72歳で年金が「月7万円」しかなく、家賃や食費も払うのがやっとです。受けられる支援はあるでしょうか? すぐにできることはありますか?

配信日: 2025.07.30 更新日: 2025.10.21
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72歳で年金が「月7万円」しかなく、家賃や食費も払うのがやっとです。受けられる支援はあるでしょうか? すぐにできることはありますか?
厚生労働省の資料(※1)によると、老齢基礎年金受給者の平均年金月額は5万5000円程度です。そこで、公的年金などの収入が基準額以下の年金生活者を支援する制度として、年金生活者支援給付金制度があります。
 
今回は、年金生活者支援給付金制度について詳しく解説します。
辻章嗣

ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士

元航空自衛隊の戦闘機パイロット。在職中にCFP(R)、社会保険労務士の資格を取得。退官後は、保険会社で防衛省向けライフプラン・セミナー、社会保険労務士法人で介護離職防止セミナー等の講師を担当。現在は、独立系FP事務所「ウィングFP相談室」を開業し、「あなたの夢を実現し不安を軽減するための資金計画や家計の見直しをお手伝いする家計のホームドクター(R)」をモットーに個別相談やセミナー講師を務めている。
https://www.wing-fp.com/

年金生活者支援給付金制度とは

「年金生活者支援給付金」は、公的年金などの収入とその他の所得額が所得基準額以下である年金受給者の生活を支援するため、年金に上乗せして給付金が支給される制度です(※2)。
 
年金生活者支援給付金制度には、受給する年金の種類に応じて以下の3種類があります。
 

・老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金
・障害年金生活者支援給付金
・遺族年金生活者支援給付金

 
このうち、今回は最も多くの人が関係すると思われる「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金」について解説します。
 

老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の支給要件

老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金は、以下の要件をすべて満たす方に支給されます(※)。
 

(1)65歳以上で老齢基礎年金を受給している
(2)請求する方の世帯全員の市町村民税が非課税である
(3)前年の年金収入額(注1)とその他の所得の合計が所得基準以下である
注1:障害年金・遺族年金等の非課税収入は含まれません。

 
図表1 《所得基準》

区分 昭和31年4月2日以後生まれの方 昭和31年4月1日以前生まれの方
老齢年金生活者支援給付金 78万9300円以下 78万7700円以下
補足的老齢年金生活者支援給付金 78万9300円を超え
88万9300円以下
78万7700円を超え
88万7700円以下

(※3を基に筆者作成)
 

老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の給付額

給付額は、毎年度、物価の変動による改定(物価スライド改定)がありますが、令和7年度の額は以下の通りです(※2, 3)。
 

1. 老齢年金生活者支援給付金

保険料納付済期間などに応じて以下の式から算出され、(1)と(2)を合計した額が給付されます。
 

(1)保険料納付済期間に基づく額(月額)=5450円×保険料納付済期間÷480月
(2)保険料免除期間に基づく額(月額)=1万1551円×保険料免除期間÷480月

 

2. 補足的老齢年金生活者支援給付金

給付額は、保険料の納付済期間を基に算出し、それに調整支給率を乗じて決まります。
 

5450円×保険料納付済期間÷480月×調整支給率(図表2)

 
図表2 《調整支給率》

区分 昭和31年4月2日以後生まれの方 昭和31年4月1日以前生まれの方
調整支給率 (88万9300円-A)÷10万円 (88万7700円-A)÷10万円
A:前年の年金収入金額とその他の所得の合計額

(※3を基に筆者作成)
 

補足的老齢年金生活者支援給付金の給付額の例

昭和31年4月2日以降生まれの方が満額の老齢基礎年金を受給していて、それ以外に所得がないとすると、毎月6万9308円(令和7年度の満額の老齢基礎年金額:83万1700円)で生活することになります(※4)。
 
この方は、補足的老齢年金生活者支援給付金の対象となりますので、以下の通り月額3139円の給付金が支給されます。
 

支給調整率:(88万9300円-83万1700円)÷10万円=0.576
給付額:5450円×480月÷480月×0.576≒3139円

 

老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の給付手続き

該当者には、年金事務所から「年金生活者支援給付金請求書」が送付されますので、必要事項を記入して年金事務所に提出してください。
 
支給要件に該当することが認められると「支給決定通知書」が送付されます。そして、年金支給月の上旬に「振込通知書」が送付され、年金と同じ口座に年金生活者支援給付金が振り込まれます(※5)。
 

まとめ

自営業者などであった方が、老齢基礎年金のみで生活する場合、たとえ満額の老齢基礎年金を受給したとしても毎月の年金額は7万円を切ることになります。そのような公的年金などの収入が基準額以下の年金生活者を支援する制度として、年金生活者支援給付金制度がありますので、該当される方は忘れずに請求書を提出しましょう。
 

出典

(※1)厚生労働省 令和5年度厚生年金保険・国民年金事業の概況
(※2)日本年金機構 年金生活者支援給付金
(※3)日本年金機構 老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の概要
(※4)日本年金機構 老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額
(※5)日本年金機構 年金生活者支援給付金請求手続きのご案内
 
執筆者 : 辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士

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