年金を「月20万円」もらっているという両親。「手取りは意外と少ない」らしいけど、実際どのくらい引かれるの?“天引きされる金額”を試算

配信日: 2025.04.30 更新日: 2025.10.21
この記事は約 5 分で読めます。
年金を「月20万円」もらっているという両親。「手取りは意外と少ない」らしいけど、実際どのくらい引かれるの?“天引きされる金額”を試算
65歳を過ぎた両親から年金が月20万円あると聞けば、問題なく生活できるだろうと思うでしょう。しかし年金からは税金などが天引きされ、思ったより生活は苦しい場合もあります。
 
本記事では、夫婦で収入が年金のみ額面20万円の場合、手取りがいくらになるのかをシミュレーションします。手取りでは生活が厳しい場合の対策も解説しますので、参考にしてください。
松尾知真

FP2級

年金から天引きされるものは?

公的な年金も一定以上の所得があれば、所得税や住民税などの税金がかかります。さらに社会保険料として、健康保険料を支払わなければなりません。健康保険は年齢によって2種類あり、65歳から75歳未満までは国民健康保険、75歳以上は後期高齢者医療の保険料を支払います。
 
ここで見落としがちなのが、介護保険料です。64歳までは健康保険料と一緒に引かれていますが、65歳以上は第1号被保険者としての支払いに変更され、年金からの引き去りになります。
 

夫婦で年金20万円の場合、手取り額は?

夫婦の年金が額面月20万円で、ほかに収入がないときに引かれる税金や社会保険料を計算してみましょう。年金額は、夫は厚生年金と基礎年金を併せて14万円で年収168万円、妻は基礎年金6万円で年収72万円と仮定します。
 
まず、所得税には公的年金等控除110万円、基礎控除48万円があり、夫には配偶者控除38万円や、社会保険料控除なども加わるでしょう。そのため、夫婦とも年収を控除が上回るため、所得税は非課税です。
 
住民税には、所得に比例して10%課税される「所得割」と、一定の所得以上の人に一律で年間5000円程度が課税される「均等割」があります。所得税の控除とは金額が多少異なりますが、その違いを踏まえても、所得がマイナスになるため、どちらの住民税も課税されません。
 
一方、健康保険料や介護保険料などの社会保険料はどうでしょう。まず、健康保険は年齢が75歳未満なら国民健康保険となります。ただ、保険料は所得や年齢などで変動し、自治体ごとに保険料率も異なり計算も複雑です。
 
そのため、ホームページで算定方法を示している自治体が多く、保険料のシミュレーションができる場合もあります。ここでは神奈川県藤沢市と福岡県久留米市を例に計算してみましょう。
 
いずれも年齢67歳、世帯主年金収入168万円、世帯構成員年金収入72万円で入力すると、図表1に示した藤沢市が年間4万6970円、久留米市が年間4万7400円となり、両自治体とも月約4000円という試算結果でした。
 
図表1

図表1

藤沢市 令和6年度 藤沢市国民健康保険料試算
 
次に65歳以上の介護保険ですが、保険料は住民税の状況や年金収入、そのほかの所得金額などで設けられた所得段階で決まります。段階の数は自治体で異なり、藤沢市は18段階、久留米市は14段階です。
 
ただ、例に挙げた夫婦は、どちらの自治体でも夫は第3段階、妻は第1段階に該当します。保険料は図表2に示した久留米市では夫5万2263円、妻2万1744円で世帯年額7万4007円、同様に藤沢市も夫5万1780円、妻が2万1540円で世帯年額7万3320円でした。月に直すとどちらも6000円程度になります。
 
図表2
図表2

久留米市 介護保険 保険料 第1号被保険者(65歳以上)の保険料
 
このように藤沢市や久留米市では、世帯の年金が月20万円の場合、年金から引かれる金額は国民健康保険料約4000円と介護保険料約6000円で1万円程度です。そのため、年金の手取りは19万円ほどになります。
 
しかし、いずれの保険料も自治体で異なり、今回の例よりも負担が大きい場合も数多くあります。そのため、住まいのある自治体のホームページなどを参照して、世帯の保険料を把握しておくことが大切です。
 

年金が足りない場合の対策は?

想定以上に年金の手取りが少なく、生活に支障がある場合は支出の見直しも必要です。まずは通信費や生命保険料など、見直せる固定費がないか検討してみましょう。また、高齢者でも働きやすいシルバー人材センターなどで月3万円程度でも収入を得られれば、手取りの少なさはカバーできるかもしれません。
 
もし、年金をまだ受給していないのであれば、年金の繰下げ受給も有力な選択肢です。1年繰り下げれば20万円×8.4%=月1万6800円も受給額が増えます。つまり、1年の繰り下げで、年金から差し引かれる保険料分をカバーすることも十分可能です。
 
もちろん、繰下げ受給するには、繰り下げ期間の生活費をまかなう貯蓄も必要になります。そのため、貯蓄や資産運用などの老後資金対策には、早い段階から計画的に取り組むことが大切です。
 

まとめ

夫婦で月20万円の年金があっても、社会保険料などが差し引かれ、実際の手取りは目減りします。今回は非課税だった所得税や住民税も、年金額次第で課税される場合もあるでしょう。
 
もし、想定より手取りの年金が少なかった人は、生活費の見直しや、少しでも収入を得ることが必要かもしれません。まだ受給の始まっていない人は、年金の手取り額を事前に把握し、対策を考えることが大切です。まずは自治体のホームページなどを参考に、年金の手取り額を試算してみてはいかがでしょうか。
 

出典

藤沢市 令和6年度 藤沢市国民健康保険料試算
久留米市 国民健康保険料の試算
藤沢市 介護保険料について 65歳以上の方(第1号被保険者)の介護保険料について
久留米市 介護保険 保険料 第1号被保険者(65歳以上)の保険料
 
執筆者:松尾知真
FP2級

  • line
  • hatebu
【PR】 SP_LAND_02
FF_お金にまつわる悩み・疑問