40歳パート勤務で「年収120万円」ほどです。制度変更で今後「厚生年金」に加入したら“払い損”になりますか? 60歳まで「払う保険料・受け取る年金額」はどのくらいでしょうか?

配信日: 2025.07.26 更新日: 2025.10.21
この記事は約 4 分で読めます。
40歳パート勤務で「年収120万円」ほどです。制度変更で今後「厚生年金」に加入したら“払い損”になりますか? 60歳まで「払う保険料・受け取る年金額」はどのくらいでしょうか?
2025年6月、年金制度改正法が成立し、2027年10月からは厚生年金の適用対象がさらに広がることが決まりました。そのため、これまで年金保険料を払っていなかった人も、条件次第で支払いが義務づけられる可能性があります。
 
本記事では、仮に40歳から60歳までパート勤務、年収120万円のケースを想定して、どのくらい保険料を支払い、年金が受け取れるのかを解説します。
FINANCIAL FIELD編集部

ファイナンシャルプランナー

FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。

編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。

FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。

このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。

私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。

制度改正で何が変わる? いつから影響が?

現在、パートで働いている人は以下5つ全ての条件を満たした場合に、自身で年金保険料を支払わなければなりません。


1. 週の所定労働時間が20時間以上
2. 月収が8万8000円(年収約106万円)以上
3. 勤務期間が2ヶ月を超える見込み
4. 学生ではない
5. 従業員数が51人以上の企業で働いている

そして、2027年10月からは段階的に、従業員数の要件が撤廃されます。
 
つまり、現在パートで年収120万円稼いでいても、従業員数が50人以下の企業で働いていれば年金保険料は発生していませんが、制度変更後はほかの条件次第では年金保険料を支払う必要があります。なお、月収の要件も今後3年以内に見直される予定です。(2027年10月よりも見直しが前になる可能性も有)
 

年間120万円稼いだ場合の年金保険料はいくら?

それでは、年収120万円の人が厚生年金に加入した場合、年金保険料はいくらになるのでしょうか。
 
厚生年金の保険料は、報酬月額に応じて決まる「標準報酬月額」に基づいて計算されます。年収120万円の場合、標準報酬月額は9万8000円です。そして、標準報酬月額が9万8000円の場合、年金保険料は月額で約9000円です(2025年度)。
 
なお、この金額には、老齢基礎年金(国民年金)部分の保険料も含まれています。仮に40歳から60歳までの20年間この金額を支払い続けたとすると、年金保険料は年間で約10万8000円(9000円×12ヶ月)、20年間の合計は約216万円(10万8000円×20年)となります。
 

年金は将来いくらもらえる?

厚生年金に加入すると、その分将来の年金額は増加します。老齢厚生年金は報酬比例部分と経過的加算、加給年金額の合計ですが、今回はメインの報酬比例部分について見ていきましょう。
 
65歳以降に報酬比例部分としてもらえる年金額の年額は次の通りです。
 
・平均標準報酬額×5.481÷1000×加入月数
 
20年間、年収120万円稼ぎ、標準報酬月額が9万8000円だとすると、65歳以降に報酬比例部分としてもらえる年間の年金額は次の通りです。
 
・9万8000円×5.481÷1000×20年×12ヶ月=約12万9000円
 
また、国民年金の加入期間に応じて老齢基礎年金も支給されます。20歳以上の人は原則として国民年金の加入義務があり、20~60歳の全期間国民年金に加入した場合、65歳以降には老齢厚生年金を満額の年間83万1700円(2025年度)受給可能です。
 
そのため、パートでの年収120万円を20年間分勤めてもらえる12万9000円と合わせると、年間で約96万円となります。なお、40歳までに会社員などで厚生年金の加入期間がある場合は、さらに年金額は増額されます。
 

結局「払い損」なのか?

40~60歳の間、年間120万円稼ぐことによって発生した年金保険料は合計で約216万円です。
 
この保険料を支払うことによって65歳以降に増える年金額は年間約12万9000円です。つまり、17年間年金を受給すれば、働いたことによって増えた年金額が支払った保険料を上回ることとなります。
 
令和5年簡易生命表によると、65歳の平均余命は男性が約20年、女性が約24年ですので、確率的には「払い損」よりは「払い得」になることのほうが多いでしょう。
 

まとめ

制度変更により年金保険料の支払いが発生する人からすると、手取りが減って嫌だという人も多いでしょう。ただし、支払った分は将来的に取り戻せる可能性も十分あります。
 
特に長寿化が進む中、老後の収入が増えることは大きな安心材料になります。短期的な収支も大事ですが、ときには老後にも目を向けつつ、働き方を考えてみるのも良いでしょう。
 

出典

厚生労働省 社会保険適用拡大対象となる事業所・従業員について
厚生労働省 年金制度改正法が成立しました
日本年金機構 令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和7年度版)
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

  • line
  • hatebu
【PR】 SP_LAND_02
FF_お金にまつわる悩み・疑問