75歳で年金を繰下げ受給したら、医療費負担が「2割」に…年金が増えても意味がないのでしょうか?
そこで本記事では、75歳以降の医療費負担の変化について解説します。年金を繰下げ受給する場合の注意点もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
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75歳以上の人が加入する「後期高齢者医療制度」
原則として75歳以上になると「後期高齢者医療制度」に加入することになります。ここでは、「後期高齢者医療制度」がどのような内容であるかを解説します。
後期高齢者医療制度とは
「後期高齢者医療制度」とは、75歳以上を対象とした公的な医療保険制度です。高齢期の医療費を支えるために設けられており、75歳に達したすべての方が原則として加入するものです。
また、65歳から74歳でも、一定の障害の状態にあると認定された場合には、この制度に加入できます。
なお、政府広報オンラインによると、75歳になると、それまで加入していた医療保険(国民健康保険や会社の健康保険、共済組合など)から、自動的に後期高齢者医療制度へと移行します。働いているかどうかは関係なく、年齢によって保険制度が切り替わる仕組みです。
医療費の負担割合の違い
病気やけがで病院を受診したとき、窓口で支払う医療費の自己負担割合は、年齢や所得によって異なります。
例えば、6歳までは医療費の2割、7歳から69歳までは3割が自己負担となります。その後、70歳から74歳までは原則2割、そして75歳以上になると原則として1割に負担が軽減されます
75歳以上の方が対象となる後期高齢者医療制度では、一般的な所得がある方の場合は原則1割負担となりますが、現役世代と同じくらいの収入がある方については、3割負担とされています。
さらに、2022年10月からは、一般的な所得がある人のうち、一定以上の所得がある人に対して、窓口負担が1割から2割へと引き上げられました。年齢だけでなく、所得の状況によっても自己負担が変わるため、事前に確認しておくことが大切でしょう。
医療費が2割負担になる対象
後期高齢者医療制度における医療費の負担区分を、表1にまとめました。
表1
| 窓口負担割合 | 区分 | 判定基準 |
|---|---|---|
| 1割 | 一般の所得者 | 下記の2割、3割に該当しない |
| 2割 | 一定以上の所得がある | 以下のどちらも該当する ・同じ世帯の被保険者の中に課税所得が28万円以上ある人がいる ・同じ世帯の被保険者の「年金収入」と「その他の合計所得金額」の合計が、次のいずれかに当てはまる 1人の場合:200万円以上 2人以上の場合:合計320万円以上 |
| 3割 | 現役並み所得者 | 同じ世帯に課税所得が145万円以上ある被保険者がいる※一定の条件を満たしていれば、1割または2割に軽減されることもある |
出典:政府広報オンライン「後期高齢者医療制度 医療費の窓口負担割合はどれくらい?」を基に筆者作成
また、窓口負担が2割になる人に向けて、外来医療費が急激に増えすぎないようにするための「特例措置(配慮措置)」が設けられています。この措置では、外来診療の自己負担の増加分が1ヶ月あたり3000円までにおさえられます。ただし、入院費は対象にはなりません。
この措置は、2025年9月30日までの期間限定で実施されています。
年金を繰下げ受給する際の注意点
年金を繰下げ受給する際、気を付けたい点がいくつかあります。特に以下のポイントに注意しましょう。
●「加給年金」や「振替加算」は繰り下げによって増えません。また、繰下げ待機期間中はこれらを受け取ることができません。
●65歳で年金を受け取れる人が75歳を過ぎて請求しても、増額は75歳までで止まります。支給は75歳までさかのぼって決定されて支払われます(昭和27年4月1日以前生まれの場合は70歳まで)。
●複数の老齢厚生年金(退職共済年金)を受け取る資格がある場合、すべての老齢厚生年金で同時に繰下げ請求が必要です。
●65~66歳の間に障害給付や遺族給付を受け取る権利がある場合、繰下げ受給の請求はできません。ただし、「障害基礎年金」や「旧国民年金法の障害年金」のみ受け取る権利がある場合は、老齢厚生年金の繰下げ受給の請求が可能です。
●66歳以降に遺族年金など、他の公的年金の受給権が発生した場合、その時点で増額率は固定され、それ以上は増えません。支給は他の年金が発生した月の翌月分からです。
●厚生年金基金や企業年金連合会(基金など)の年金を受けている人は、老齢厚生年金の繰り下げと併せて、それらの基金なども同時に繰り下げになります。希望する場合は事前に確認が必要です。
●繰下げ受給で年金が増えると、「年金生活者支援給付金」が受け取れなくなることがあります。また、今回の事例のように、医療・介護保険の自己負担や保険料、税金が増える可能性もあるので注意が必要です。
75歳で年金の繰下げ受給をすると、収入状況によっては医療費負担が2割に増えてしまうケースがある
年金受給を繰り下げると、月々の年金受給額は増えます。ただし、75歳で切り替わる後期高齢者医療制度では、収入状況によっては医療費の自己負担が2割に引き上げられてしまう可能性があります。
また、年金の繰下げ受給を行う際、注意したいポイントについても紹介しました。年金の受給タイミングは、金額だけでなく将来の生活負担も見据えて判断することが大切になるでしょう。
出典
内閣府大臣官房政府広報室 政府広報オンライン 後期高齢者医療制度 医療費の窓口負担割合はどれくらい?
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
