厚生年金と健康保険の「保険料」が高すぎると感じています。負担額はどのように決まっているのですか?
本記事では、厚生年金保険料や健康保険料の計算方法を解説し、負担を軽減するための対策についても紹介します。
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
厚生年金保険料と健康保険料の決まり方
厚生年金保険料・健康保険料は、「標準報酬月額」に基づいて決まります。標準報酬月額とは、給与の金額を一定の範囲で区分し、保険料を算出するための基準となるものです。
標準報酬月額は、毎年4月から6月の給与の平均額を基に決定し、その金額を「等級」に当てはめて算出されます。
例えば、東京都在住40歳未満で全国健康保険協会に加入している場合、毎月24万円の給与を受け取っている方がいれば、その方は健康保険料においては19等級となるため、2万3784円となります。そして、厚生年金保険料においては16等級であるため、4万3920円となります。
なお、厚生年金保険料と健康保険料は労使折半となるため、実際の負担額は上記の額の半分となります。そのため、負担額は健康保険料が1万1892円、厚生年金保険料は2万1960円となります。
交通費と関係性
健康保険と厚生年金保険の保険料を算出するに当たって、忘れてはならないのが、交通費の存在です。交通費は一定額まで非課税であり、所得税と住民税がかかりませんが、社会保険料を算定する際の報酬の対象となります。
そのため、交通費の有無で等級が1つ変わり、同じ収入の人に比べて、健康保険と厚生年金保険の保険料負担が重くなっていることもあります。
例えば、先ほどの月給24万円の方に交通費1万円が別途支給されているとしましょう。すると健康保険料の場合は等級が20になり、2万5766円となります。会社負担分を除いた負担額は1万2883円となります。
社会保険料負担を軽減する方法
前述の通り、標準報酬月額は毎年4月から6月の給与を基準に決まります。そのため、この期間の残業を抑えることで、9月から翌年8月までの社会保険料を低くすることが可能です。
とはいえ、残業時間をコントロールすることは容易ではありません。会社側の指示や自身の業務状況などによって思うようにいかないことの方が多いでしょう。
もうひとつ現実的な方法として「現状の交通費が高額であれば、少なくなるエリアへ引っ越しをする」というものがあります。初期費用はかかりますが、交通費を減らして等級が1つ小さくなるように引っ越しをすることで、厚生年金保険や健康保険の保険料を減らすことができるでしょう。
遠隔地から近場に引っ越すことで、通勤時間も減らすことができるため、多少家賃が増えたとしても、社会保険料の削減を加味して改めて考えてみると、その他の条件次第ではありますが、引っ越しもよい手かもしれません。
なお、社会保険料の負担額は、おおむね将来受け取る給付と比例関係にあります。そのため、具体的な金額はともかくとして、「社会保険料の削減をすると将来の給付額が減る可能性がある」ということは最低限知っておくべきでしょう。
まとめ
厚生年金保険料や健康保険料は「標準報酬月額」に基づいて決まり、給与が高いほど負担額も増えます。残業代も社会保険料の計算に含まれるため、高い残業代も、保険料負担が増える原因になります。
負担を軽減するためにも、4月から6月の残業を抑える、交通費を減らすための引っ越しをするなどの対策を検討してみてください。
健康保険料と厚生年金保険料の額は手取り額に大きな影響を与えるため、仕組みを理解し、少しでも負担を減らせる工夫をしていきましょう。そうすることで、生活をより豊かにすることができるかもしれません。
執筆者 : 柘植輝
行政書士
