定年後の収入は「月62万円」まで年金に響かない? 支給停止額の増額が検討されているのはなぜ?

配信日: 2025.05.07 更新日: 2025.10.21
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定年後の収入は「月62万円」まで年金に響かない? 支給停止額の増額が検討されているのはなぜ?
定年を間近に控える人の中には、定年後も「働けるだけ働きたい」と考える人がいます。物価高騰や経済的な見通しが不透明であることへの不安から、年金以外の収入源も持っておきたいと思うかもしれません。
 
無職であれ有職であれ、年金を受給することは可能です。しかし有職の場合、年金の受給に関して制限がかかることがあります。
 
本記事では、定年後も仕事を続けたい人の年金事情について解説します。
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在職だと年金額が少なくなる? 「在職老齢年金」とは

年金を受給する資格を持っている人が働いている場合、その収入額によって年金受給に一定の制限がかかります。この仕組みは「在職老齢年金」と呼ばれるものです。
 
「在職老齢年金」では、60歳以上の厚生年金受給者が得る賃金と年金を合算した額が、現役世代の賃金収入を上回る場合、年金の一部もしくは全部が支給停止になります。
 
具体的には、賃金と老齢厚生年金の合計が月額51万年を超える場合が支給停止対象です。支給されなくなる年金は「特別支給の老齢厚生年金」もしくは「老齢厚生年金」です。
 
支給停止基準額は、厚生年金保険法第46条第3項のルールによって変動します。令和6年度は「50万円」でしたが、令和7年度は「51万円」です。
 
なお2024年11月25日付けの「社会保障審議会年金部会」の資料によると、2022年度末時点で、働きながら年金を受給している308万人のうち、年金支給停止対象となった人は50万人(16%)ほどいるようです。
 

支給停止基準額の大幅変更が検討されている

年金支給停止の基準額が増額されると、従来より多くの賃金を得ても年金受給額が目減りしない可能性があります。実際に厚生労働省は、基準額の大幅増額を含む改正案を検討中です。
 
具体的な案と、検討の背景について解説します。
 

「月51万円」→「月62万円~」になる!?

先述の厚生労働省「社会保障審議会年金部会」では、基準額の引き上げを含む以下の3案が検討されました。

●在職老齢年金制度の撤廃
●支給停止基準額を71万に引き上げ
●支給停止基準額を62万に引き上げ

制度を撤廃した場合、現在支給停止対象となっている人が本来の受給額を受け取れることになります。71万円に引き上げになった場合は、対象者が約23万人に減る計算です(現在は約50万人)。62万円への引き上げでは、対象者が約30万人へ減少します。
 
3つの案いずれが採用されるとしても、年金受給の対象者が増える予定です。決定事項ではありませんが、今後年金受給の恩恵を感じる場面は増える可能性があります。
 

引き上げが検討されている背景

政府が支給停止基準額を緩和しようとしている背景には、「高齢者の就業意欲」が関係しているようです。
 
年金受給資格を持つ人が「できるだけ多く働きたい」と思っていても、働き過ぎたために支給停止基準額をオーバーし、年金受給額が減ってしまうのであれば、働き控えが生じてしまうおそれがあります。
 
中小・零細企業においては人手不足に悩まされているところが少なくありません。そのため、このような高齢者の働き控えは、状況打破の障壁となってしまうでしょう。
 
しかし、基準額の引き上げ、または撤廃が実行されれば、高齢者が働く時間を今より増やそうと思うかもしれません。
 

在職老齢年金の改正で働き控えの解消が期待されている

在職老齢年金の仕組みにより、令和7年度においては賃金と厚生年金受給額の合算が51万円を超えた場合に、年金受給額が目減りしてしまいます。
 
しかし現在、在職老齢年金の基準額の見直しや撤廃が検討されており、改正の内容によっては、従来よりも年金受給の制限が緩和される可能性があります。
 
定年後もできるだけ働き続けたいと願っている人は、今後の制度改正に関するニュースをチェックするといいでしょう。
 

出典

厚生労働省 在職老齢年金制度について(3、9ページ)
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
 

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