年収700万円、もうすぐ定年ですが嘱託社員として残ることに。厚生年金「約5万円」はそのまま……正直負担ですが、年金はどれくらい増えますか?

配信日: 2025.07.12 更新日: 2025.10.21
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年収700万円、もうすぐ定年ですが嘱託社員として残ることに。厚生年金「約5万円」はそのまま……正直負担ですが、年金はどれくらい増えますか?
ひと昔前は60歳で定年を迎えると、そのまま引退する人がほとんどでしたが、現在は60歳の定年後、再雇用制度により同じ会社で65歳になるまで働き続ける人が増えています。
 
本記事では65歳まで嘱託社員として働くと、どのくらい年金が増えるか考えてみましょう。
篠原まなみ

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP認定者、宅地建物取引士、管理業務主任者、第一種証券外務員、内部管理責任者、行政書士

外資系証券会社、銀行で20年以上勤務。現在は、日本人、外国人を対象とした起業家支援。
自身の親の介護、相続の経験を生かして分かりやすくアドバイスをしていきたいと思っています。

年金のしくみ

高年齢者雇用安定法の改正(2013年、2021年、2025年)や、60歳を過ぎても心身ともに若く、働く意欲を持つ人が多くなったこと、経済的に厳しく収入を増やしたいと考える人が目立つようになったことなどから、60歳以降も働くのが当たり前になっています。60~64歳で働いている人は74.3%、65~69歳では53.6%の人が働いています(※1)。
 
公的年金には、20歳以上60歳未満のすべての方が加入する国民年金(基礎年金)と、会社員・公務員が加入する厚生年金保険の2種類があります。会社員・公務員は、2つの年金制度に加入しています。
 
60歳になると国民年金保険料の支払い義務はなくなりますが、会社員で、常勤で70歳になるまで働く場合は、厚生年金保険料が会社の給料から引かれます(※2)。厚生年金保険料の計算の仕方は、以下のとおりです。


厚生年金保険料(月額)= 標準報酬月額 × 保険料率(18.3%) (※3)

→本人と会社の折半(9.15%ずつ)で、本人分は給料から引かれます。
 
相談者の例でいうと700万円÷12ヶ月=58万3333円
→標準報酬月額(※4)に当てはめると59万円×18.3%÷2=5万3985円

 

年金受給額の計算方法

毎月厚生年金が約5万4000円給料から天引きされるのに対して、年金額はどれくらい増えるのでしょうか。計算式は、以下のとおりです。
 
平均標準報酬月額 × 5.481/1000 × 加入月数(注)
 
相談者の例に当てはめると、以下のようになります。
 
59万円×5.481/1000×(12ヶ月×5)=19万4027円/年
 
月額に換算すると、約1万6000円です。月々厚生年金保険料を約5万4000円払って、将来の年金額の月額は約1万6000円かと思うかもしれませんが、年金は亡くなるまで一生もらえますので、安心につながります。
 
(注):これらの計算にあたり、過去の標準報酬月額と標準賞与額には、最近の賃金水準や物価水準で再評価するために「再評価率」を乗じます。
 

年金を増やす方法

長く働くことによって、確実に老後資金は増加します。年金が増えるだけではなく、貯蓄も増えます。貯蓄が増えることで余裕ができて、原則65歳から受給する年金を繰下げてさらに年金を増やすことができます。繰下げをした場合の増加率は、以下の計算です。
 
増額率= 0.7% × 65歳に達した月から繰下げ申出月の前月までの月数
 
年金を70歳で受給する場合は、5年=60ヶ月繰下げることにより、42%増加することになります。75歳で受給する場合は、10年=120ヶ月で84%増加します(※5)。
 
例えば65歳で23万円の受給予定だった人は、5年間受給を遅らせることで23万円×1.42で32万6600円、10年間遅らせることで23万円×1.84で42万3200円になります。なお、国民年金、厚生年金に別々に繰下げることも可能です。
 

まとめ

全国の平均年金月額は、厚生年金が14万7360円、国民年金が5万7700円で、合計で20万5060円です(※6)。
 
一方、ゆとりある老後生活を送るための費用として、必要と考える金額は平均37万9000円になっています(※7)。金額のギャップを埋めるために元気なうちは、働く日数を減らしても長く働いて年金額や資産を増やしましょう。
 

出典

(※1)総務省統計局 労働力調査(基本集計)2024年(令和6年)平均結果の概要 表I-4 年齢階級別就業率の推移
(※2)日本年金機構 公的年金制度の種類と加入する制度
(※3)日本年金機構 厚生年金保険の保険料
(※4)全国健康保険協会(協会けんぽ)令和7年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表
(※5)日本年金機構 年金の繰下げ受給
(※6)厚生労働省年金局 令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況(令和6年12月)都道府県別老齢年金受給者数及び平均年金月額
(※7)公益財団法人生命保険文化センター 老後の生活費はいくらくらい必要と考える?
 
執筆者 : 篠原まなみ
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP認定者、宅地建物取引士、管理業務主任者、第一種証券外務員、内部管理責任者、行政書士

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