夫婦の間に子どもはなく、妻の年収は850万円以下。「遺族年金」が「無期限」から「期限付き」になるって本当?厚生労働省の見直し案通りなら遺族年金はどう変わる?

配信日: 2025.05.23 更新日: 2025.10.21
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夫婦の間に子どもはなく、妻の年収は850万円以下。「遺族年金」が「無期限」から「期限付き」になるって本当?厚生労働省の見直し案通りなら遺族年金はどう変わる?
これまで続いてきた遺族年金の制度では、条件によって受け取れる条件に男女の差や収入制限などがありました。こうした差を解消するため、遺族厚生年金の見直し案が提出されています。
 
そこで今回は、見直し案の内容や、見直し案で考えられている配慮措置などについてご紹介します。
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遺族年金はどう変わる?

遺族年金は遺族基礎年金と遺族厚生年金の2種類があります。このうち、見直しが検討されているのは遺族厚生年金です。日本年金機構によると、従来の遺族厚生年金では、以下の優先順位で遺族厚生年金を受け取れます。
 

1位:子どものいる配偶者
2位:子ども(年齢制限あり)
3位:子どものいない配偶者
4位:両親
5位:孫(年齢制限あり)
6位:祖父母

 
このうち、今回の見直し案で無期限から期限付きに変わるのは「子どものいない配偶者」とされていて、以下のような変更がなされる可能性があります。
 

【現在の制度】

・女性:30歳未満は5年間、30歳以上は無期限
・男性:55歳以上なら60歳から受給可能(例外あり)、55歳未満は対象外

 

【見直し案】

・男女ともに60歳未満は原則5年間

 
また、現在の制度では子どものいない妻で年収が850万円未満であることも条件でしたが、見直し案では収入条件がなくなっています。
 
見直し案が実現すると、子どものいない夫婦がおもに働いている夫または妻を亡くした際、配偶者が60歳未満であれば遺族年金を受け取れるようになるでしょう。一方で、5年間という期限付きになるため、もともと無期限で遺族厚生年金を受け取れる予定だった方は受取総額が大きく変わる可能性があります。
 

配慮措置も検討されている

5年という期限付きの見直しは、すべての人に適用されるわけではないようです。厚生労働省の資料によると、もし見直しが実現した場合でも、配慮が必要な方は5年を過ぎたあとも引き続き遺族厚生年金を支給されるとしています。資料によると、配慮が必要な例とは所得や障害の状況などで、認定方法などは表1の通りです。
 
表1

障害年金を受け取っており障害の状態にある 前年の所得による支給調整
認定方法 有期給付の支給終了日までに障害年金の受給権が生じており、その時点で障害の状態にある 前年所得に基づく
支給期間 ・障害の状態なら全額支給
・そうでなければ前年の所得に応じた一部支給停止を実施、全額支給停止されると2年後に権利を失う
・最大で65歳まで
・前年の所得に応じた一部支給停止を実施、全額支給停止されると2年後に権利を失う
・最大で65歳まで
年金額の調整 ・収入による支給額調整はない
・ただし、障害年金か遺族年金のどちらか1つを選択する
・前年の所得が基準の所得未満なら全額支給
・基準を超えると調整
認定期間 ・障害の原因の認定期間と同様
・傷病が永久に変わらないものは再認定不要
・前年の所得を基に当年10月~翌年9月までの1年間で認定する

※厚生労働省「遺族年金制度等の見直しについて②」を基に筆者作成
 
なお、これらの内容はあくまでも見直しのため、必ずしもこの通りになるとはいい切れません。また仮に改正が決まったとしても、実際に施行されるまでには時間がかかるでしょう。
 

遺族厚生年金が有期給付になり収入制限や男女の差がなくなるとされている

現在の遺族厚生年金では、子どもがいない方が受け取る場合に性別や妻の収入などによって受給の条件に差が生じています。こうした状態を改善するため、男女の差と収入制限を撤廃するという見直し案が提出されました。
 
見直し案では、こうした差が解消される代わりに、5年という有期給付になります。ただし、障害のある方や所得が低い方などは、65歳までなら5年を超えても受け取れる可能性があるでしょう。
 
今回の見直し案はあくまでも提案なので、確定したものではありません。今後遺族年金を受け取る可能性のある方は、定期的に厚生労働省のサイトなどで改正されているかをチェックするとよいでしょう。
 

出典

日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
厚生労働省 遺族年金制度等の見直しについて②
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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