厚生年金が“国民年金の財源”に…「会社員だけ増税?」「これ以上は無理」現役世代から怒りの声も多数! 本当にサラリーマンも“得”するの? 改正案を確認

配信日: 2025.06.28 更新日: 2025.10.21
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厚生年金が“国民年金の財源”に…「会社員だけ増税?」「これ以上は無理」現役世代から怒りの声も多数! 本当にサラリーマンも“得”するの? 改正案を確認
2025年6月13日、いわゆる「年金制度改正法」が成立しました。改正内容は被用者保険の適用拡大など非常に幅広いものですが、特に「将来の基礎年金の給付水準底上げ」という名目で、その財源として厚生年金保険料が使われるという案について、厚生年金保険料を支払っている現役世代からは否定的な声が多く出ています。
 
本記事で「年金制度改正法」の主な内容を確認し、現役世代のためになる改正なのかを見ていきましょう。
山田圭佑

FP2級・AFP、国家資格キャリアコンサルタント

「年金制度改正法」改正案の具体的内容とは

厚生労働省のウェブサイトによると、今回の「年金制度改正法案」には、主に以下の内容が含まれています。
 

・被用者保険の適用拡大

パートタイマーなど短時間労働者への厚生年金保険の適用範囲を拡大することで、将来の年金受給者を増やし、制度の持続性を高める狙いがあります。これにより、これまで国民年金のみに加入していた人が厚生年金にも加入できるようになり、将来の年金額が増える可能性がありますが、個人と企業の負担増になることも見逃せません。
 

・在職老齢年金制度の見直し

年金を受給しながら働く高齢者の年金額を調整する「在職老齢年金制度」の基準を見直すことで、高齢者の就労意欲を阻害しないようにする目的があります。
 
具体的には、現在は毎月の賃金(ボーナスを含む年収の12分の1)と受け取る厚生年金の合計額が50万円以上になると、50万円を超えた分の年金支給が停止されますが、この基準が62万円まで引き上げられます。
 

・将来の老齢基礎年金の底上げ

今回特に注目されているのが、老齢基礎年金の底上げ策です。これは、少子高齢化で未納者や免除者が増え、国民年金だけでは生活が苦しくなる世帯が増えている現状に対応するため、保険料を納めていない人でも一定の給付を受けられるようにする案です。
 
その財源として、厚生年金保険料積立金の一部をあてることが検討されています。この案が実施されるかどうかは、今後の「財政検証」の結果次第となりました。
 
この中で、特に現役世代の反発を招いているのが、老齢基礎年金の底上げ策における厚生年金積立金の活用です。
 
現在の年金制度では、老齢基礎年金(国民年金)は国庫負担と国民年金保険料でまかなわれていますが。経済状態が横ばいのままでは30年後に、基礎年金受給額が現在より30%下がると言われているために、これを補てんするために基礎年金を底上げし、厚生年金の財源を一部活用することが議論されています。
 
基礎年金と厚生年金の区別を曖昧にするかのような案に、厚生年金保険料を支払っている層が不公平感を覚えるのは無理もないことでしょう。
 

結局、サラリーマンにとって「得」な改正になるの?

厚生労働省は、「年金の底上げは、十分な収入が得られず、将来受け取る年金も少なくなる就職氷河期世代のためになる」という説明をしていますが、その底上げする部分を氷河期世代も含む現役世代がこれまで支払った「厚生年金の積立金」でまかなうというやり方では、本来もらえるお金を付け替えただけにしかなりません。
 
加えて、基礎年金には保険料だけでなく国庫負担も半分入っていますので、基礎年金底上げは今後の増税として跳ね返ってくる可能性が十分あります。
 
さらに、基礎年金は厚生年金に加入していない自営業者などにも支払われるものですので、大きな目で見れば厚生年金に加入するサラリーマンにとって「得」になることはないでしょう。筆者には「年金制度改正法」は、将来年金を受け取る国民、特にサラリーマンのためではなく、現在の年金制度を維持するためのものに見えてしまいます。
 
今回の制度改正案が実施に移されるかは、4年後の2029年に行われる5年に1度の「財政検証」の結果次第となりますので、実際に案の通り制度改正がされるのか明確なことは言えません。ただ、筆者としてはこの4年間でよほどの財政的な好転がなければ、上記の案はそのまま実施されるのではないかと思っています。
 
現役世代は、年金制度にまつわる今後の推移に注目しつつも、老後の生活資金に関して自衛してくことがますます必要になりそうです。
 

まとめ

「基礎年金底上げ」の検討が盛り込まれた「年金制度改正法」には、現役世代から強い反発が寄せられています。
 
基礎年金底上げの財源としては、厚生年金の積立金をあてることが議論されており、実際に制度改正がされるかは2029年の「財政検証」の結果を待つことになりますが、現役世代としては今後の推移に注目しつつも、老後の生活についてますます自衛していく必要があるでしょう。
 

出典

厚生労働省 年金制度改正法が成立しました
 
執筆者 : 山田圭佑
FP2級・AFP、国家資格キャリアコンサルタント

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