兄が「国民年金を1ヶ月だけ未納した」と言っています。「479ヶ月」と「480ヶ月」、受給額は「1ヶ月足りない」だけでいくら減りますか?

配信日: 2025.07.16 更新日: 2025.10.21
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兄が「国民年金を1ヶ月だけ未納した」と言っています。「479ヶ月」と「480ヶ月」、受給額は「1ヶ月足りない」だけでいくら減りますか?
老後の生活を支える老齢基礎年金ですが、「満額」を受け取れる人は意外と多くありません。ちょっとした手続きミスや納付忘れで「1ヶ月だけ未納」というケースも実際にあります。
「たった1ヶ月」と思いがちですが、年金は一生もらうもの。わずかな差が将来大きな違いにつながることもあります。
 
この記事では、年金が満額にならない理由や、今からできる対策について分かりやすく解説します。
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「満額の基準」は?2025年度の年金額を確認

まず、基準となる満額を確認しましょう。2025年度(令和7年度)の老齢基礎年金は、以下の表のとおりです。
 
この金額は、いわゆる“満額”と呼ばれる水準で、20歳から60歳までの40年間(480ヶ月)を1ヶ月も欠かさず納めた場合に支給されます。
 
表1

対象者 年額 月額
通常(昭和31年4月2日以降生まれ) 83万1700円 6万9308円
昭和31年4月1日以前生まれ 82万9300円 6万9108円

※日本年金機構 「令和7年4月分からの年金額等について」を基に筆者作成
 

たった1ヶ月の未納でも「満額」じゃなくなるのは本当?

「たった1ヶ月くらい大丈夫」と思いがちですが、老齢基礎年金は40年(480ヶ月)全ての保険料を納めてはじめて“満額”となります。そのため、1ヶ月でも納めていない期間があると、それだけで年金額は確実に減ってしまうのです。
 
実際には、「知らないうちに1ヶ月足りなかった」というケースも少なくありません。ここでは、老齢基礎年金が満額に届かない主な理由として、よくある3つのパターンをご紹介します。
 

未納期間があるケース:転職や手続きミスで起こりがち

まず最もよくあるのが、保険料を納めていない「未納期間」があるケースです。
 
たった1ヶ月でも未納があると、将来の年金額はその分減ってしまいます。未納は次のような場面で起こりやすいです。

●学生時代:学生納付特例制度を利用せず、保険料を支払わなかった。
●退職、転職期間:会社を辞めてから次の会社に入社するまでの期間、国民年金への切り替え手続きを忘れたり、保険料を納めなかったりした。
●経済的な理由:収入が減少し、保険料の支払いが困難になり、手続きをせず未納状態になった。

 

免除・猶予を受けて追納しなかったケースも注意

経済的な理由などで保険料の支払いが困難な場合、「保険料免除制度」や「納付猶予制度」を利用できます。これらの制度を利用した期間は、未納期間とは異なり、年金の受給資格期間には算入されます。
 
ただし、免除や猶予を受けた期間の保険料を後から納める「追納」をしないままだと、その期間については年金額が減額されてしまいます。例えば全額免除の場合、追納しなければ満額の2分の1でしか反映されません。
 
免除や猶予は“後で納めることができる制度”ですが、追納しないと最終的な年金額に影響が出てしまいます。
 

そもそも加入期間が40年に満たないケース

もう1つのケースが、「そもそも国民年金の加入期間自体が40年(480ヶ月)に満たない」場合です。
 
例えば、海外に長期滞在していたり、手続きの都合で空白期間が生じていたりすると、その分納付期間が足りず、満額には届かなくなります。
 
老齢基礎年金は納付月数に応じて金額が決まるため、加入期間が少なければ、その分受け取れる額も比例して減ってしまいます。
 

たった1ヶ月の未納で、受け取れる年金額はどう変わる?

たった1ヶ月の未納でも、その分受け取れる年金額は確実に減ってしまいます。

【1ヶ月あたりの年金額の計算】

83万1700円(満額) ÷ 480ヶ月 =約1733円

このため、1ヶ月未納の場合、将来受け取る年金額は満額より年額で1733円少なくなります。
 
「たった1ヶ月なら、千円ちょっとの違い」と思うかもしれませんが、年金は終身にわたって受け取るものです。これが5ヶ月、10ヶ月と積み重なれば、将来の生活資金に与える影響は決して小さくないでしょう。仮に20年間受給すると、累計で3万4000円以上の差が生じます。
 

「満額に届かないかも」と感じたときの対処法

もし未納や免除の期間が見つかっても、諦める必要はありません。満額に近づけるための制度が用意されているので、確認してみましょう。
 

保険料を後から納める「追納制度」

免除・猶予制度や、学生納付特例制度を利用した期間の保険料は、10年以内であれば後から納める(追納する)ことができます。 追納することで、その期間は保険料を全額納付したものとして扱われ、年金額を満額に近づけることが可能です。
 
ただし、追納ができるのは10年以内という期限があるため、早めに自身の記録を確認し、計画的に利用することが重要でしょう。
 

60歳以降も納付できる「任意加入制度」

納付期間が40年(480ヶ月)に満たないために満額受給できない方は、60歳以上65歳未満の期間に国民年金に「任意加入」して保険料を納めることで、満額の480ヶ月に近づけることができます。
 
「もう少しで40年になるのに」という方や、過去の未納期間をさかのぼって納めることができない方にとって、有効な手段となるでしょう。
 

まずは「ねんきんネット」で記録確認から始めましょう

老齢基礎年金は、老後の生活設計における土台となるものです。満額を受け取るためには、20歳から60歳までの40年間、保険料をきちんと納め続けることが基本です。
 
まずは「ねんきんネット」に登録し、納付記録に漏れがないかを確認しましょう。もし未納や免除の期間があれば、追納や任意加入などの対応も検討してみてください。
 

出典

日本年金機構 令和7年4月分からの年金額等について
日本年金機構 任意加入制度
国民年金保険料の追納制度
日本年金機構 老齢年金ガイド令和7年版
 
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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