「年収800万・1000万円」でも、将来受け取れる“年金額”は同じ!? 頑張って稼いだのにナゼ?「年収と年金額の関係」を解説
本記事では、公的年金制度の基本的な仕組みから保険料の算出方法、そして年収800万円と1000万円のケーススタディを通して、収入と年金の関係を解説します。
ファイナンシャルプランナー
FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。
編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。
FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。
このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。
私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。
公的年金制度の基本構造
日本の公的年金制度は、2階建て構造となっています。1階部分は「国民年金(基礎年金)」で、全ての国民が加入する仕組みです。20歳から60歳未満の全員が対象となり、定額の保険料を支払うことで、所定の年金を受け取ることができます。
2階部分は「厚生年金」で、会社員や公務員が加入する制度です。こちらは、給与や賞与に応じて保険料が変動し、その分将来受け取る年金額も変わってきます。会社員や公務員は基本的には国民年金と厚生年金の両方に加入しており、老後にはこの2種類の年金を受け取ります。
保険料の仕組みと上限について
国民年金は全員が一律の保険料を支払い、年収に関係なく保険料の支払期間などに応じて同じ金額の基礎年金を受け取る仕組みです。一方、厚生年金は給与や賞与に応じて保険料が変わり、将来の年金額もそれに比例します。ただし、厚生年金の報酬比例部分には上限があります。
厚生年金の計算で用いられる標準報酬月額は、上限が65万円に設定されています。この上限は年収換算で約780万円にあたり、それを超える年収があっても、年金の計算上は65万円までしか反映されません。
年金額は納付期間と保険料の合計で決まる
老齢基礎年金の年金額は保険料の納付期間によって、老齢厚生年金のメインである報酬比例部分は保険料の納付期間と支払った金額の合計によって決まります。つまり、標準報酬月額が高いほど、保険料も高くなり、その分年金額も増える仕組みです。
しかしながら、前述のとおり標準報酬月額には上限があるため、たとえ高収入であっても、それ以上の年収に対しては年金額が増えない仕組みとなっています。この天井があるため、ある程度以上の収入の差が、年金額にあまり反映されなくなってしまうのです。
年収800万円と1000万円で年金額にどれくらい差があるのか?
年収800万円の人の月収は、賞与を含めるとおおよそ67万円程度となります。同様に、年収1000万円の人の月収は83万円程度となります。
しかし、厚生年金保険における標準報酬月額の上限は65万円に設定されており、これを超える部分の収入は保険料の計算や将来の年金額には反映されません。したがって、両者とも標準報酬月額は65万円となります。
仮に、生涯の平均年収800万円の人と1000万円の人が、ともに20~60歳まで同じ会社で勤務した場合に受け取れる年金額の年額は次の通りです(令和7年度)。
●老齢基礎年金:83万1700円
●老齢厚生年金(報酬比例部分):171万72円
老齢基礎年金+老齢厚生年金=254万1772円
このように、年収にして200万円の差があるにもかかわらず、両者の年金額は同じになります。
まとめ
公的年金制度では、年収が高いほど多くの保険料を支払うことになりますが、ある程度の年収を超えると、それ以上は保険料にも年金額にも反映されなくなります。年収800万円と1000万円では、支払う税金や手取りは異なりますが、年金という観点から見ると、大きな違いがあるとはいえません。
このような制度の特性を理解しておくことは、将来の資金計画を立てるうえで非常に重要です。年金制度の仕組みを正しく理解し、自分自身の老後に向けた備えを早めに始めておくことが、安心した生活につながっていくでしょう。
出典
日本年金機構 令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和7年度版)
日本年金機構 老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額
日本年金機構 は行 報酬比例部分
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
