定年退職後「月10万円」のアルバイトで働く予定です。税金や年金にどんな影響がありますか?
本記事では、年金をもらいながら働く場合、税金や年金にどんな影響があるかを解説します。
ファイナンシャル・プランナー
中小企業診断士
早稲田大学理工学部卒業。副業OKの会社に勤務する現役の理科系サラリーマン部長。趣味が貯金であり、株・FX・仮想通貨を運用し、毎年利益を上げている。サラリーマンの立場でお金に関することをアドバイスすることをライフワークにしている。
年金への影響は?
厚生年金をもらいながら働いて収入を得ていると、年金が一部もしくは全額支給停止される制度があります。これを、「在職老齢年金」といいます。
では、具体的にどのような場合に、年金の支給停止になるのか解説します。なお、老齢基礎年金は支給停止の対象外となっていますので、国民年金のみを受給している人は対象外となります。
1. 対象者
厚生年金を受け取りながら働く、60歳以上の方。
2. 支給停止額
(1)基本月額と総報酬月額相当額の合計が51万円以下の場合
この場合、年金の支給停止額は0円のままで、全額支給されます。「基本月額」とは、1年間に支給される年金額を12ヶ月で割った金額をいいます。また「総報酬月額相当額」とは、毎月の賃金と1年間にもらう賞与を12ヶ月で割った金額のことをいいます。
(2)基本月額と総報酬月額相当額の合計が51万円を超える場合
この場合には、下記計算式によって算出される金額が支給停止されます。
支給停止額=(総報酬月額相当額+基本月額-51万円)×1/2×12
(3)毎月10万円をアルバイトで稼ぐ場合の例
厚生年金を年間120万円(基本月額10万円)もらっている人が、10万円/月のアルバイト(賞与なし)をした場合、「総報酬月額相当額」はアルバイト代の10万円です(なお、アルバイト以外の所得はないものとします)。
総報酬月額相当額+基本月額=10万円+10万円
=20万円<51万円
上の式のように、基本月額と総報酬月額相当額の合計が51万円以下となるため、支給停止額は0円であり、全額年金を受給することができます。
税金への影響は?
アルバイトの収入は「給与所得」として扱われるため、所得税と住民税の課税対象となります。
さらに、アルバイトなどの給与所得や公的年金以外に、生命保険や共済などの契約に基づいて支給される個人年金、生命保険の満期返戻金なども合計した所得金額が20万円を超える場合には、基本的に確定申告をする必要があります。
※「所得」とは、収入から必要経費を差し引いた手取りの金額をいい、「収入」とは労働やサービスなどを提供した対価として受け取れる額面の金額をいいます。
したがって、年金以外に毎月アルバイトで10万円を稼ぎ、年額120万円の収入がある場合は、給与所得控除である55万円を差し引いた65万円が「所得」となります。所得金額が20万円を超えるので、基本的に確定申告が必要です。
なお、公的年金等の収入金額の合計額が400万円を超える場合は、アルバイトなどの所得金額の多寡にかかわらず、基本的に確定申告が必要になります。
また、確定申告によって税金が発生するか否かについては、申告する方の状況、すなわち公的年金をいくらもらっているか、扶養控除、生命保険料控除、医療費控除などの所得控除の金額や、住宅ローン・配当控除などの税額控除の金額によって変わってきます。
まとめ
厚生年金をもらいながら毎月10万円のアルバイトの収入を得ても、年金が減らされることはありません。税金については、所得が20万円を超えるので、確定申告をして所得税と住民税を計算する必要があります。
ただし、税金が発生するかどうかは、その方の年金受給額や所得控除額、税額控除額の状況によって変わってきます。詳しくは、住所地の税務署に相談することをお勧めします。
出典
日本年金機構 在職老齢年金の計算方法
国税庁 確定申告が必要な方
執筆者 : 堀江佳久
ファイナンシャル・プランナー
