年収「800万円」、定年が近いサラリーマンです。老後資金を少しでも増やすために「年金の繰下げ受給」を検討中です。受給開始が遅くなる以外の注意点はありますか?

配信日: 2025.06.25 更新日: 2025.10.21
この記事は約 3 分で読めます。
年収「800万円」、定年が近いサラリーマンです。老後資金を少しでも増やすために「年金の繰下げ受給」を検討中です。受給開始が遅くなる以外の注意点はありますか?
年収が800万で、貯金に多少余裕がある、あるいは老後の資金を少しでも増やしたいといった理由で、年金の繰下げ受給を検討する人もいるでしょう。
 
年金の繰下げ受給は受け取れる金額を増やせる一方で、デメリットもゼロではありません。受け取り方を決めるときは、メリットだけでなく利用するときの注意点もよく理解しておくことが大切です。
 
今回は、年金の繰下げ受給のメリットと利用する際の注意点について分かりやすく解説します。
FINANCIAL FIELD編集部

ファイナンシャルプランナー

FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。

編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。

FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。

このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。

私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。

年金の繰下げ受給の概要とメリット

年金は、受け取るタイミングを65歳よりも後ろにすることで、受給金額を増やせる「繰下げ受給」制度があります。遅らせるほど増加割合は大きくなり、「0.7%×繰下げ申請をした前月までの月数」の分多く受給が可能です。
 
最大で75歳0ヶ月まで繰り下げられ、最大まで遅らせると84.0%増加した年金を受け取れるようになるでしょう。少しでも年金額を増やしたいのであれば、有効な方法の1つといえます。
 
例えば、令和5年度の老齢基礎年金と老齢厚生年金の平均受給月額である14万7360円を70歳、75歳で受給開始したときの年金額を計算しましょう。まず、70歳で受け取り始めると、増加割合は42%です。つまり「14万7360円×142%」で月約20万9251円になります。
 
一方、75歳から受給を始めると「14万7360円×184%」となり、月に約27万1142円です。65歳で受け取るときと比較すると、月に10万円以上増えることになります。
 
なお、繰下げ受給をしたいときは、年金を受け取りたい時期になったら「繰下げ請求書」を提出すれば対応してもらえます。請求書を提出した時期によって、受給額の増加割合が決まります。
 

繰下げ受給の注意点デメリット

まず、繰下げ受給の注意点は受け取るタイミングが遅くなることです。給料からしっかりと貯金をしていれば影響は少ないかもしれませんが、貯金が足りないと生活に影響が出る可能性もあるでしょう。
 
また、年金の受給額が増えると、所得税や住民税、国民健康保険料などが65歳で受け取るよりも高くなる可能性があります。所得に応じて金額が変わるためです。年金額を税金や社会保険料などが引かれる前の金額で考えていると、想定より少なく感じる場合もあります。
 
繰下げ受給をした場合でも、早くに亡くなってしまった場合は、65歳で受給開始したときよりも総受給額が少なくなる場合もあるでしょう。
 
さらに、厚生年金に20年以上加入していた人が65歳になった時点で生計を維持している65歳未満の配偶者や未成年の子どもがいる場合に受け取れる加給年金も受け取れなくなるケースがあるでしょう。これは、受給開始が遅くなることで配偶者や子どもの年齢が対象外となるためです。
 
例えば、夫が生計を維持している5歳差の夫婦だったとしましょう。この場合、夫の受給開始が65歳だと、5年間は加給年金の対象です。しかし受給開始が70歳になると、妻の年齢が加給年金の対象ではなくなるため、結果として年金額が65歳で受給開始したケースより少なくなる場合があります。
 
年金をいつ受け取るのか考えるときは、毎年の受給額だけでなく、こうしたポイントも考慮したうえで判断することが大切です。
 

繰下げ受給では税金や社会保険料が増える可能性がある

繰下げ受給のメリットは、受け取る金額が多くなることです。令和5年の平均額を基にすると、75歳まで繰下げれば受給額は10万円以上増える結果となりました。
 
一方で、繰下げ受給の注意点は受け取るタイミングが遅くなるため、その期間は自身の貯金や収入で賄う必要があることです。また、年金受給開始後も、本来の金額より年金の所得が増えるため、社会保険料や税額がより多く差し引かれる可能性があります。
 
ほかにも、加給年金が使えなくなるケースがあるといったデメリットがあります。
 
繰下げ受給を選択するときは、こうしたメリットとデメリットを理解したうえで、受け取る時期を決めるとよいでしょう。
 

出典

厚生労働省年金局 令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況Ⅱ. 厚生年金保険(2)給付状況 表6 厚生年金保険(第1号) 受給者平均年金月額の推移 (8ページ)
 
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

  • line
  • hatebu
【PR】 SP_LAND_02
FF_お金にまつわる悩み・疑問