私たちが納めた「年金積立金」が「株式運用」に使われているって本当? 毎月2万ほどの金額ですが「運用益」は出ているのでしょうか?
本記事では、年金積立金の運用の仕組みや運用成果、今後の展望についてまとめました。
ファイナンシャルプランナー
FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。
編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。
FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。
このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。
私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。
年金積立金はなぜ運用されるのか
日本の年金制度は、現役世代が納めた保険料を現在の高齢者の年金給付に充てる「賦課方式」が基本です。しかし、少子高齢化の進行により、保険料収入だけでは将来的な年金給付が賄えなくなるリスクが高まっています。
そこで、余剰となった保険料を「積立金」として確保し、これを運用して増やすことで、将来の年金財政の安定化を図っているのです。
年金積立金の運用主体「GPIF」とは
年金積立金の運用を担っているのは「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)」です。GPIFは世界最大級の年金基金であり、2024年度末時点で249兆7821億円もの運用資産を保有しています。
この巨額の資金を効率的かつ安全に運用し、将来世代の年金給付を安定的に支えることが、GPIFの使命です。
年金積立金の運用先
GPIFの運用は「長期運用」と「分散投資」を基本方針とし、国内債券・外国債券・国内株式・外国株式に均等に資金を配分しています(2024年末時点)。これは、特定の資産に偏ることなく、リスク分散と安定的な収益確保を両立させるためのものです。
かつては国内債券中心の運用でしたが、低金利の長期化やインフレリスクへの対応、年金財政上必要な運用利回りの確保のため、2014年以降は株式や外国債券の比率を引き上げました。
こうしたことで、世界経済の成長を取り込むことができ、長期的な資産の増加が期待できる構造となっています。
運用実績
GPIFの「2024年度 業務概況書」によると、2024年度のGPIFの運用収益は1兆7334億円、収益率は0.71%となっています。また、国内債券の運用収益は-2兆8426億円(前年比-4.47%)でした。
外国債券が+1兆857億円(前年比+1.70%)、国内株式が-8200億円(前年比-1.46%)、外国株式が+4兆3103億円(前年比+6.62%)で、国内債券と国内株式のマイナスが影響したことが分かります。
GPIFの運用戦略とリスク管理
GPIFは、世界各国の株式や債券に分散投資することで、特定の市場や資産の変動リスクをおさえ、安定した収益を目指しています。
また、資産配分が大きく偏った場合には「リバランス」を実施し、常に目標比率に近づけるように調整している点が特徴です。株式や債券などによる資産運用は、短期的には市場の変動による損益が発生する可能性があります。
しかし、長期的に見れば世界経済の成長に合わせて資産価値が増加する傾向にあることから、GPIFでは長期の運用を基本方針としているのです。
まとめ
年金積立金は、債券と株式に均等に配分されて運用されています。少子高齢化が進む中、年金積立金の効率的な運用は今後さらに重要性を増すでしょう。
GPIFは、インフレや金利、為替、株価などの市場変動のリスクを管理し、長期分散投資やリバランスにより収益を確保しています。
GPIFが生み出した運用益や元本は、将来の年金給付の原資として活用されます。年金財源全体のうち、積立金から賄われるのは1割程度ですが、運用益があることで将来世代の負担軽減や、年金給付の安定化に大きく貢献しているといえるでしょう。
出典
年金積立金管理運用独立行政法人 2024年度 業務概況書
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
