「年金制度改革法案」が可決。来年から年金を受け取る予定ですが、今回の年金制度改革は私の受給額にどう影響しますか?

配信日: 2025.08.07 更新日: 2025.10.21
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「年金制度改革法案」が可決。来年から年金を受け取る予定ですが、今回の年金制度改革は私の受給額にどう影響しますか?
令和7年6月13日、「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案」が成立しました。
 
この法律は、「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化を図る観点から、働き方や男女の差等に中立的で、ライフスタイルや家族構成の多様化を踏まえた年金制度を構築するとともに、所得再配分の強化や私的年金制度の拡充等により、高齢期における生活の安定を図るもの」とされています。
 
本記事では、来年から年金を受け取る予定の方(仮に現在64歳)の受給額について、年金制度改革の影響などを確認していきます。
高橋庸夫

ファイナンシャル・プランナー

住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。

年金制度改正の主な内容

今回の年金制度改革における、主な公的年金に関する改正内容は以下の通りです。なお、それぞれの施行日は別途定められています。
 

(1)社会保険の加入対象の拡大

・社会保険の加入対象に関する賃金要件(いわゆる106万円の壁)の撤廃
・企業規模要件の撤廃(現在の51人以上)を10年かけて段階的に拡大
・個人事業所の対象の拡大
・対象拡大による短時間労働者の負担軽減のための特例措置(3年間) など
 

(2)在職老齢年金の見直し(2026年4月から)

年金を受給しながら働く高齢者の賃金と老齢厚生年金の合計が基準を超えた場合に、老齢厚生年金が減額される「在職老齢年金」について、その基準を現行の月50万円から月62万円に引き上げ。
 

(3)遺族年金の見直し(2028年4月から)

1)遺族厚生年金の男女差の解消(女性の就業率の向上を背景として)
男女共通(子どもがいない)で、60歳未満の死別の場合、原則5年間の有期給付(所得や障害等の状態により配慮が必要な場合、最長65歳まで給付を継続)、60歳以上の死別の場合、無期給付(現行どおり)
 
2)子どもに対する遺族基礎年金の支給要件を改正
被保険者死亡以降の子ども自らが選択できない事情による支給停止をなくし、引き続き子どもが遺族基礎年金を受け取れるようにする。例えば、夫の死亡後に妻が再婚したため、妻が遺族基礎年金を受け取れなくなっても、子どもは受け取れるようにする。
 

(4)厚生年金額などの計算に使う賃金の上限額の段階的な引き上げ(2027年9月から)

厚生年金額や保険料の計算に使う賃金(標準報酬月額)の上限を、現行の月65万円から段階的に75万円に引き上げる。これまでは、月65万円を超える方も65万円で頭打ちとなっていた年金額の計算が引き上げにより、給付水準の上昇につながる。
 

(5)子どもの加算の見直し(2028年4月から)

子どもの加算について、加算額の増額と対象範囲の拡充が図られる(図表1)。
 
図表1

図表1

※基礎年金と厚生年金を両方受給している場合は厚生年金のみ加算
厚生労働省「年金制度改正法年金制度改正法に関する広報について」より筆者作成
 

(6)配偶者加算の見直し

老齢厚生年金の配偶者の加算を、現行40万8000円から見直し後36万7200円に見直し。ただし、既受給者は現行の額のままとなる。
 

現在64歳の方の年金受給額への影響

来年から年金受給予定の方(64歳)の年金額に影響が出る改正は、主に上記(2)在職老齢年金の見直しということになると思われます。もちろん、それぞれの状況(遺族給付や配偶者、子どもの有無など)に応じて、その他の改正内容も影響が出る可能性はあります。
 
在職老齢年金については、働き過ぎてしまうと老齢厚生年金が減額されてしまうとの声が聞かれ、就業調整を図る動きも見られました。昨今の少子化の影響により、高齢者は一部業界での人手不足を解消する重要な働き手として注目されています。
 
厚生労働省の資料「年金制度改正法に関する広報について」によると、2022年度末に65歳以上で働く年金受給権者(308万人)のうち、支給停止者が50万人おり、見直しにより20万人が老齢厚生年金の全額受給が可能になると試算されています。
 

まとめ

これらの公的年金制度の改正に加えて、iDeCoの加入年齢が70歳までに引き上げられるなどの私的年金の見直しも予定されています。
 
いずれにしろ、物価上昇や賃金上昇の動向が変化しているなかで、年金制度改革自体もさらに変化していくことが想定されます。今後はより一層、常に正しい情報を収集し、理解していくことがより重要となるものと思われます。
 

出典

厚生労働省 年金制度改正法が成立しました
厚生労働省 第25回社会保障審議会年金部会 資料3 年金制度改正法年金制度改正法に関する広報について
 
執筆者 : 高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー

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