給料は変わらないのに「厚生年金保険料」が去年より高くなるのは「標準報酬月額」の影響? 具体的な内訳はどうなっている?
今回のケースでは、社会保険料のひとつである「厚生年金保険料」が高くなっていることを不思議に思った相談者が登場します。
厚生年金保険料には「標準報酬月額」と呼ばれる基準があり、この基準によって負担が変わってきます。また「標準賞与額」と呼ばれる基準額も意識しなければなりません。
この記事では、厚生年金保険料がどのように決定しているのかを説明します。
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厚生年金保険料は「標準報酬月額」と「標準賞与額」で決まる
厚生年金保険料を決定するのは通常、「標準報酬月額」と「標準賞与額」の2つの項目です。両方の項目に「厚生年金保険料率」をかけて算出します。保険料率は令和7年時点で「18.3%」に固定されています。各項目の概要を見ていきましょう。
「標準報酬月額」の概要
標準報酬月額を求めるには、まず労働者が労働の対価として受け取る「報酬」の額を求めます。日本年金機構によれば、ここでいう「報酬」には、以下のようなものが挙げられます。
・基本給
・各種手当(通勤手当、残業手当、住宅手当、家族手当、勤務地手当など)
・賞与(年4回以上支給されるもの)
・現物支給されるもの(通勤定期券、食券、社宅、寮など)
対象となるのは通常、毎年4月~6月における「報酬」を平均した額です。例えば4月に31万円、5月に34万円、6月に34万円の給与などを受けた場合、その平均は「33万円」です。
この額を、日本年金機構が決める「厚生年金保険料額表(1~32等級に区分された表)」と照らし合わせると、標準報酬月額が決まります。前述の33万円の場合、21等級(報酬月額が33万円以上35万円未満)に該当するため、標準報酬月額は「34万円」です。
あとは標準報酬月額に18.3%を乗じると、毎月の給与などに対する厚生年金保険料が決まります。保険料は、企業と被保険者で折半します。
「標準賞与額」の概要
標準賞与額は、税引き前の賞与額から1000円未満の端数を切り捨てた額です(支給1回につき上限150万円)。ただし年3回以下で支給される賞与が対象です。また自社製品など現物支給されたものも含みます。
計算した額に18.3%を乗じた額が、賞与に対する厚生年金保険料です。保険料は、企業と被保険者で折半します。
給料は同じなのに厚生年金保険料が去年より高いのはなぜ?
今回のケースの場合、給料が変わらないのに保険料が高くなっていることに違和感を覚えています。考えられる可能性のひとつは、4月~6月に残業手当などが多くついたことです。
標準報酬月額を出すには「報酬月額」を計算しますが、前述の通り、ここには各種手当なども含まれます。そのため基本給が変わらないとしても、標準報酬月額の等級は高くなってしまうかもしれません。等級が高くなれば18.3%を乗じた保険料額も高くなるため、結果として負担は増えます。
厚生年金保険料は標準報酬月額などによって変動する
厚生年金保険料を決めるのは、標準報酬月額や標準賞与額です。どちらの額にも「18.3%」の厚生年金保険料率がかけられます。
標準報酬月額はその年の4月~6月の報酬額によって、標準賞与額は賞与などの額によって決まります。各種手当や現物支給されたものなどもカウントされるため、基本給が変わらなくても保険料が高くなることもあるでしょう。
出典
日本年金機構 厚生年金保険の保険料
日本年金機構 令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和7年度版)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
