年金+月給などが「51万円超」なら年金額を調整されると聞きました。年金受給者で「51万円超」に該当する人はどのくらいいるのでしょうか?
今回は、在職老齢年金制度の概要について解説し、制度の適用を受けて年金が減額される対象者の割合についても確認します。
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士
元航空自衛隊の戦闘機パイロット。在職中にCFP(R)、社会保険労務士の資格を取得。退官後は、保険会社で防衛省向けライフプラン・セミナー、社会保険労務士法人で介護離職防止セミナー等の講師を担当。現在は、独立系FP事務所「ウィングFP相談室」を開業し、「あなたの夢を実現し不安を軽減するための資金計画や家計の見直しをお手伝いする家計のホームドクター(R)」をモットーに個別相談やセミナー講師を務めている。
https://www.wing-fp.com/
在職老齢年金制度とは
在職老齢年金制度とは、会社員など厚生年金の被保険者として働きながら老齢厚生年金を受給している方が、基本月額と総報酬月額相当額に応じて、下式で算出される額の支給を停止される制度です(※1)。
支給停止額=(総報酬月額相当額+基本月額-51万円※)×1/2×12月
※:令和7年度額
ただし、ここで総報酬月額相当額と基本月額の合計額が51万円未満の場合は、年金は全額支給されます。ここで述べた「基本月額」とは、加給年金を除いた老齢厚生年金額を12月で割った年金の月額です。
「総報酬月額相当額」とは、その月の標準報酬月額にその月以前1年間の標準賞与額の合計を12月で割った額を加えた額になります。
総報酬月額相当額=その月の標準報酬月額+(その月以前1年間の標準賞与額の合計)÷12
なお、老齢厚生年金に加給年金額が加算されている場合は、加給年金を除いて在職老齢年金を計算します。そして老齢厚生年金が支給停止されないかぎり、加給年金は全額支給されますが、老齢厚生年金が全額支給停止された場合は、加給年金額も全額支給停止されます。
また、70歳以上の方は厚生年金の被保険者ではありませんが、厚生年金の被保険者同様に在職老齢年金制度が適用されます。
在職老齢年金制度が適用される年金額と年収
在職老齢年金制度では、総報酬月額相当額と基本月額の合計額が51万円を超えると、年金の一部または全部が支給停止されます。
総報酬月額相当額を12倍した値を「年収」と仮定すると、年金額と年収から、年金が一部または全額支給停止となる額の例は図表1のとおりです。
図表1
在職老齢年金の対象となる人の割合
厚生労働省の資料(※2)によれば、2022年度末時点で、老齢厚生年金を受給している65歳以上の総数は2845万人であり、そのうち308万人は在職しており、在職老齢年金制度が適用されています。
また、在職老齢年金制度により年金が一部または全額支給停止されている人の数は約50万人で、在職者308万人の約16%に相当します。
年金額が減らないように、多くの高齢者が就業時間を調整しています。その現状から、厚生労働省では「在職老齢年金制度が高齢者の就業意欲を阻害している」と考えられており、それを受けて現在在職老齢年金制度の撤廃や、支給停止基準額の見直しが検討されています。
まとめ
老齢厚生年金を受給しながら会社員として働く場合、在職老齢年金制度により、基本月額と総報酬月額相当額の合計が51万円を超えると、年金の一部または全額が支給停止されます。
また、在職老齢年金制度により年金の一部または全部が支給停止されている人の数は50万人にのぼり、働きながら老齢厚生年金を受給している人308万人の、16%に相当します。
なお、老齢基礎年金は在職老齢年金により支給停止されることはありませんし、自営業など厚生年金に加入していない方の場合、在職老齢年金制度は適用されません。
出典
(※1)日本年金機構 在職老齢年金の計算方法
(※2)厚生労働省 第21回社会保障審議会年金部会資料 在職老齢年金制度について
執筆者:辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士

