体調を崩し、会社を辞めることになったという友人。国民年金保険料などの支払いが厳しいと言っていたので心配です。確か「国民年金」の支払いが難しいときに利用できる「猶予制度」と「免除制度」があったと思うのですが、利用条件はどう違うのでしょうか?
配信日: 2025.05.20

今回は、年金の猶予制度や免除制度の概要や、制度を利用した方が年金額を少しでも増やしたい場合の制度などについてご紹介します。

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猶予制度の利用条件
通常は、支払っていない期間は年金の受給資格期間に加算されません。受給資格期間とは年金を老後に受け取るための条件として定められている期間で、日本年金機構によると「日本の公的年金では、すべての人に支給される老齢基礎年金の受給資格期間である10年間が基本」とされています。
しかし、猶予制度を申請して通れば、年金の受給資格期間に影響がないまま、支払期間を先送りしてもらえます。猶予制度の対象者は以下の条件に当てはまる方です。
・20歳~50歳未満
・本人・配偶者の所得が「(扶養親族等の人数+1)×35万円+32万円」以内
・保険料の支払期限から2年を超えていない期間に対する申請
ただし、先送りしているだけなので、年金額には反映されないので注意しましょう。
免除制度の利用条件
支払いの先送りとなる猶予制度に対し、免除制度は名前の通り支払いそのものを免除してもらえる制度です。本人や配偶者、世帯主の前年の所得が一定額以下になったり失業したりして保険料の支払いが難しくなった場合に申請し、承認されれば利用できます。
免除には4種類あり、日本年金機構によると、免除割合ごとの所得条件は以下の式で計算した通りです
・全額:(扶養親族等の人数+1)×35万円+32万円
・4分の3:88万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
・半額:128万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
・4分の1:168万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
また、免除割合に応じて受け取れる老齢基礎年金額は減額します。ただし、減額となるのは免除制度を利用した期間のみです。制度を利用せず未納だった場合は、受給資格期間にも受け取れる金額にも反映されません。
年金額を増やしたいなら追納制度も検討する
猶予制度や免除制度により少なくなった老後の年金額を少しでも増やしたい場合、追納制度を利用できる可能性があります。追納制度は、申請が通った月から10年以内までであれば、支払っていない期間の保険料を支払える制度です。
日本年金機構によると、全額免除された方が1年追納すると年間約1万円、猶予された方なら年間約2万円増えるとされています。追納した保険料は社会保険料控除も適用されるため、その年の税金負担も軽くなるでしょう。
ただし、猶予や免除制度を承認された翌年度から起算し、3年度目以降に保険料を支払う場合、本来の保険料に経過期間に応じた加算額が上乗せされます。
制度を利用すると年金保険料の負担を軽くできる
年金保険料の猶予制度や免除制度は、条件に該当していれば支払う期間の先送りや免除ができます。そのため、金銭的に支払いが難しい方は申請を検討するとよいでしょう。ただし、猶予制度や免除制度を利用した期間に応じて老齢基礎年金額は減少します。
少しでも老後の年金を多くしたい場合は、金銭的に余裕ができたときに追納制度を利用することも選択肢の1つです。
出典
日本年金機構 さ行 受給資格期間
日本年金機構 国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度
日本年金機構 国民年金保険料の追納制度
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー