65歳で「老齢年金」を受け取っていますが、夫が亡くなり「遺族年金」も対象になるそうです。「併給」はできますか?
今回は、異なる種類の年金を併給できるのか、また併給するといくらくらいになるのかなどについて紹介します。
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遺族年金と老齢年金の併給は可能?
年金は「1人1年金」が原則とされています。そのため、基本的には異なる種類の年金は受け取れません。しかし、3種類ある公的年金にはそれぞれ基礎年金と厚生年金があり、条件を満たしていれば併給できるケースがあります。
例えば、65歳で老齢基礎年金を受給し始めたときに夫が亡くなり遺族厚生年金の条件を満たしていた場合、どちらの年金も受け取れる可能性があります。ただし、年金の種類によって受け取れる条件は異なるので、事前に調べておきましょう。
年金の併給で金額はいくらくらいになる?
今回は、以下の条件で遺族厚生年金と老齢基礎年金を併給したときの年金額を計算しましょう。
●亡くなったのは夫
●夫は平均標準報酬額が30万円で42年間にわたって厚生年金保険に加入
●夫が厚生年金保険に加入したのは平成15(2003)年4月以降
●妻は国民年金保険料を全額支払っている
●老齢基礎年金額は令和7(2025)年度のもの
●妻は専業主婦だった
まず、遺族厚生年金額を求めましょう。日本年金機構によると、遺族厚生年金は亡くなった方の報酬比例部分の4分の3の額になります。今回の条件だと、報酬比例部分の計算式は「厚生年金保険の加入月数×0.005481×平均標準報酬額」です。数値を当てはめると「504ヶ月(42年)×0.005481×30万円」で報酬比例部分は約82万8727円になります。
これを踏まえると、遺族厚生年金は「82万8727×4分の3」となり、約62万1545円です。
なお、令和7年度の老齢基礎年金額は月6万9308円、年83万1696円です。そのため今回のケースでは、遺族厚生年金と合計し、年145万3241円を受け取れるでしょう。
遺族年金は内容が変更される可能性がある
遺族厚生年金は、男女差の是正を目的とした見直しが検討されており、以下の条件に該当する人は受給内容が変わる可能性があるためチェックしておきましょう。
●令和10年度末時点で子どもがいない40歳未満の女性
●子どもがいない60歳未満の男性
厚生労働省によると、見直し前後の変更点は表1の通りです。
表1
| 見直し前 | 見直し後 | |
|---|---|---|
| 子どものいない女性 | ・30歳未満:5年間の有期給付 ・30歳以上:無期給付 |
・60歳未満:男女ともに5年間の有期給付 ・必要に応じて5年目以降も継続 ・60歳以上:男女ともに無期給付 |
| 子どものいない男性 | ・55歳未満:受給権なし ・55歳以上:60歳から無期給付 |
※厚生労働省「遺族厚生年金の見直しについて」を基に筆者作成
5年目以降も継続して給付したいときは条件があるので、年金事務所などに確認しておきましょう。
まとめ
原則として年金は1人につき1種類ですが、特例的に併給が認められるケースがあります。遺族厚生年金と老齢基礎年金の組み合わせも特例の1つで、老齢基礎年金を、65歳を超えて受給中に遺族厚生年金も受け取れるようになったときは、併給が可能です。
今回のケースでは、老齢基礎年金のみだったときと比べて年金総額が62万1545円増額しました。利用できるのであれば、併給をした方が老後の生活にゆとりができるでしょう。
出典
日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
厚生労働省 遺族厚生年金の見直しについて
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
