厚生年金に加入しながら65歳まで働きたいのですが、年金は60歳から受け取りたいです。年金受給は65歳まで待った方がお得でしょうか?
配信日: 2025.07.06

この記事では、厚生年金に加入しながら65歳まで働いた場合、60歳から繰り上げて年金を受け取る選択肢が有利なのか、あるいは65歳から受け取ったほうが得なのかを、損益分岐点のシミュレーションを交えて解説します。

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厚生年金の受給開始年齢と繰上げ受給の仕組み
年金受給の開始年齢は原則65歳ですが、希望すれば繰り上げて60歳から受給できます。
ただし、繰り上げた場合は月数に応じて年金額が減額されるため、60歳から受け取ると最大24%が減額されてしまいます(昭和37年4月2日以降生まれの方)。
一方、65歳以降に受給開始を遅らせる「繰下げ受給」の選択も可能です。繰り下げた期間に応じて年金額が増額され、最大で84%増額されます。
60歳から受給開始した場合のメリット・デメリット
60歳から年金を受け取るメリットは、早期に年金収入を得られる点です。老後の生活費の不安を軽減し、趣味や旅行などセカンドライフを早くから楽しめます。
ただし、年金額が減額されるため、生涯を通じて受け取る総額が少なくなる可能性があるといったデメリットもあります。また、「繰上げ受給」の請求をした後は、請求の取り下げができません。年金額が確定されたら一生涯続くことになるため、慎重に検討しましょう。
なお、厚生年金に加入しながら働いている場合、賃金と老齢厚生年金の合計額が一定基準を超えると、老齢厚生年金が一部または全額停止される「在職老齢年金」の制度が定められています。
日本年金機構によれば、老齢厚生年金の基本月額と総報酬月額相当額の合計額が「51万円(令和7年度の支給停止調整額)以下」であれば老齢厚生年金は全額支給されますが、51万円を超えた場合には「支給停止額」が発生します。
調整後の老齢厚生年金支給額は「基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-51万円)÷2」で算出が可能です。
例えば、老齢厚生年金額120万円(基本月額10万円)の方で、総報酬月額相当額が42万円(ボーナス分も加算)の場合、老齢厚生年金支給額は年間114万円(月額9万5000円)となります。
60~65歳の間に生活費として十分な収入を得られそうな場合には、60歳から年金を受け取ると損をしてしまうケースもあるため、注意してください。
損益分岐点のシミュレーション
60歳から繰り上げて年金を受け取った場合と、65歳から年金の受け取りを開始した場合の損益分岐点を計算してみます。表1は、65歳から年額200万円の年金を受け取れる人が、60歳から繰上げ受給して24%減額され、年額152万円の受給額となったケースを元に算出しています。
表1
年齢 | 60歳から受給開始 | 65歳から受給開始 |
---|---|---|
70歳 | 1520万円 | 1000万円 |
75歳 | 2280万円 | 2000万円 |
80歳 | 3040万円 | 3000万円 |
85歳 | 3800万円 | 4000万円 |
90歳 | 4560万円 | 5000万円 |
※筆者作成
81歳以降は、65歳から受給を開始した場合の通算受給額が、60歳から繰り上げて受給を開始した場合の通算受給額を上回ります。
ただし、通算受給額を上回るタイミングは、年金受給額や繰上げ時期などによっても異なるため、繰上げ受給を検討している場合は、実際に自身の状況に合わせて計算してみることをおすすめします。
働き方によって最適な受給開始時期を検討しよう
60歳から年金を受け取るか、65歳になってから受け取るかは、60歳以降の収入額など、個々の事情によって異なります。
年金を受け取りながら60歳以降も現役の頃と同じように働き続ける場合には、「在職老齢年金」の影響を理解しておくことが大切です。将来の計画などを想定しながら受給額を算出し、悔いのない選択をしてください。
出典
日本年金機構 在職老齢年金の計算方法
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー