年金は「少ない場合」でいくらくらいなのでしょうか? 40年間、ずっと非正規雇用で働いてきたので不安です。

配信日: 2025.06.22 更新日: 2025.10.21
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年金は「少ない場合」でいくらくらいなのでしょうか? 40年間、ずっと非正規雇用で働いてきたので不安です。
年金は、老後の収入源として重要な役割を担いますが、加入する年金や納付する保険料により、受け取れる金額が異なります。自分がいくら年金を受け取れるか、気になる方も多いのではないでしょうか?
 
本記事では、「年金受給額はどのように算出するのか?」「『少ない場合』で、年金はいくら受け取れるのか?」について解説します。非正規雇用で働いている方だけでなく、社会保険の適用拡大により被保険者となった短時間就労者(パートタイマー・アルバイトなど)の方の参考になると思いますので、ぜひ最後までお読みください。
中村将士

新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー

私がFP相談を行うとき、一番優先していることは「あなたが前向きになれるかどうか」です。セミナーを行うときに、大事にしていることは「楽しいかどうか」です。
 
ファイナンシャル・プランニングは、数字遊びであってはなりません。そこに「幸せ」や「前向きな気持ち」があって初めて価値があるものです。私は、そういった気持ちを何よりも大切に思っています。

年金受給額はどのように算出するのか?

公的年金には、国民年金と厚生年金保険があります。国民年金は、日本に住んでいる20歳以上60歳未満の全ての人が加入する年金です。厚生年金保険は、会社などに勤務している人が加入する年金です。
 
非正規雇用で働いている方も、一定の要件を満たすと厚生年金保険に加入するため、本記事では厚生年金保険に加入しているものとして話を進めます。厚生年金保険に加入している場合、老後に受け取れる年金は老齢基礎年金と老齢厚生年金です。
 
老齢基礎年金は、国民年金の納付月数や厚生年金保険の加入期間などに応じて年金額が計算されます。
 
老齢基礎年金には「満額」というものがあり、この満額を受け取るためには、20歳から60歳になるまでの40年間の国民年金(厚生年金保険に加入している場合は厚生年金保険)保険料を全て納める必要があります。
 
ちなみに、令和7年4月分からの老齢基礎年金の受給額は、満額で83万1700円(昭和31年4月2日以後生まれの方)です。
 
老齢厚生年金は、厚生年金保険に加入していたときの報酬額や加入期間などに応じて年金額が計算されます。老齢厚生年金の受給額は、報酬比例部分・経過的加算・加給年金額を合計した金額です。
 
なお、昭和36年4月1日以前(女性は昭和41年4月1日以前)に生まれた方は「特別支給の老齢厚生年金」を受け取りますが、本記事では受け取らないものとして話を進めます。
 
報酬比例部分は、厚生年金保険の加入期間や過去の報酬などに応じて算出します。経過的加算は、「特別支給の老齢厚生年金」を受け取っていた方の年金額を調整する役割をします。
 
加給年金は、厚生年金保険の被保険者期間が20年以上ある方が、65歳到達時点(または定額部分支給開始年齢に到達した時点)で、その方に生計を維持されている配偶者または子がいるときに加算されるものです。
 

「少ない場合」で、年金はいくら受け取れるのか?

少ない場合の年金受給額を計算するに当たり、以下のように条件を設定します。
 

・国民年金には20歳から60歳までの40年間加入し、保険料は全て納付するものとする
・老齢基礎年金は満額受け取れるものとする
・老齢基礎年金額は「令和7年4年分から」の金額「83万1700円」を採用する
・厚生年金保険には23歳から65歳までの42年間加入し、保険料は全て納付するものとする
・老齢厚生年金額(報酬比例部分・平成15年3月以前の加入期間)の計算上、平均標準報酬月額を「8万8000円」、乗率を「1000分の7.125」、加入期間の月数を「96月」とする
・老齢厚生年金額(報酬比例部分・平成15年4月以降の加入期間)の計算上、平均標準報酬額を「8万8000円」、乗率を「1000分の5.481」、加入期間の月数を「408月」とする
・老齢厚生年金額の計算上、経過的加算と加給年金額については考慮しないものとする

 
年金受給額は、「老齢基礎年金額+老齢厚生年金額」で計算します。上記の設定から、老齢基礎年金額は「83万1700円」となります。老齢厚生年金額は「報酬比例部分+経過的加算+加給年金額」で計算しますが、上記の設定から、「報酬比例部分」のみ計算すればよいということになります。
 
報酬比例部分は、平成15年3月以前の加入期間と平成15年4月以降の加入期間に分けて計算し、最後にそれぞれの金額を合計して求めます。計算式は以下のようになります。
 

(1)平成15年3月以前の加入期間
平均標準報酬月額×乗率×加入期間の月数 = 8万8000円 × 7.125/1000 × 96月
                  = 6万192円
 
(2)平成15年4月以降の加入期間
平均標準報酬額×乗率×加入期間の月数 = 8万8000円 × 5.481/1000 × 408月
                  ≒ 19万6789円
 
(3)報酬比例部分の金額
6万192円 + 19万6789円 = 25万6981円

 
以上の計算から、年金額は108万8681円(=老齢厚生年金額83万1700円+老齢厚生年金額25万6981円)であると計算できます。1月当たりは、およそ9万円です。「少ない場合」の年金額は、これくらいではないでしょうか。
 

まとめ

本記事では、「年金受給額はどのように算出するのか?」「『少ない場合』で、年金はいくら受け取れるのか?」について解説しました。まとめると、以下のようになります。
 

・年金受給額は老齢基礎年金額と老齢厚生年金額を足し合わせて算出する
・「少ない場合」で、受け取れる年金額は108万円(1月当たり9万円)くらい(令和7年5月時点での計算)

 
実際の年金額は、加入する年金や加入期間・報酬額(納付保険料)などにより異なります。本記事では具体的な金額を計算するために、いくつか条件を設定しました。したがって、本記事で算出した金額が年金額として保障されているわけではありません。例えば、保険料を納付した月数が本記事の設定よりも少なければ、受け取れる年金額も少なくなります。
 
年金受給額はその方の状況により異なるといってしまえば元も子もありませんが、本記事は一つの目安になるのではないでしょうか。具体的な金額が分かれば、対策を練ることも可能です。本記事がその一助になれば幸いです。
 

出典

日本年金機構 老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額
日本年金機構 老齢厚生年金の受給要件・支給開始時期・年金額
日本年金機構 令和7年4月分からの年金額等について
日本年金機構 は行 報酬比例部分
日本年金機構 令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和7年度版)
 
執筆者:中村将士
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー

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