【改正】月収65万円以上の「厚生年金上限額」が引き上げへ…「月収75万円」の会社員を例に、負担額と“増える年金額”を試算する

配信日: 2025.08.07 更新日: 2025.10.21
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【改正】月収65万円以上の「厚生年金上限額」が引き上げへ…「月収75万円」の会社員を例に、負担額と“増える年金額”を試算する
厚生年金については「年収106万円の壁」など、加入に必要な最低限の要件があることは一般的に知られていますが、厚生年金保険料に上限があることは知っているでしょうか。そして、その上限が2027年から引き上げられることになりました。
 
本記事では、厚生年金保険料の上限金額引き上げの説明と、上限引き上げで将来の年金受給額がどのくらい増える見込みなのかをシミュレーションします。
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厚生年金の制度が変わる?

令和7年6月、年金制度改正法が成立し、厚生年金などの標準報酬月額の上限が段階的に引き上げられることになりました。標準報酬月額とは、給与を一定の範囲で区切った全国統一の等級に当てはめて決定されるもので、社会保険料や厚生年金保険料を計算する際に用いられる金額です。
 
標準報酬月額によって決まる保険料は都道府県ごとに毎年改訂されますので、地域によって社会保険料・厚生年金保険料の金額に違いがあることが特徴です。
 
今まで、標準報酬月額の上限以上の収入を得ても、現在の上限である65万円を超えると厚生年金保険料が頭打ちになるため年金受給額も抑えられるという側面がありましたが、標準報酬月額の上限の引き上げにより将来の年金額も増える見込みになりました(国民年金に変更はありません)。
 

厚生年金保険料の上限は、いくらに引き上げられるの?

厚生年金保険料の標準報酬月額の上限はすぐに引き上げられる訳ではなく、以下のように1年ごとに段階的に引き上げられます。

(現行:65万円)
2027年9月:68万円
2028年9月:71万円
2029年9月:75万円

上限額を超える月収をもらっている場合は、引き上げ時期には保険料が変更となることが考えられるため、給与明細をチェックしておくと良いでしょう。
 

月収が上限額以上なら、保険料負担はいくら増える?

それでは、具体的にどのぐらい年金保険料の負担が増えるのか試算してみましょう。
 

(1)現在の状況

たとえ月収が75万円でも、標準報酬月額は上限の65万円として計算されます。月々の厚生年金保険料は65万円×年金保険料率9.15%=5万9475円(企業も同額を国に支払います)です。
 

(2)2029年9月以降の標準報酬月額75万円以上の場合

標準報酬月額の上限が75万円として計算されるようになると、月々の厚生年金保険料は75万円×年金保険料率9.15%=6万8625円となります。
 
月々の厚生年金保険料負担を比較すると、9150円(年10万9800円)増加します。
 

将来受け取れる年金額はいくら増える?

老後に受け取る年金額は、土台となる基礎年金(国民年金)と、働いていたときの収入に比例する厚生年金(厚生年金の報酬比例分)の合計です。
 
厚生年金の標準報酬月額の上限金額が65万円から75万円へ10万円引き上げられた場合、将来受け取れる年金額(報酬比例分)はいくら増えるのか試算してみましょう。

<試算>

●2029年9月以降、月収75万円で5年間厚生年金に加入し続けた場合での年金(報酬比例分)増加見込み額
 
上限引き上げで増加した標準報酬月額10万円×5.481/1000(給付乗率)×加入期間60ヶ月=年額約3万2886円(月額約2740円)

 
老後の生活の収入の柱となる年金が、年間で約3万円程度増加する試算結果になりました。年間3万円の増加分で、医療費・介護費用への備えや旅行など生活の楽しみ資金にするなど選択肢が広がりそうです。
 

まとめ

今回の年金制度改正は、月収65万円を超える人にとって将来受け取れる年金額を増やせるチャンスです。月々の保険料負担は増えますが、老後生活を支える年金も増加します。
 
年金制度は、社会情勢と賃金の上昇にともなって調整されます。年金制度の変化に注意しながら、自身の老後生活プランにどう生かすかを考えることが重要と言えるでしょう。
 

出典

厚生労働省 厚生年金等の標準報酬月額の上限の段階的引上げについて
全国健康保険協会 令和7年3月(4月納付分)からの健康保険・厚生年金の保険料額表(東京都)
 
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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