遺族年金を「5年」で打ち切りにする法案が出ていると聞きました。可決された場合、専業主婦の私にはどう影響しますか?
本記事では、「遺族年金はどう変わるのか?」「専業主婦の方にはどう影響するのか?」について解説します。夫が亡くなったときだけでなく妻が亡くなったときの遺族厚生年金についても解説していますので、ぜひ最後までお読みください。
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー
私がFP相談を行うとき、一番優先していることは「あなたが前向きになれるかどうか」です。セミナーを行うときに、大事にしていることは「楽しいかどうか」です。
ファイナンシャル・プランニングは、数字遊びであってはなりません。そこに「幸せ」や「前向きな気持ち」があって初めて価値があるものです。私は、そういった気持ちを何よりも大切に思っています。
遺族年金はどう変わるのか?
今度の改正でポイントになるのは、遺族年金のうちの「遺族厚生年金」であり、その趣旨は「男女差の解消」です。現行制度では、「子のない配偶者」も受給対象者になり得ますが、「配偶者」が「妻」であるか「夫」であるかによって、扱いが異なります。
現行制度における「子のない妻」と「子のない夫」の具体的な違いは、以下のとおりです。
●「子のない30歳未満の妻」の場合、5年間のみ受給できる
●「子のない30歳以上の妻」の場合、無期限で受給できる
●「子のない55歳未満の夫」の場合、受給できない
●「子のない55歳以上の夫」の場合、60歳以降に無期限で受給できる
この違いが、改正により以下のように変更されます。
●「子のない60歳未満の妻・夫」の場合、原則5年間のみ受給できる(※)
●「子のない60歳以上の妻・夫」の場合、無期限で受給できる
※配慮が必要な場合は、5年目以降も給付が継続される場合がある
なお、上記以外の変更点として、(1)有期給付の収入要件(年収850万円未満)の廃止、(2)年金額の増額があります。これらの変更は、収入要件が廃止されることによってこれまで受給できなかった方が年金を受給できるようになったり、受給できる年金額が増額したりと、多くの方の家計に影響を与えるのではないかと思われます。
専業主婦の方にはどう影響するのか?
変更点については前章に記載したとおりですが、これを「誰にどのような影響があるのか」という視点でまとめると、以下のとおりです。
●「子のない30歳未満の妻」の場合、改正による影響はない(5年の有期受給)。ただし、配慮が必要な場合は、5年目以降も受給が継続できるようになる。
●「子のない30歳以上60歳未満の妻」の場合、改正により「無期限受給」から「5年の有期受給」に変わる。ただし、配慮が必要な場合は、5年目以降も受給が継続できるようになる。
●「子のない60歳以上の妻」の場合、改正による影響はない(無期限受給)。
●「子のない55歳未満の夫」の場合、改正により「受給なし」から「5年の有期受給」に変わる。配慮が必要な場合は、5年目以降も受給が継続できるようになる。
●「子のない55歳以上60歳未満の夫」の場合、改正により「受給なし(受給権あり)」から「5年の有期受給」に変わる。配慮が必要な場合は、5年目以降も受給が継続できるようになる。
●「子のない60歳以上の夫」の場合、改正による影響はない(無期限受給)。
ご相談内容(タイトル)にある「専業主婦の私にはどう影響しますか?」については、「夫と死別」したときの「子の有無」や「ご自身の年齢」により、以下のようにいうことができます。
●子がいる:影響を受けない
●子がいない・30歳未満:影響を受けない
●子がいない・30歳以上60歳未満:「無期限受給」から「5年の有期受給」に変わる
●子がいない・60歳以上:影響を受けない
ただし、この改正は2028年4月から実施されるものの、女性は20年かけて段階的に実施されることになっており、「2028年度末時点で40歳以上になる女性(子のない妻)も改正による影響を受けない(無期限受給のまま)」とされています。
まとめ
本記事では「遺族年金はどう変わるのか?」「専業主婦の方にはどう影響するのか?」について解説しました。まとめると、以下のとおりです。
●2028年4月より、遺族厚生年金は男女差を解消するため、これまで男女によって異なっていた受給期間が男女共通になる(女性については20年かけて段階的に実施される予定)。
●専業主婦の場合、夫の死亡時に「子がいる」「子がいない・30歳未満」「子がいない・60歳以上」であれば、改正による影響を受けないが、夫の死亡時に「子がいない・30歳以上60歳未満」であれば、「無期限受給」から「5年の有期受給」に変わる。ただし、2028年度に40歳以上になる方は、影響を受けない。
上記以外の変更点として、(1)有期給付の収入要件の廃止、(2)年金額の増額があります。これにより、例えば、受給期間に変更がないものの、年金額が増額されるとなれば、家計にとってはプラスになります。
「5年で打ち切りになる」と聞けば悲観的になるかもしれませんが、ご自身の場合はどのような影響を受けるのか、本記事を読んで一度ご確認されるとよいでしょう。もしものときのために落ち着いて対応できるよう、本記事が参考になれば幸いです。
出典
厚生労働省 遺族厚生年金の見直しについて
厚生労働省 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
執筆者 : 中村将士
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー
