65歳から年金を「月20万円」受給予定ですが、友人に「健康寿命も考えると60歳から受け取るのが得」と言われました。実際“繰上げ受給”で、どれだけ差がでるのでしょうか？

配信日: 2025.07.23 更新日: 2025.10.21

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65歳から年金を「月20万円」受給予定ですが、友人に「健康寿命も考えると60歳から受け取るのが得」と言われました。実際“繰上げ受給”で、どれだけ差がでるのでしょうか？

定年後の生活設計を考えるうえで、年金の受給開始年齢は大きな検討事項です。年金は原則65歳から受給できますが、60歳から繰上げ受給を選択することも可能です。

しかし、繰り上げればその分、1ヶ月あたりの年金額が減ってしまうため、「繰上げ受給は損」と考える人も多いかもしれません。そのような中、友人が「60歳からの繰上げ受給が得」と言っていると、なぜ得なのか気になるところです。

本記事では、年金の繰上げ受給の仕組みや、生涯にわたっての受給総額の比較を解説したうえで、友人が「繰上げ受給が得」という理由を考えます。

執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部 ▼

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1 繰上げ受給とは？ 60歳からもらうといくらになる？
2 60歳から受け取った場合、65歳から受け取った場合の総額を比較
3 「繰上げ受給が得」という人の主張とは？
4 まとめ

繰上げ受給とは？ 60歳からもらうといくらになる？

年金は原則65歳から受給できますが、本人からの申し出により60歳から64歳の間に前倒しして受け取る「繰上げ受給」も選択可能です。

ただし、繰上げ受給をした場合、繰り上げる期間をひと月前倒しするたびに、もらえる年金額が0.4％減額されます。つまり、65歳から5年（60ヶ月）繰り上げて60歳から年金を受け取ると、0.4％×60ヶ月＝24％減額されます。

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60歳から受け取った場合、65歳から受け取った場合の総額を比較

60歳からの繰上げ受給と65歳からの受給では、一生でどれくらいの差が出るのでしょうか？

65歳から月に20万円の年金を受給でき、85歳まで生きるという仮定で試算してみましょう。60歳から受給した場合は、前述の通り24％減額されます。

【60歳から受給した場合】

・毎月の年金受給額：20万円×（100％－24％）＝15万2000円
・受給期間：60～85歳（25年間）
・年金受給総額：4560万円（15万2000円×12ヶ月×25年）

【65歳から受給した場合】

・毎月の年金受給額：20万円
・受給期間：65～85歳（20年間）
・年金受給総額：4800万円（20万円×12ヶ月×20年）

総額で見ると、65歳から受け取ったほうが240万円多いという結果になりました。そのため、一般的に「繰上げ受給は損」と考えるのも一理あります。

「繰上げ受給が得」という人の主張とは？

受給総額で見ると損とも思える繰上げ受給ですが、「60歳からの繰上げ受給が得」と考える人もいます。主な理由を見ていきましょう。

実は手取り額の差はそこまで大きくないかも

年金は非課税ではありません。所得税や住民税、さらに健康保険料などが差し引かれます。特に高所得者になればなるほど、引かれる金額は大きくなります。

反対に言えば、繰上げ受給で年金額を抑えれば、所得税などの金額を抑えられる可能性があるということです。年金受給額の差があっても、手取りで比べると差が小さくなるということもあるでしょう。

健康寿命を意識している

年金は生涯受給できますが、「健康なうちにたくさんもらいたい」という人もいるでしょう。具体的には健康寿命のうちに、なるべく多くの年金をもらいたいと考えたとします。

厚生労働省「第4回健康日本21（第三次）推進専門委員会」の資料によると、平均寿命は男性が81歳、女性が87歳ですが、健康寿命は男性が約73歳、女性が約75歳です。先ほどの繰上げ受給の事例を75歳まで生きると考えて計算すると、それぞれの年金受給総額は次の通りです。

【60歳から受給した場合】

2736万円（15万2000円×12ヶ月×15年）

【65歳から受給した場合】

2400万円（20万円×12ヶ月×10年）

60歳から受け取ったほうが336万円多くなり、85歳まで生きると考えて試算した場合とは逆の結果となりました。「元気なうちに年金をたくさんもらい、旅行や趣味を楽しみたい」という人にとっては、60歳からの受給はメリットがあるといえるでしょう。

将来の年金実質価値の低下リスク

日本の年金制度には「マクロ経済スライド」が導入されており、これは少子高齢化や物価・賃金の動向に応じて年金額が調整される仕組みです。この制度においては、今後、物価が上がっても、年金はそれほど上がらない可能性があります。

つまり、物価上昇が続いていき、年金を受け取る時期が後になればなるほど、年金の実質価値が目減りするというリスクがあるといえます。