「60歳から年金を受け取る」と言っている父。65歳に受け取る場合と比べて、どのくらい金額が減るのでしょうか?
ファイナンシャル・プランナー
住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。
65歳から受給開始した場合
令和7年度の老齢基礎年金の年金額(月額)は、満額で6万9308円と、前年より1.9%引き上げられています。
厚生年金については、厚生労働省が示す「男性の平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)45万5000円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金の給付水準」を基に試算すると、9万4168円となります。
また、老齢基礎年金と老齢厚生年金は、同時に繰上げを行う必要があるので、両方同時に60歳から繰上げ受給したものとし、在職老齢年金は考慮しないものとします。
年金額(年額)=(6万9308円+9万4168円)×12月=196万1712円
(原則として、一生涯この年金額を受給することとなります)
60歳から繰上げ受給を選択した場合
繰上げ受給の場合、「繰り上げた月数×0.4%」が年金額から減額されます。つまり、5年×12月×0.4%=24%が減額となります。
年金額(年額)={(6万9308円×76%)+(9万4168円×76%)}×12月=149万904円
両者の金額の単純比較
年金額(年額)は、47万808円の減額となります。この金額をもとに、70歳以降5年ごとの累計総支給額を比較したものが図表1になります。
図表1
※筆者作成
両者の単純な比較では、65歳時点を100%とした場合、5年間の繰上げ受給では24%少なく受給することになるので、100%×5年÷24%=20.83年(80歳10ヶ月頃)が損益分岐点となります。つまり、80歳10ヶ月以上に長生きすれば65歳受給開始のほうが有利です。
繰上げ受給を検討する際に覚えておきたいこと
年金額の単純な比較だけではなく、実際に繰上げ受給を検討する際に考慮しておきたい点がいくつかあります。主なものは、以下のとおりです。
(1)加給年金の受給は65歳から
加給年金とは、一定の要件を満たした配偶者(65歳未満)または子(18歳未満)がいる場合の家族手当のようなものです。これは繰上げ受給を選択しても65歳からの受給開始となります。
(2)国民年金の任意加入や追納ができない
60歳時点で国民年金の保険料を納めた期間が40年間(満額)に達していない場合でも、任意加入することはできません。また、未納分などの追納もできなくなります。
(3)障害基礎年金を受給できない
けがや病気で障害が残ったときにもらえる障害基礎年金の給付要件を満たした場合でも、老齢年金を繰上げ受給していると、障害基礎年金を請求できなくなります。老齢年金は前述のとおり、繰上げ受給により減額されますが、障害基礎年金(2級)は老齢基礎年金の満額相当が支給されるため、障害年金を受給する方が多くの金額を受給できる場合があります。
(4)老齢基礎年金と遺族厚生年金を併給できない
65歳までに遺族厚生年金の受給要件を満たした場合、老齢基礎年金と併給ができないため、いずれか多い額を選択することになります。65歳以降は併給できますが、老齢基礎年金は減額された金額で受給することとなります。
まとめ
上記以外にも、税金や社会保険料の負担への影響や、60歳以降も年金を受給しながら働き続ける場合の、在職老齢年金の影響(全部または一部支給停止)などについても考慮する必要があります。
自身の実際の受給額を知りたい場合には、日本年金機構の「ねんきんネット」などを活用することをお勧めします。また、不明な点はねんきんダイヤル(0570-05-1165)や年金事務所、街角の年金相談センターの窓口に相談しましょう。
出典
厚生労働省 令和7年度の年金額改定についてお知らせします
執筆者:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー

