高校生と中学生の息子2人を残し、心筋梗塞で50代の夫が突然亡くなりました。死亡保険には加入しておらず、受け取れるお金がありません。私や子どもたちが受け取れる公的サポートはありませんか?

配信日: 2025.07.31 更新日: 2025.10.21
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高校生と中学生の息子2人を残し、心筋梗塞で50代の夫が突然亡くなりました。死亡保険には加入しておらず、受け取れるお金がありません。私や子どもたちが受け取れる公的サポートはありませんか?
死亡した方に生計を維持されていた子のある配偶者には、遺族基礎年金が支給されます。また、死亡された方が会社員などの厚生年金被保険者であった場合は、遺族厚生年金も支給されます。
 
今回は、遺族年金制度について詳しく解説します。
辻章嗣

ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士

元航空自衛隊の戦闘機パイロット。在職中にCFP(R)、社会保険労務士の資格を取得。退官後は、保険会社で防衛省向けライフプラン・セミナー、社会保険労務士法人で介護離職防止セミナー等の講師を担当。現在は、独立系FP事務所「ウィングFP相談室」を開業し、「あなたの夢を実現し不安を軽減するための資金計画や家計の見直しをお手伝いする家計のホームドクター(R)」をモットーに個別相談やセミナー講師を務めている。
https://www.wing-fp.com/

遺族基礎年金の概要と年金額

死亡された方が国民年金の被保険者であった場合、遺族基礎年金が支給されます(※1)。
 

1. 遺族基礎年金の受給要件

遺族基礎年金は、次のいずれかの要件を満たしている方が死亡したとき、遺族に支給されます。
 

(1)国民年金の被保険者が死亡したとき
(2)国民年金の被保険者の資格を60歳で失った後、65歳未満で日本国内に住んでいる人が死亡したとき
(3)老齢基礎年金の受給権者が死亡したとき
(4)老齢基礎年金の受給要件を満たした人が死亡したとき

 
なお、(1)と(2)の要件については保険料納付要件(注1)を満たしている人、(3)と(4)は保険料納付済期間と保険料免除期間(合算対象期間(注2)を含む)を合算した期間が25年以上ある人に限ります。
 
注1:保険料納付要件とは、死亡日の前日において、以下のいずれかの状態をいいます。
(1)保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が国民年金の加入期間の3分の2以上である。
(2)死亡日が令和18年3月末日までのときは、死亡した方が65歳未満であれば、死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がないこと。
 
注2:合算対象期間とは、老齢基礎年金などの受給資格期間に含まれ、年金額の計算には反映されない以下の期間などをいいます(※2)。
1)年金制度の改正に伴い任意加入できる人が任意加入していなかった期間
2)海外に住んでいた期間
 

2. 遺族基礎年金の受給対象者

遺族基礎年金は、死亡した人に生計を維持されていた以下の遺族に支給されます。
 

(1)子(注3)のある配偶者
(2)子(注3)

 
子のある配偶者が遺族基礎年金を受給している間は、子に対する遺族基礎年金は支給停止されます。また、子に生計を同じくする父または母がいるときは、子に対する遺族基礎年金は支給停止されます。
 
注3:18歳到達年度の末日までにあるか20歳未満で1級または2級の障害の状態にある未婚の人
 

3. 遺族基礎年金の額(令和7年度額)

遺族基礎年金の額は、基本となる年金額に子どもの人数に応じた子の加算額が合算されます。
 

(1)子のある配偶者が受け取るときの年金額:83万1700円(注4)+子の加算額
(2)子が受け取るときの年金額:83万1700円+2人目以降の子の加算額

 
《子の加算額》
1人目および2人目の子の加算額:各23万9300円
3人目以降の子の加算額:各7万9800円
 
注4:昭和31年4月1日以前生まれの方は82万9300円

 

4. 遺族基礎年金額の計算例

国民年金の被保険者であった夫が病気により死亡し、夫に生計を維持されていた妻および高校生と中学生の子がある場合に、妻に支給される遺族基礎年金の額は、以下の通り131万300円になります。
 
83万1700円+23万9300円×2人=131万300円
 

遺族厚生年金の概要と年金額

死亡した方が、会社員など厚生年金の被保険者であった場合、遺族基礎年金に加えて遺族厚生年金が支給されます(※3)。
 

1. 遺族厚生年金の受給要件

遺族厚生年金は、次のいずれかの要件を満たしている方が死亡したときに、遺族に支給されます。
 

(1)厚生年金の被保険者が死亡したとき

(2)厚生年金の被保険者期間中に初診日のある傷病で、初診日から5年以内に死亡したとき
(3)1級または2級の障害厚生年金の受給権者が死亡したとき
(4)老齢厚生年金の受給権者または老齢厚生年金の受給期間を満たした人が死亡したとき

 
(1)および(2)の要件については保険料納付要件(注1)を満たしている人、(4)は保険料納付済期間と保険料免除期間(合算対象期間(注2)を含む)を合算した期間が25年以上ある人に限ります。
 

2. 遺族厚生年金の受給対象者

遺族厚生年金は、死亡した人に生計を維持されていた以下の遺族のうち、最も優先順位の高い人が受給します。
 

(1) 子(注3)のある配偶者
(2) 子(注3)
(3) 子のない配偶者(注5)
(4) 父母(注6)
(5) 孫(注3)
(6) 祖父母(注6)

 
注5:子のない30歳未満の妻は5年の有期年金となります。子のない夫は、55歳上である人に限られ、60歳から支給されます。
注6:父母または総父母は、55歳以上である人に限られ、60歳から支給されます。
 

3. 遺族厚生年金の額

遺族厚生年金の額は、死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分(※4)の4分の3の額となります。
 
報酬比例部分は、平均年収と勤務年数から次の通り概算することができます。
 
報酬比例部分=平均年収×5.481/1000×勤務年数
 
したがって、遺族厚生年金の額は、以下の式により計算できます。
 
遺族厚生年金額=平均年収×5.481/1000×勤務年数×3/4
 
なお、受給要件が(1)(2)および(3)の場合、勤務年数が25年(300月)に満たない場合は、勤務年数を25年とみなして以下の通り計算します。
 
遺族厚生年金額=平均年収×5.481/1000×(25年/勤務年数)×3/4
 
さらに、次のいずれかに該当する妻が遺族厚生年金を受給する場合、40歳から65歳になるまでの間は、62万3800円(年額:令和7年度額)が加算されます。
 

(1)夫が亡くなったとき、40歳以上65歳未満で生計を同じくする子(注3)がいない妻
(2)40歳到達当時、遺族基礎年金を受給していた子(注3)のある妻が、遺族基礎年金を受給できなくなったとき

 

4. 遺族厚生年金の計算例

厚生年金の被保険者であった50歳の夫(平均年収500万円、勤務年数27年)が病気により死亡し、夫に生計を維持されていた妻および高校生と中学生の子が遺族にいる場合に、妻に支給される遺族厚生年金の額は以下の通り55万4951円となり、遺族基礎年金に加えて支給されます。
 
500万円×5.481/1000×27年×3/4≒55万4951円
 

まとめ

50歳の夫が病気で死亡したときに、2人の子がいる妻には131万300円の遺族基礎年金が支給されます。さらに、夫が会社員で平均年収500万円、勤務年数が27年であった場合は、遺族基礎年金に加えて55万4951円の遺族厚生年金が支給されますので、お近くの年金事務所または街角の年金相談センターで手続きをしましょう。
 

出典

(※1)日本年金機構 遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)
(※2)日本年金機構 年金用語集 か行 合算対象期間
(※3)日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
(※4)日本年金機構 年金用語集 は行 報酬比例部分
 
執筆者 : 辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士

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