知人が「障害年金を受け取っている」と話していました。どんな条件で支給されるものなのでしょうか?
障害年金には、「障害基礎年金」と「障害厚生年金」があり、障害の原因となった病気やけがで初めて医師や歯科医師の診断を受けたときに加入していた年金制度により、それぞれの年金を請求することができます。
今回は、障害年金の種類と受給要件について詳しく解説していきます。
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士
元航空自衛隊の戦闘機パイロット。在職中にCFP(R)、社会保険労務士の資格を取得。退官後は、保険会社で防衛省向けライフプラン・セミナー、社会保険労務士法人で介護離職防止セミナー等の講師を担当。現在は、独立系FP事務所「ウィングFP相談室」を開業し、「あなたの夢を実現し不安を軽減するための資金計画や家計の見直しをお手伝いする家計のホームドクター(R)」をモットーに個別相談やセミナー講師を務めている。
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障害基礎年金
障害基礎年金は、以下の受給要件を満たすときに請求できます(※)。
1. 障害基礎年金の受給要件
次の全ての要件を満たすときは、障害基礎年金が支給されます。
(1)障害の原因となった病気やけがの初診日(注1)が以下のいずれかの間にある
・国民年金に加入している間
・20歳到達日以前(年金加入前の期間)
・日本国内に居住している60歳以上65歳未満の方で、年金制度に加入していない期間
(注1)初診日とは、障害の原因となった病気やけがで初めて医師などの診断を受けた日を指します。
(2)障害の状態が、障害認定日(注2)(認定日以降に20歳に達した場合は、20歳に達した日)に、障害等級表で定められた1級もしくは2級に該当している。
ただし、認定日に障害の状態が軽かったとしても、後に重くなった場合は、障害基礎年金が支給される可能性があります。
(注2)障害認定日とは、障害の程度を認定する日のことをいい、その障害の原因となった病気やけがについて初診日から1年6ヶ月を過ぎた日、または1年6ヶ月以内にその病気やけがが治ったとき(症状が固定したケースを含む)はその日をいいます。
(3)初診日の前日において、以下のいずれかの保険料納付要件を満たしている
・初診日がある月の2ヶ月前までの国民年金加入期間において、3分の2以上の期間で保険料が納付もしくは免除されている
・初診日に65歳未満であり、初診日がある月の2ヶ月前までの1年間で保険料の未納がない
なお、初診日が20歳前の年金未加入の期間に初診日がある場合は、上記の要件は不要です。
2. 障害基礎年金の請求時期
障害認定日に障害等級1級または2級に該当する場合は、障害認定日(認定日以降に20歳に達した場合は、20歳に達した日)の翌月分から障害基礎年金を受給できます。
また、認定日に障害の状態に該当しなかった場合でも、後に症状が悪化し、障害等級1級または2級に該当したときは、請求日の翌月分から障害基礎年金を受給できます。ただし、障害基礎年金は、65歳の誕生日の前々日を過ぎると請求できません。
3. 障害基礎年金の年金額(令和7年度額)
障害等級1級の方には障害基礎年金1級が、障害等級2級の方には障害基礎年金2級が支給されます。また、その方に生計を維持されている子(18歳になった後の最初の3月31日までの子、または20歳未満で障害等級1級または2級である子)には、子の加算額が支給されます。
障害基礎年金1級:103万9625円(注3)+子の加算額
障害基礎年金2級:83万1700円(注3) +子の加算額
(注3)昭和31年4月1日以前生まれの方の額は異なります。
※子の加算額
2人まで:1人につき23万9300円
3人目以降:1人につき7万9800円
障害厚生年金・障害手当金
厚生年金に加入している間に初診日のある病気やけがが原因で、障害等級1級または2級に該当する場合は、障害基礎年金に加えて障害厚生年金が支給されます。
また、2級に該当しない軽い程度の障害には、3級の障害厚生年金が支給されます。
なお、初診日から5年以内に病気やけがが治り、3級よりも軽い障害が残ったときは、一時金の障害手当金が支給されます(※)。
1. 障害厚生年金の受給要件
次の全ての要件を満たすときは、障害厚生年金が支給されます。
(1)厚生年金保険の被保険者である間に、障害の原因となった病気やけがの初診日がある
(2)障害の状態が、障害認定日に、障害等級表で定められた1級から3級のいずれかに該当している。ただし、認定日に障害の状態が軽かったとしても、後に重くなった場合は、障害厚生年金が支給される可能性があります。
(3)保険料納付要件を満たしている
2. 障害厚生年金の請求時期
障害認定日に障害等級1級から3級のいずれかに該当する場合は、障害認定日の翌月分から障害厚生年金を受給できます。
また、認定日に障害の状態に該当しなかった場合でも、後に症状が悪化し、障害等級1~3級のいずれかに該当したときは、請求日の翌月分から障害厚生年金を受給できます。ただし、障害厚生年金は、65歳の誕生日の前々日を過ぎると請求できません。
3. 障害厚生年金の年金額(令和7年度額)
障害等級に応じて、1~3級の障害厚生年金が支給されます。また、その方に生計を維持されている配偶者(65歳未満)がいるときは、配偶者の加給年金額が支給されます。
障害厚生年金1級:報酬比例の年金額×1.25+配偶者の加給年金額
障害厚生年金2級:報酬比例の年金額+配偶者の加給年金額
障害厚生年金3級:報酬比例の年金額
障害手当金:報酬比例の年金額×2(一時金)
報酬比例の年金額は、平均標準報酬額(標準報酬月額と標準賞与額の合計額を加入月数で割ったもの)に、乗数と加入期間の月数を掛け、下式により求められます(※)。
報酬比例の年金額=平均標準報酬額×5.481/1000×加入期間の月数
加入期間が300月(25年)に満たない場合は、300月と見なして計算します。
配偶者の加給年金額:23万9300円
なお、配偶者が老齢厚生年金を受給できる場合などは、配偶者の加給年金額は支給停止となります。
障害等級
障害年金が支給される障害の状態に応じて、法令により、障害の程度(1~3級)が障害等級表に定められています(※)。なお、この等級は身体障害者手帳の等級とは異なりますので注意しましょう。
1. 障害等級1級
身の回りのことは自分でどうにかできるが、それ以外の活動は困難な方で、以下のような状態をいいます。
・両上肢の機能に著しい障害を有する
・両下肢の機能に著しい障害を有する
・両眼の視力がそれぞれ0.03以下(原則として矯正視力)
・両耳の聴力レベルが100デシベル以上
・その他
2. 障害等級2級
日常生活が極めて困難であり、労働により収入を得ることができない方で、以下のような状態をいいます。
・1上肢の機能に著しい障害を有する
・1下肢の機能に著しい障害を有する
・両眼の視力がそれぞれ0.07以下(原則として矯正視力)
・両耳の聴力レベルが90デシベル以上
・その他
3. 障害等級3級
労働に著しい制限を受ける方で、以下のような状態をいいます。
・両眼の視力が0.1以下(原則として矯正視力)
・両耳の聴力が、40センチメートル以上で通常の話し声を解することができない程度
・その他
まとめ
障害年金は、病気やけがにより一定の障害が残った場合に、障害の程度により支給される年金です。
障害年金には「障害基礎年金」と「障害厚生年金」があり、初診日に加入していた年金に応じて、一方もしくは両方の年金を受給することができます。年金額は障害の程度により異なり、一定の要件を満たす子や配偶者がいる場合は、加算額が加算されます。
出典
(※)日本年金機構 障害年金ガイド 令和7年度版
執筆者 : 辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士
