50代で死亡した自営業の父「老齢年金」も「遺族年金」も支給なしでしたが、年金は結局“払い損”なのでしょうか?

配信日: 2025.05.31 更新日: 2025.10.21
この記事は約 3 分で読めます。
50代で死亡した自営業の父「老齢年金」も「遺族年金」も支給なしでしたが、年金は結局“払い損”なのでしょうか?
一家の働き手が突然亡くなってしまった場合、遺族年金がもらえると聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。しかし、要件を満たさず支給されないケースもあります。遺族年金はどのような場合に支給されるのでしょうか。
 
本記事では遺族年金が支給される要件や年金のメリット などを解説します。
山根厚介

2級ファイナンシャルプランニング技能士

遺族年金とは?

遺族年金とは、死亡した人の配偶者や子どもに支給される年金です。自営業者など国民年金加入者の場合に支給されるのが「遺族基礎年金」、会社員などで厚生年金加入者だと「遺族厚生年金」が支給されます。今回の事例は自営業者のため、遺族基礎年金が該当します。
 

遺族基礎年金が支給される要件

遺族基礎年金が支給されるには、死亡した人と遺族それぞれでいくつかの要件をクリアしなければなりません。支給要件を解説します。
 

死亡した人の要件

まず死亡した人ですが、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。

1. 国民年金の被保険者
2. 国民年金の被保険者だった人で、国内に住所のある60歳以上65歳未満の人
3. 老齢基礎年金の受給権者
4. 老齢基礎年金の受給資格を満たした人

1と2の場合は、保険料の納付済期間が被保険者期間の2/3以上必要です。ただし、2026年3月末までは、死亡前直近約1年間に保険料の未納がなければ要件を満たします。なお、国民年金の被保険者とは国民年金に加入している人で、国内に住所があれば20歳以上60歳未満の人が原則該当します。
 
3と4の場合は、保険料納付済期間や免除期間などを合算して25年以上が必要です。老齢基礎年金の受給資格自体は、保険料納付済期間や免除期間などを合算して10年以上あれば得られますが、遺族基礎年金が支給されるには25年以上が必要な点に注意が必要です。
 
ちなみに、3の受給権者とは、受給資格を満たす人のうち、受給手続きを行って年金を受け取る権利が確定した人を指します。
 

遺族の要件

次に遺族の要件です。遺族基礎年金が支給されるのは、死亡した人によって「生計を維持されていた」「子どものいる配偶者」または「子ども」です。「生計を維持されていた」とは以下の2つの要件を満たす必要があります。

●同一生計
●前年の収入が850万円未満または所得が655万5000円未満

「同一生計」は、同居していなくても認められるケースがあります。別居で仕送りをしている場合や、健康保険の扶養家族になっている場合などです。
 
また、ここでいう「子ども」は、一般的な意味での子ども全般ではなく、「18歳の年度末まで」または「障害等級1級または2級で20歳未満」の子どものみが該当します。
 
つまり、そもそも子どもがいなければ遺族基礎年金は支給されません。また、今回の事例のように50代で死亡すると、子どもがいたとしてもすでに成人していて要件を満たさなくなるケースも多いでしょう。
 

年金は払い損? 年金のメリット

遺族基礎年金が支給されるにはいくつかのハードルがあり、支給されると思っていたのに支給されなかったケースもあるでしょう。老齢基礎年金受給前に亡くなってしまい、遺族基礎年金も支給されないとなると、年金の払い損ではないかと思いたくなる気持ちも分かります。
 
しかし、年金にはもう1つ大きな役割があります。障害年金です。不慮の病気やけがで働けなくなったときに支給される障害年金は、生活の大きな支えとなります。ずっと元気だった人でも、事故などで急に働けなくなる可能性は十分考えられます。そう考えると、払い損とはいえないのではないでしょうか。
 

まとめ

遺族基礎年金は、死亡した人の配偶者や子どもに支給されるものですが、いくつかの要件を満たさなければならず、支給されないこともあります。特に50代で亡くなると、「子ども」の要件を満たさず支給されないケースも多いでしょう。
 
そうなると、年金は払い損だと思うかもしれませんが、障害年金のことを考えると払い損とはいえません。ただし、遺族の生活のことを考えると、生命保険などでカバーしておく必要はあるでしょう。
 

出典

日本年金機構 遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)
日本年金機構 老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額
 
執筆者:山根厚介
2級ファイナンシャルプランニング技能士

  • line
  • hatebu
【PR】 SP_LAND_02
FF_お金にまつわる悩み・疑問