夫の年収が600万円に上がります。将来の年金額はいくらになるのでしょうか?
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士
元航空自衛隊の戦闘機パイロット。在職中にCFP(R)、社会保険労務士の資格を取得。退官後は、保険会社で防衛省向けライフプラン・セミナー、社会保険労務士法人で介護離職防止セミナー等の講師を担当。現在は、独立系FP事務所「ウィングFP相談室」を開業し、「あなたの夢を実現し不安を軽減するための資金計画や家計の見直しをお手伝いする家計のホームドクター(R)」をモットーに個別相談やセミナー講師を務めている。
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年収と厚生年金保険料
会社員など厚生年金の被保険者が支払う保険料は、毎月の給与(標準報酬月額)と賞与(標準賞与額)に共通の保険料率を掛けて計算され、事業主と被保険者が半分ずつ負担します(※1)。
毎月の保険料額=標準報酬月額×保険料率×1/2
賞与の保険料額=標準賞与額×保険料率×1/2
標準報酬月額とは、被保険者が受け取る給与(基本給のほか残業手当や通勤手当などを含めた税引き前の給与)を一定の幅で区分した報酬月額に当てはめて決定される額で、現在は下限の1等級(8万8000円)から上限の32等級(65万円)にまで分かれています。
また標準賞与額とは、税引き前の賞与の額から1千円未満の端数を切り捨てたもので、支給1回(同じ月に2回以上支給されたときは合算)につき150万円が上限となります。保険料率は、18.3%で固定されています。
標準報酬月額を12倍した額と標準賞与額を合算した値は、ほぼ年収に等しくなりますので、1年間に支払う厚生年金の保険料は年収から下式で概算することができます。
1年間に被保険者が支払う厚生年金保険料=年収×18.3%×1/2
したがって、年収600万円の方が支払う厚生年金の保険料は、下式より年額で54万9000円となります。
600万円×18.3%×1/2=54万9000円
年収と老齢厚生年金額
65歳から受け取ることができる老齢厚生年金の額は、在職中の報酬を基に計算される報酬比例部分に、経過的加算と加給年金を加えた額となります(※2)。
老齢厚生年金の額=報酬比例部分+経過的加算+加給年金額
経過的加算は、年金制度改正に伴う加算で、わずかな額になります。また加給年金は、一定の条件を満たす配偶者や子どもがいる場合に支給されるものなので、ここでは老齢厚生年金額=報酬比例部分として、報酬比例部分に限って解説することにします。
報酬比例部分の額は、平均標準報酬額に給付率と加入月数を掛けた下式により求められます(※3)。
報酬比例部分(注)=平均標準報酬額×5.481/1000×加入月数
(注)平成15年4月以前の加入期間に関する計算式は異なります。
平均標準報酬額とは、計算の基礎となる各月の標準報酬月額と標準賞与額の総額を、加入期間で割って得る額です。したがって、年収の合計を加入期間で割った値で概算することができます。
そこで、報酬比例部分を年収と在職年数で表すと、以下のようになります。
報酬比例部分=平均年収×5.481/1000×在職年数
したがって、年収600万円の方が20歳から60歳までの40年間在職した場合、老齢厚生年金額(報酬比例部分)は131万5440円となります。
報酬比例部分=600万円×5.481/1000×40年=131万5440円
昇給と厚生年金
ここからは昇給した場合を想定し、昇給額と厚生年金保険料および老齢厚生年金額の関係について考えてみましょう。
1. 昇給と厚生年金保険料
1年間の保険料は、年収に18.3%を掛けて求められる額を、労使で折半したうえで支払います。したがって、年収が10万円上がったとすると、年額で9150円保険料が上がることになります。
2. 昇給と老齢厚生年金額
老齢厚生年金額(報酬比例部分)は、平均年収に5.481/1000を掛けて概算します。そのため年収が10万円上がった場合、1年間勤務したとすると、年金額は548円程増えることになります。勤務期間が10年であれば、その10倍で5481円、勤務期間が40年であれば40倍の2万1924円も増額されることになります。
まとめ
1年間に支払う厚生年金保険料は、年収に9.15%を掛けて求められます。加えて、65歳から受給できる老齢厚生年金の額は、平均年収に5.481/1000と在職年数を掛けて概算することができます。
また年収10万円の昇給は、厚生年金保険料が年9150円増える一方、老齢厚生年金額(報酬比例部分)も在職1年当たり548円増えることになります。
つまり年収600万円の方が20歳から60歳まで40年間在職したとすると、老齢厚生年金額(報酬比例部分)は131万5440円となります。加えて、老齢基礎年金81万6000円(令和6年度額)も支給されます。
出典
(※1)日本年金機構 厚生年金保険の保険料
(※2)日本年金機構 老齢厚生年金の受給要件・支給開始時期・年金額
(※3)日本年金機構 年金用語集 は行 報酬比例部分
執筆者:辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士
