年金を「繰り下げ受給」すると支給額が最大“84％”増加！ でも「税金や社会保険」も高くなるって本当？

年金は原則として65歳から受給できますが、受給開始時期を遅らせる「繰下げ受給」を選択することも可能です。
 
もらえる年金額が増えるため、気になっている人もいるでしょう。
 
本記事では、年金の繰下げ受給がどのようなものなのかをご紹介するとともに、繰下げ受給することで税金や社会保険への影響がどうなるのか、そのほかにデメリットはあるのかをまとめています。

年金の「繰下げ受給」とは？

老齢基礎年金や老齢厚生年金は、受給開始時期を66歳から75歳までの間に遅らせることが可能です。受け取る時期を遅らせることで、受給できる年金額を増やすことができます。
 
公益財団法人生命保険文化センターによると、繰下げ受給することで1ヶ月につき0.7％の増額となります。そのため、何歳まで繰り下げるかによって以下のように増額率が変わってきます。
 

・66歳まで繰り下げた場合：8.4％増額
・70歳まで繰り下げた場合：42％増額
・75歳まで繰り下げた場合：84％増額

 
つまり、最大で84％まで増額できるため、年金を多くもらいたい人にとって魅力的な制度に感じるでしょう。
 
ただし、繰下げ受給することによる注意点もあるため、事前に確認しておいた方がよいかもしれません。
 

年金を「繰下げ受給」すると税金や社会保険が高くなる？

年金を繰下げ受給してもらえる年金額が増えると、総所得金額も増えることになります。その分、納付しなければならない税金や社会保険料も増えてしまう可能性があります。
 
日本年金機構によると、年金から差し引かれる所得税は年金額から控除額を差し引いた残りの額に5％の税率を掛けた額です。年金額が多くなれば所得税の額も大きくなるでしょう。
 
また、後期高齢者の医療費自己負担が所得によっては「2割負担」になる場合もあるため、年金額が増えることで医療費の負担が大きくなる可能性もあります。高齢になると医療機関にかかる機会が増えることも考えられるため、医療費が高くなるデメリットは大きいかもしれません。
 

年金を「繰下げ受給」するメリットとデメリット

年金を繰下げ受給する最大のメリットは、年金額が増えることでしょう。一度反映された増額率は変わらないため、受け取っている間は増額した金額で受け取ることが可能です。そのため、受け取る期間が長くなるほど、総額は増えていくでしょう。
 
ただし、受取期間が短くなってしまうような場合は、総額が少なくなる可能性もあります。そのため、繰下げ受給が必ずしも得になるとは限りません。
 
また、繰下げ待機期間中は加給年金を受給できなくなる点もデメリットです。
 
さらに、遺族厚生年金は本来の額（報酬比例部分）を基に算出されるため、繰下げ受給しても増額されることはありません。こういったデメリットも考慮したうえで、繰下げ受給を選択すべきか検討してみるとよいでしょう。
 

年金を繰下げ受給すると支給額は増加するが税金や保険料は増える場合もある

年金の受給開始時期を遅らせる「繰下げ受給」を選択することで、65歳からもらう場合よりも多くの年金を受け取ることが可能です。
 
ただし、繰下げ受給することで所得が増えることになるため、税金や保険料の支払いも多くなる可能性がある点はデメリットといえるでしょう。また、早くに亡くなった場合は通常よりももらえる年金額が少なくなってしまうこともあります。
 
とはいえ、最大84％も年金額を増額でき、しかも増額率は一生変わらないため、デメリットがあることも考慮したうえで慎重に検討してみることをおすすめします。
 

出典

公益財団法人生命保険文化センター　老齢年金の繰上げ・繰下げ受給について知りたい
日本年金機構　年金から差し引かれている税金の計算方法を教えてください。
厚生労働省　後期高齢者の窓口負担割合の変更等（令和３年法律改正について）
 
執筆者：FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー