これまで年金保険料を「1000万円」以上払ってきた会社員。友人に「子どもがいないと奥さん年金もらえないよ」と言われたけど、もしかして“払い損”になる!? 今後の変更点も確認

配信日: 2025.07.04 更新日: 2025.10.21
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これまで年金保険料を「1000万円」以上払ってきた会社員。友人に「子どもがいないと奥さん年金もらえないよ」と言われたけど、もしかして“払い損”になる!? 今後の変更点も確認
「長年、コツコツと年金保険料を納めてきたけれど、もし自分が先に亡くなったら妻には何も残らないのでは」。そんな不安を抱いている人も少なくないかもしれません。
 
特に子どもがいない夫婦の場合、遺族年金が受け取れないという話を耳にして「それなら今までの保険料は無駄だったのでは?」と思ってしまうこともあるのではないでしょうか。
 
本記事では、公的年金制度の基本構造から、遺族年金の受給要件、2028年からの制度改正、そして年金の本質的な意義について解説していきます。
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公的年金制度の3本柱:老齢・障害・遺族

日本の公的年金制度は「老齢年金」「障害年金」「遺族年金」の3本柱で構成されており、概要は次のとおりです。

・老齢年金:65歳以降、一定の期間保険料を納めた人が受け取れる
 
・障害年金:事故や病気などで所定の障害を負った場合に支給される
 
・遺族年金:死亡した人に扶養されていた遺族が生活保障として受け取れる

年金保険料は決して少なくないため、「払い損」は誰しも気になるところですが、特に「子どもがいないと遺族年金はもらえない」といった認識を持っている人もいるかもしれません。
 

遺族年金の種類と受給要件

遺族年金には大きく分けて以下の2つがあります。
 
1. 遺族基礎年金(国民年金)
 
遺族基礎年金は、原則として「18歳になった年度末の子ども、または子どもがいる配偶者」に支給される制度です。つまり、子どもがいない夫婦の場合、遺族基礎年金は受け取れません。
 
2. 遺族厚生年金(厚生年金)
 
会社員などが加入する厚生年金に基づく遺族厚生年金は、子どもがいなくても配偶者に支給される場合があります。
 
具体的には、次のいずれかの要件を満たしている人が死亡した場合、遺族に遺族厚生年金が支給されます。

・厚生年金保険の被保険者である間に死亡したとき
 
・厚生年金の被保険者期間に初診日がある病気やけがが原因で、初診日から5年以内に死亡したとき
 
・1級・2級の障害厚生(共済)年金を受け取っている人が死亡したとき
 
・老齢厚生年金の受給権者であった人が死亡したとき
 
・老齢厚生年金の受給資格を満たした人が死亡したとき

さらに、40歳以上65歳未満の妻が遺族厚生年金を受け取る場合、該当年齢以下の子どもがいないなどの条件を満たせば中高齢寡婦加算(年額約60万円)が上乗せされる可能性があります。
 

「払い損」になることもある?

年金保険料を長年納めていても、受給額が少なくなる、あるいは受け取れないこともあります。
 
例えば、老齢年金を受け取る前に亡くなってしまうと、保険料を支払っている本人としては「払い損」といえます。さらに、子がいない場合、遺族基礎年金は受け取れないため、その点でも損といえるでしょう。
 
とはいえ、年金制度の本質は「保険」にあります。老後に長生きした場合でも、一定の年金が終身で支給される点は、最大の強みといえます。
 
老齢年金は生涯受け取れますので、長生きすればするほど、納めた額よりも多くの年金を受け取ることが可能です。また、障害を負った際には障害年金が、万一のときには残された配偶者に遺族厚生年金が支給されるなど、生活保障機能としての役割も非常に大きいのです。
 

2028年4月以降の変更点にも注意

2025年6月、年金制度改革関連法が成立し、年金制度の見直しが予定されています。
 
特に注目されているのが、中高齢寡婦加算の段階的見直しや、遺族厚生年金の支給要件の柔軟化など、男女差の解消に向けた変更です。
 
例えば、現状は夫が亡くなった場合、その時点で妻が30歳未満の場合は5年間、30歳以上の場合は無期限で遺族厚生年金を受給できます。一方、妻が亡くなった場合、夫が55歳未満の場合は給付なし、55歳以上の場合は60歳から無期給付を受けられます。
 
これが、見直し後は男女ともに60歳未満で死別の場合は原則5年間の有期給付(配慮が必要な場合は5年目以降も継続)、60歳以上で死別の場合は現行通り無期給付となっています。
 
なお、すでに遺族厚生年金を受給しているなど、一定の条件を満たす人は、今回の見直しによる影響はありません。最新の情報や詳細は、厚生労働省の公式サイトや、年金事務所、社会保険労務士などの専門家に確認するようにしましょう。
 

まとめ

「年金は払い損だ」と感じる場面もあるかもしれませんが、それは一側面にすぎません。年金は、いつまで生きるか分からない人生に、確かな安心を提供するための保険制度です。
 
特に夫婦のどちらかが亡くなった場合にも、残された配偶者の生活を支えるセーフティーネットとして機能しています。最新の制度変更も踏まえ、公的年金の仕組みを正しく理解し、自分と家族の将来設計に生かすことが大切だといえるでしょう。
 

出典

日本年金機構 遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)
日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
厚生労働省 遺族厚生年金の見直しについて
 
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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