算しました。
・老齢基礎年金の支給額=83万1696円×(456ヶ月÷480ヶ月)=79万111.2円
・年間支給額の差額=83万1696円-79万111.2円=4万1584.8円
学生納付特例制度で猶予された保険料を追納しないと、老齢基礎年金の支給額が満額の場合と比べて、毎年4万円以上減額されるおそれがあります。
まとめ
学生納付特例制度は、在学中の保険料に猶予が与えられる制度です。老齢基礎年金の受給資格期間に含まれますが、老齢基礎年金額の計算の対象となる期間には含まれないため、猶予された保険料を追納しなければ将来もらえる年金額が減額してしまいます。
猶予された保険料は10年以内なら追納できるだけでなく、追納した保険料は社会保険料控除の対象となるため、将来を見据えて余裕があるときに追納することがおすすめです。
出典
日本年金機構 国民年金保険料の学生納付特例制度
日本年金機構 国民年金保険料の追納制度
日本年金機構 老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額
厚生労働省 令和7年度の年金額改定についてお知らせします~年金額は前年度から1.9%の引上げです~
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー