部長の平均年収は「967万円」だけど、思ったより“年金額”には反映されない!? 高給取りなのになぜ? 一般社員の「年収・年金額」と比較

配信日: 2025.05.30 更新日: 2025.10.21
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部長の平均年収は「967万円」だけど、思ったより“年金額”には反映されない!? 高給取りなのになぜ? 一般社員の「年収・年金額」と比較
会社でコツコツとキャリアを積み、ついに部長に昇進して昇給を果たし、将来の年金も安心と思っている人もいるでしょう。しかし、年収アップが思ったほど将来の年金額の増加につながらない可能性もあります。
 
本記事では、年金制度の仕組みや役職ごとの平均年収、そして年収アップが想定よりも将来の年金アップにつながらない可能性がある理由を解説します。
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年金制度の概要

日本の年金制度は「2階建て」の構造です。1階部分は全ての国民が加入する「国民年金(基礎年金)」、2階部分は会社員や公務員が加入する「厚生年金」です。
 

会社員は収入が増えれば年金額も増える

国民年金は収入に関係なく支給額が一律ですが、厚生年金のメインである「報酬比例部分」は収入に応じて支給額が変わる仕組みになっており、年収が高ければ高いほど受け取れる年金額も増えます。
 
「報酬比例部分」の受給額を求める計算式は次の通りです(加入期間平成15年4月以降)。
 
・平均標準報酬額×5.481/1000×厚生年金保険料の加入月数
 

役職ごとの平均年収と受け取れる年金額

続いて、役職ごとの平均年収を見ていきましょう。厚生労働省の「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、10人以上の企業における、役職別の平均年収は次の通りです。


・非役職:447万2000円
・職長級:546万8900円
・係長級:604万2200円
・課長級:808万1600円
・部長級:967万2800円

これらを生涯の平均年収に換算した場合、一般社員と部長とでは2倍以上の差があります。ただし、この場合でも年金の差は2倍にはなりません。
 
なぜなら、基礎年金は年収にかかわらず同額であり、また厚生年金の報酬比例部分に関係する標準報酬額は32区分に分かれており、上限があるためです。今回はこれらの年収をもとに、賞与をゼロにし、年収を12で割った額を毎月の給与額と仮定し、具体的に計算していきます。
 
この場合の平均標準報酬額は、一般社員(非役職)の水準では38万円、部長級では65万円です。そして、両者が40年間勤務したとすると、報酬比例部分の年間受給額は一般社員(非役職)は99万9734円、部長級は171万72円となります。
 
これに加えて、両者とも老齢基礎年金として、満額の83万1700円を受け取れるとします。したがって、65歳以降に受け取れる年金額(老齢基礎年金+老齢厚生年金の報酬比例部分)は次の通りです。


・非役職:183万1434円
・部長級:254万1772円

受給額に差はありますが、現役時代の収入のように倍以上の差が出ることはないと言えるでしょう。
 

昇進時期によっては年金額はあまり伸びない

ここまではあくまでも、年収450万円と970万円が生涯続くと仮定して比較してきました。この場合でも、年収は2倍以上の差があるものの、もらえる年金額に関してはそこまで差が開きません。
 
そして、基本的には入社した時点から部長の職に就いているということはないでしょう。本記事のように、部長になれるとしても働き始めてから徐々に年収が上がり、長い年月を要する場合がほとんどだと思います。
 
その場合、上記で見てきたような想定よりも年金額が少なくなる可能性があります。例えば、入社から40年勤務し、年収が以下のように推移した場合を想定してみます。


・入社5年まで:年収400万円
・入社6年~10年:年収500万円
・入社10年~15年:年収600万円
・入社15年~20年:年収700万円
・入社20年~40年:年収900万円

この場合、生涯の平均年収は725万円となり、平均標準報酬額は59万円です。よって、報酬比例部分の年額は155万2219円、老齢基礎年金(満額)と合わせると238万3919円となります。
 
今回は入社20年目以降の20年間、部長職クラスの職位で勤める前提で推計したので、さきほどの試算とそこまで大きな差は出ませんでした。ただ、昇進が後になればなるほど、生涯全体で見た際の平均年収が下がり、年金も思ったほどもらえない可能性があるでしょう。
 

まとめ

会社員の年金受給額は老齢基礎年金と老齢厚生年金との合算であり、また厚生年金は給与の額によって保険料と受給額が異なります。
 
基本的に給与が高いほど保険料と受給額も高くなりますが、昇進・昇給で給与が高くなったとしても、その時期や期間によっては期待するほど年金額が増えない可能性があります。
 
将来の年金額を増やしたい場合は、長期間にわたり安定して高収入を維持することが鍵となるでしょう。
 

出典

厚生労働省 令和6年賃金構造基本統計調査
日本年金機構 は行 報酬比例部分
日本年金機構 令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和7年度版)
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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