独身の叔母が「年金受給前」の64歳で亡くなりました。これまで払った年金保険料はどうなるのでしょうか?
年金を受け取らずに亡くなってしまった人が支払ってきた、年金保険料がどうなるのか、本記事では解説します。
CFP(日本FP協会認定会員)
1級FP技能士(資産設計提案業務)
住宅ローンアドバイザー、住宅建築コーディネーター
未来が見えるね研究所 代表
座右の銘:虚静恬淡
好きなもの:旅行、建築、カフェ、散歩、今ここ
人生100年時代、これまでの「学校で出て社会人になり家庭や家を持って定年そして老後」という単線的な考え方がなくなっていき、これからは多様な選択肢がある中で自分のやりたい人生を生涯通じてどう実現させていくかがますます大事になってきます。
「未来が見えるね研究所」では、多くの人と多くの未来を一緒に描いていきたいと思います。
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年金保険料は戻ってこない
結論からいえば、老齢基礎年金や老齢厚生年金の受給開始前に亡くなった場合、年金受給前に払ってきた年金保険料が戻ってくることはありません。これは独身の人に限らず、誰にでも共通していえることです。
日本の公的年金制度は「老後の生活を送るときや、事故などによる障害を負ったときや、家族の働き手が亡くなったときなどに、みんなで暮らしを支え合う」という社会保険の考え方で作られた仕組みです。
そしてその仕組みは、自分が支払った保険料を将来受給する「積立方式」ではなく、集めた保険料をそのときの年金支給に充てる「賦課方式」を基本としています。賦課方式では、亡くなった人が支払ってきた年金保険料は他の年金受給者への給付に充てられるため、戻ってくることはないのです。
遺族が受け取ることができる年金
年金受給前に亡くなった場合、年金保険料は戻ってくることはありませんが、その人に受給要件を満たす遺族がいれば、その遺族が受け取ることができる年金があります。
遺族年金
遺族が受け取ることのできる「遺族年金」には、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類があります。
■遺族基礎年金
遺族基礎年金を受け取れる人は、亡くなった人に生計を維持されていた次の遺族です。
・子のある配偶者
・子(18歳になった年度の3月31日までにある人、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある人)
ただし、子については、子のある配偶者が遺族基礎年金を受け取っている間や、子に生計を同じくする父または母がいる間は、遺族年金は支給されません。遺族基礎年金は、以下のいずれかの要件を満たしている人が亡くなった場合に、遺族が受け取ることができます。
・国民年金の被保険者である間に死亡したとき
・国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満の人で、日本国内に住所を有していた人が死亡したとき
・老齢基礎年金の受給権者であった人が死亡したとき
・老齢基礎年金の受給資格を満たした人が死亡したとき
■遺族厚生年金
遺族厚生年金は、亡くなった人に生計を維持されていた図表1にある遺族のうち、最も優先順位の高い人が受け取ることができます。遺族基礎年金を受給できる遺族は、あわせて受給することができます。
なお、子と孫は、18歳になった年度の3月31日までにある、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある人です。
図表1
出典)日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」
遺族厚生年金は、以下のいずれかの要件を満たしている人が亡くなった場合、遺族が受け取ることができます。
・厚生年金保険の被保険者である間に死亡したとき
・厚生年金の被保険者期間に初診日がある病気やけがが原因で初診日から5年以内に死亡したとき
・1級、2級の障害厚生(共済)年金を受け取っている人が死亡したとき
・老齢厚生年金の受給権者であった人が死亡したとき
・老齢厚生年金の受給資格を満たした人が死亡したとき
寡婦年金
寡婦年金は、死亡日の前日において以下の要件を亡くなった夫が満たすときに、その夫と10年以上継続して婚姻関係(事実上の婚姻関係を含む)にあり、死亡当時にその夫に生計を維持されていた妻に対して、その妻が60歳から65歳になるまでの間、支給されます。
国民年金の第1号被保険者として保険料を納めた期間、および国民年金の保険料免除期間(学生納付特例期間、納付猶予期間を含む)が10年以上(平成29年7月31日以前の死亡の場合、25年以上)あること
ただし、以下の場合には支給されません。
・亡くなった夫が、老齢基礎年金、障害基礎年金を受けたことがあるとき(令和3年3月31日以前の死亡の場合、亡くなった夫が障害基礎年金の受給権者であったとき、または老齢基礎年金を受けたことがあるとき)
・妻が繰上げ支給の老齢基礎年金を受けているとき
遺族が受け取ることができる年金以外の給付金
年金以外にも、遺族が受け取ることができる給付金に「死亡一時金」があります。
死亡一時金は、死亡日の前日において以下の要件を満たすときに、亡くなった人によって生計を同じくしていた遺族(1・配偶者、2・子、3・父母、4・孫、5・祖父母、6・兄弟姉妹のなかで優先順位の高い人)に支給されます。
・第1号被保険者として保険料を納めた月数(4分の3納付月数は4分の3ヶ月、半額納付月数は2分の1ヶ月、4分の1納付月数は4分の1ヶ月として計算)が36ヶ月以上ある人
・老齢基礎年金、障害基礎年金を受給しないまま亡くなった人
ただし、遺族が遺族基礎年金の支給を受けるときは支給されません。また、寡婦年金を受け取る場合は、寡婦年金か死亡一時金かのどちらか一方を選択します。
まとめ
独身の人に限らず、払ってきた年金保険料が戻ってくることはありません。ただし、亡くなった人に遺族がいて、要件を満たす場合には、遺族に遺族年金や寡婦年金、死亡一時金といった形で戻ってくることがあります。
亡くなった人が独身の場合でも、生計を維持していた父母や兄弟姉妹がいたり、離婚後に独身となったが仕送りしていた子がいたりした場合などは、遺族年金や死亡一時金の要件を満たす場合もあるので、しっかり確認しましょう。
出典
金融広報中央委員会 知るぽると 国民年金とは
日本年金機構 遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)
日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
日本年金機構 寡婦年金
日本年金機構 死亡一時金
執筆者 : 小山英斗
CFP(日本FP協会認定会員)

