大卒で定年まで払う“厚生年金保険料”は、総額「1000万円」以上! 年収460万円の“普通の会社員”は、何歳まで生きれば元を取れますか? 受給額をシミュレーション
そこで、生涯で支払う厚生年金保険料の総額と、65歳から受け取れる年金額を計算してみると、何歳まで生きれば元が取れるのかという具体的な目安が見えてきます。
本記事では大学卒業後から定年まで働いた平均的な収入の会社員をモデルに、「何歳まで生きれば払った厚生年金保険料の元が取れるのか」という損益分岐点をシミュレーションしました。総額1000万円以上支払うと言われる厚生年金保険料と、それを上回るリターンを年金で得られるのかを分かりやすく解説します。
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平均的な会社員の場合、年金の元が取れる年齢は74歳
日本の平均的な会社員をモデルとしたときに、年金の元が取れる年齢は74歳です。これは38年間で支払う厚生年金保険料の総額が約1600万円になるのに対し、65歳から受け取れる年金が年間約178万円になるという計算に基づいています。
74歳と聞くと少し長く感じるかもしれません。しかし、日本の平均寿命は男性が81歳で女性が87歳です。この計算結果に基づくと、多くの人が厚生年金保険料の「払い損」にはならないことが分かります。むしろ、厚生年金保険料で支払った金額以上の年金を受け取れる可能性が高いといえます。
では、年金の元が取れる年齢の「74歳」という数字は、どのような計算から算出されたのでしょうか。その計算の過程を1つずつ見ていきましょう。
年金の元が取れるまでの計算シミュレーション
年金の元が取れるまでの年齢をシミュレーションするため、「平均的な会社員」のプロフィールを紹介します。
図表1
| 就業期間 | 22歳~60歳(38年間) |
| 平均年収 | 約460万円 |
| 支払った厚生年金保険料(本人負担分) | 約1600万円 |
| 年金受給開始年齢 | 65歳 |
| 年間受給額(年金) | 約178万円 |
| 元が取れる年齢 | 74歳(65歳+9年) |
国税庁 令和5年分 民間給与実態統計調査、日本年金機構 令和7年4月分からの年金額等について より筆者作成
大学を卒業した22歳から60歳の定年まで38年間働き、その間の平均年収は460万円、年金は65歳から受け取り始めるとします。この人が生涯で払う厚生年金保険料の総額は、合計で約1600万円です。これは、厚生年金保険料の自己負担分を、年収460万円で38年間払い続けた場合の金額です。
次に、65歳から「受け取れる」年金の年額です。年金は1階部分の国民年金と、2階部分の厚生年金の合計で決まります。今回のモデルでは年間約178万円を受け取れます。
そして、最後に損益分岐点の計算をします。支払った厚生年金保険料の約1600万円を、受け取れる年金額の年178万円で割ると約9年という結果になります。つまり、65歳から9年後の74歳が元を取れる年齢というわけです。
今回のシミュレーションでは、計算を分かりやすくするため、会社員として支払う厚生年金保険料に焦点を当てています。そのため、20歳から22歳までの大学在学中の国民年金保険料は計算に含めていません。
大学在学中の国民年金保険料は、以下のように人によって支払い状況はさまざまです。
●アルバイトの収入などから、自身で国民年金保険料を納める
●国民年金保険料の支払いを待ってもらえる「学生納付特例制度」を利用する
●家族が代わりに国民年金保険料を支払う
このように複数のケースがあるため、今回は会社員になってからの給与天引きで支払う厚生年金保険料のみに焦点を当てて計算しています。
自分がもらえる年金額を知る方法
自分がもらえる年金額は、以下の2つの方法で確認できます。
●年1回届く「ねんきん定期便」を確認する
●「ねんきんネット」でいつでも確認できる
それぞれを表で比較しました。
図表2
| 確認方法 | 確認タイミング | 特徴 |
|---|---|---|
| ねんきん定期便 | 年に1回、郵送で送られてくる | 加入実績や将来の年金見込額が分かる |
| ねんきんネット | いつでもオンラインで確認できる | 納付履歴や、将来の受取額をいつでも確認できる |
年に1回届く「ねんきん定期便」を確認する
毎年の誕生月に届く「ねんきん定期便」には、これまで支払った厚生年金保険料の納付状況や、加入実績に応じた年金額が記載されています。50歳以上の人の「ねんきん定期便」には、正確な年金見込額が書かれているため、じっくりと中身を確認してみてください。
「ねんきんネット」でいつでも確認できる
「ねんきんネット」では、いつでも自分の年金情報を確認できます。「ねんきん定期便」に記載されているアクセスキーを使えば、簡単に登録可能です。受け取れる年金の見込額をシミュレーションすることもできるので、将来設計を考える上で役立ちます。
平均的な収入の会社員なら、年金は74歳で元が取れる
大学卒業から定年まで働いたときに支払った厚生年金保険料を、年金でもらったときの損益分岐点は74歳という結果になりました。日本の平均寿命を考えると、厚生年金保険料の「払い損」を心配する必要はそれほどありません。
年金制度は複雑で、将来への不安を感じやすいテーマです。しかし、基本的な仕組みを知り「ねんきん定期便」などで自身の状況を確認すると、漠然とした不安は解消されるでしょう。
ぜひ、本記事で紹介した方法で年金状況を確認してみてください。
出典
国税庁 令和5年分 民間給与実態統計調査
日本年金機構 令和7年4月分からの年金額等について
厚生労働省 令和5年簡易生命表の概況
執筆者 : 大垣はち
FP2級
