女性のほうが「平均寿命が長い」ために年金で得する? 65歳から年金を受け取ると、生涯でいくらもらえるのでしょうか?
配信日: 2025.04.28

今回は、寿命に応じて受給することができる年金の総受取額について、65歳から老齢基礎年金を受給した場合、年金を繰下げた場合を比較して解説します。

執筆者:辻章嗣(つじ のりつぐ)
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士
元航空自衛隊の戦闘機パイロット。在職中にCFP(R)、社会保険労務士の資格を取得。退官後は、保険会社で防衛省向けライフプラン・セミナー、社会保険労務士法人で介護離職防止セミナー等の講師を担当。現在は、独立系FP事務所「ウィングFP相談室」を開業し、「あなたの夢を実現し不安を軽減するための資金計画や家計の見直しをお手伝いする家計のホームドクター(R)」をモットーに個別相談やセミナー講師を務めている。
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65歳から老齢基礎年金を受給すると総受給額はいくらになる?
1. 老齢年金の仕組みと老齢基礎年金の額
老齢年金には、全国民共通の老齢基礎年金と会社員などであった方が対象となる老齢厚生年金があります。ここでは、全国民共通の老齢基礎年金に絞って比較することにします(※1)。
老齢基礎年金は、20歳から60歳になるまでの40年間、以下のいずれかの期間であった場合、満額で83万1700円(令和7年度額)が支給されます(※2)。
●第1号被保険者として保険料を納付した期間
●第2号被保険者(会社員など厚生年金の被保険者)であった期間
●第3号被保険者(第2号被保険者の被扶養配偶者)であった期間
2. 平均寿命と平均余命
令和5年の簡易生命表(※3)によると、日本人の平均寿命(0歳児の平均余命)は男性81.09年、女性87.14年となっており、女性のほうが男性より6.05年長くなっています。
一方、65歳になった方の平均余命を見てみると、男性19.52年、女性24.38年となっており、女性のほうが男性より4.86年長くなっています。したがって、女性のほうが男性より平均で約5年分年金を多く受給することになります。
3. 受給年数と総受給額
65歳から満額の老齢厚生年金を受給した場合、受給年数に応じた総受給額は下式で計算されます。
総受給額=83万1700円(令和7年度額)×受給年数
したがって、65歳から受給開始した場合、男性の平均余命19.52年間受給した場合の総受給額は1623万4784円、女性の平均余命24.38年間受給した場合の総受給額は2027万6846円となり、女性のほうが400万円ほど多く受給することになります。
受給開始年齢を繰下げた場合の総受給額
1. 老齢年金の繰下げ受給
老齢年金は、65歳に受給を開始せずに66歳以降75歳までの間に受給開始を繰下げた場合、繰下げ期間に応じた増加率を乗じて算出される増額した年金を、生涯にわたり受給することができます(※4)。
増加率は、65歳から繰下げた月数に応じて下式で計算されます。
増加率=0.7%×65歳に達した月から繰下げ申出月の前月までの月数
したがって、65歳から75歳まで10年間、120月繰下げた場合の増加率は84%となり、75歳から受給できる老齢基礎年金の額が83万1700円(令和7年度額)から153万328円に増額されます。
また、65歳から70歳まで5年間、60月繰下げた場合の増加率は42%となり、70歳から受給できる老齢基礎年金の額が83万1700円(令和7年度額)から118万1014円に増額されます。
2. 繰下げ年数と総受給額
前述した簡易生命表(※2)によると、70歳の平均余命は男性15.65年、女性19.96年、75歳の平均余命は男性12.13年、女性15.74年となっています。
したがって、65歳から70歳または75歳まで年金を繰下げて受給開始し、平均余命まで受給した場合の総受給額を男女で比較すると図表1のようになります。
図表1
まとめ
老齢年金は、長生きリスクに備える制度で、65歳から生涯終身で受給することができます。当然、寿命に応じて総受給額は変わり、平均寿命の長い女性のほうが男性より多く受給する傾向にあります。
また、老齢年金は、受給開始年齢を65歳から66歳以降に繰下げると1月繰下げるごとに0.7%年金額が増加し、増加した年金を生涯変わらず受給することができます。したがって、長生きリスクの高い女性ほど、可能な範囲で受給開始年齢を繰下げることをお勧めします。
出典
(※1)日本年金機構 老齢年金
(※2)日本年金機構 老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額
(※3)厚生労働省 令和5年簡易生命表の概況
(※4)日本年金機構 年金の繰下げ受給
執筆者:辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士