3歳年下の専業主婦の妻がいます。「年金の繰下げ」を検討していますが、「加給年金」がもらえないと聞きました。繰下げしないほうがメリットは大きいでしょうか?

配信日: 2025.07.01 更新日: 2025.10.21
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3歳年下の専業主婦の妻がいます。「年金の繰下げ」を検討していますが、「加給年金」がもらえないと聞きました。繰下げしないほうがメリットは大きいでしょうか?
年金の受給開始を遅らせて受給額を増やそうと、繰下げ受給を検討する人は多いでしょう。しかし、繰下げ受給には配偶者がいる場合、「加給年金」との関係に注意が必要です。特に、専業主婦の妻が3歳年下というケースでは、繰下げ受給をすることによって加給年金が受け取れなくなる可能性もあります。
 
本記事では、加給年金の仕組みと繰下げ受給の影響について解説します。年金受給をするにあたり、メリットが大きい方法を一緒に考えていきましょう。
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加給年金とは? 誰がもらえるのか

加給年金とは、厚生年金の被保険者期間が20年以上あり、老齢厚生年金を受け取る人が65歳到達時点で「生計を維持している65歳未満の配偶者や18歳到達年度の末日まで、または一定の障害がある20歳未満の子ども」がいる場合に支給されるいわば「家族手当」のような制度です。
 
主に夫が会社勤めをしていた家庭で支給されるケースが多く、配偶者が専業主婦で年齢や収入要件を満たしていれば、ほとんどの場合この条件を満たしています。
 
2025年(令和7年)度の加給年金支給額は、年額23万9300円(月額約1万9900円)です。この金額は老齢厚生年金に上乗せされて支給されます。また、18歳到達年度の末日までの子どもがいる場合は、受け取れる加給年金は子どもが2人目までは各23万9000円、3人目以降は各7万9800円が加算されます。
 
受給する期間が数年間であっても、合計で数十万円以上になるため、軽視できない金額です。なお、加給年金を受給するためには届出が必要です。
 

年金の繰下げ受給とは? 基本の仕組み

現在の制度では、老齢基礎年金と老齢厚生年金は65歳から支給されますが、受給開始を70歳や75歳まで遅らせる「繰下げ受給」を選ぶと、遅らせた期間に応じて年金が増加します。受給開始を1ヶ月遅らせるごとに0.7%ずつ上乗せされ、75歳まで繰下げると最大で84%の増額です。
 
例えば、本来の年金額が月15万円の人が70歳まで5年間繰下げると、受給額は21万3000円です。増額された年金額は生涯にわたって維持されるため、長生きをすればするほど得をする制度といえます。
 

繰下げすると加給年金はもらえないのか

加給年金は「老齢厚生年金の本体」に付随して支給されるため、老齢厚生年金の支給を繰下げると、加給年金の支給も遅れることになりますが、場合によっては受け取れない可能性もあります。
 
例えば、夫が65歳、妻が62歳の夫婦で夫が老齢厚生年金の受給を70歳まで繰下げた場合、65歳から年金を受け取らないため、加給年金もありません。さらに妻が65歳になると、加給年金の対象外となるため、結局一度も加給年金を受け取れないというケースも考えられます。
 
この場合、失う加給年金の総額は71万7900円になります。現役時代に支払った厚生年金保険料額によっては、年金の増額よりも加給年金の損失のほうが大きい可能性もあるため、繰下げ制度を利用する際は事前に十分な確認が必要です。
 
ただし、老齢基礎年金と老齢厚生年金は別々に繰下げることが可能です。老齢基礎年金のみを繰下げ、老齢厚生年金を65歳から受給する場合は、加給年金を受け取ることができます。この方法を選択することで、加給年金を受け取りながら、老齢基礎年金の受給額を増やすことが可能となります。
 
繰下げ制度を利用する際は、加給年金の受給資格や配偶者の年齢などを考慮し、最適な受給方法を選択することが重要です。
 

夫婦の将来設計に合わせた判断が重要

年金受給開始時期を繰下げることで年金額が増えるのは魅力的ですが、年齢差のある夫婦は加給年金がもらえなくなるリスクも考える必要があります。
 
専業主婦の妻が3歳年下の場合、夫が65歳から年金を受け取り始めると、3年間の加給年金受給期間が見込まれます。
 
しかし、仮に年金受給開始を5年間繰下げて70歳から年金の受け取りを選択すると、その時点で妻が65歳を超えているため加給年金を受け取れません。その結果、繰下げた分月々の受給額は増えますが、3年分の年金額を受給するためにも長く生きる必要が出てきます。
 
もし、受け取れないまま亡くなってしまうと、大きな金銭的損失になりますので、将来設計を考えて受給開始タイミングを決めるのがおすすめです。
 
夫が65歳で年金受給を開始すると、加給年金が加算された老齢厚生年金が支給されます。妻が65歳になる3年後で加給年金部分が打ち切りとなります。
 
ただし、妻が昭和41年4月1日以前生まれなどの条件を満たす場合、加給年金停止後、妻の老齢基礎年金に「振替加算」が加算される制度があります。実際に振替加算をするには、年金を請求する際に提出する裁定請求書に「配偶者の年金証書の基礎年金番号、年金コード、配偶者の氏名と生年月日」の記載が必要です。
 

加給年金を踏まえた繰下げ戦略を考えよう

加給年金を受け取り、なおかつ将来の年金額を少しでも増やす方法を探ることが、最もよい選択につながります。まずは自身の家族状況が加給年金の受給対象になるかを確認し、金額と期間を試算したうえで、繰下げによる増額や振替加算の利用などのバランスを検討するのが最もメリットが大きいでしょう。
 

出典

日本年金機構 年金の繰下げ受給
日本年金機構 加給年金額と振替加算
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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