学生時代の「年金」を追納する人は10%以下!年金受給額アップのためには、60歳以降も国民年金に「任意加入」すべき?
本記事では、国民年金保険料の追納・任意加入をすべきかどうかについて、官公庁のデータを基に解説します。
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学生納付特例を受けて追納する割合はわずか「8.9%」
学生納付特例が適用された後、10年以内の追納を選択する方はそもそもどの程度いるのでしょうか。厚生労働省が2024年12月に実施した「第22回社会保障審議会年金部会」の資料によれば、学生納付特例における追納率は、8.9%にとどまっているようです。
一方、同じく厚生労働省年金局が実施した「令和5年国民年金被保険者実態調査」では、国民年金第1号被保険者の保険料納付状況が公表されています。これによると、学生の保険料納付状況については、学生納付特例者が58.2%で、納付者は30.5%です。
6割近い学生が納付特例を受ける反面、追納を選択する方の割合は1割以下と、多いとはいえないことが見て取れます。
60歳以降に「任意加入」することでも年金を満額に近づけることが可能
納付特例によって猶予された場合、国民年金の受給額を満額に近づける方法は追納だけに限らず、60歳以降に国民年金へ「任意加入」することでも増額が可能です。
また、日本年金機構によれば、納付猶予の承認を受けた期間の翌年度から起算して3年度目以降に追納した場合、当時の保険料額に、経過期間に応じた加算額が上乗せされますが、任意加入の場合には加算が適用されません。
そのため、現在追納していない方が将来、こちらを選択することも十分に考えられます。
老後の生活を考慮すると「任意加入」もひとつの選択
ここで、学生納付特例による猶予を受けた後、「何もしなかった場合」と「任意加入した場合」の年金受給額を比べてみましょう。
国民年金の受給額は、40年間の納付期間のうち実際に納付した月数に基づき、以下のように計算されます。なお、以下の試算は目安となるもので、「保険料の一部/全額免除」などの制度は含めずに計算しています。
・年金受給額=83万1700円(令和7年度の満額の年金額)×(保険料納付済月数÷480ヶ月)
仮に2年間の学生納付特例を受け、その他の期間は全て保険料を納付し、「追納」「任意加入」のどちらもしない場合の年金額は以下のようになります。
・追納や任意加入しない場合
83万1700円×(480ヶ月-24ヶ月)÷480ヶ月=79万115円
満額受給と比べると、年間で「4万1585円」の差が発生することが分かります。一方で、日本年金機構によれば、令和7年度の国民年金保険料は1ヶ月あたり「1万7510円」です。
これを基にした24ヶ月分の保険料は「42万240円」であり、仮にこの全額を任意加入で支払った場合、上記の差額から保険料の分を回収するために必要な期間を割り出すと、「約10年」となります。
つまり、65歳を受給開始年齢と想定した場合は「任意加入するとおよそ75歳ごろから損得が逆転し、以降は差額分の得をする可能性がある」という試算結果になりました。
もちろん、国民年金の支給額は個人の加入期間や免除分の支払い有無などによっても変わってきますので、一概には言えません。しかしながら、ある程度の健康寿命を考慮した場合、追納していない保険料を任意加入で補うことは、選択肢に入るのではないでしょうか。
まとめ
学生納付特例はあくまで保険料の猶予ですので、未納分を任意加入で補うことで、長い目で見た受給額のアップにつながる可能性があります。
ただし、個別のケースを勘案して正確な試算結果を知りたい場合は、ご自身の納付状況を確認の上、ファイナンシャル・プランナーや社会保険労務士などの専門家に相談するのがよいかもしれません。
出典
厚生労働省年金局 第22回社会保障審議会年金部会 資料2 国民年金保険料の納付猶予制度について(2ページ)
厚生労働省年金局 令和5年国民年金被保険者実態調査結果の概要 第3章 学生の状況 2.学生の保険料納付状況(12ページ)
日本年金機構 国民年金保険料の追納制度
日本年金機構 国民年金保険料
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
