「年収600万円」の会社員。給与明細で“会社と自分”が「厚生年金に9万円」払っていることに衝撃!「本当は自分の給料だったのでは?」と思ってしまうけど、将来元は取れるのでしょうか?

配信日: 2025.08.10 更新日: 2025.10.21
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「年収600万円」の会社員。給与明細で“会社と自分”が「厚生年金に9万円」払っていることに衝撃!「本当は自分の給料だったのでは?」と思ってしまうけど、将来元は取れるのでしょうか?
会社員の場合、給与明細に天引きされた社会保険料が記載されていると思いますが、その保険料は「本人負担分」のみで「会社負担分」は記載されていないことが多いです。
 
しかし最近では、給与明細に「会社が負担している社会保険料」を記載する企業やそれに賛同する声が上がっているようです。実際に会社が支払っている社会保険料の金額を見てみると、「こんなに支払っているのか。
 
そもそも自分の給料だったのでは?」などと感じる人もいるかもしれません。本記事では、会社負担分の社会保険料がどれくらいの負担なのか、社会保険料は払い損にならないのかについて解説します。
浜崎遥翔

2級ファイナンシャル・プランニング技能士

会社が負担している社会保険料、という「見えない給料」はいくら?

社会保険に加入している会社員の毎月の給与からは、健康保険料や厚生年金保険料が引かれます。例えば、東京都協会けんぽに所属している40歳以上の人(介護保険料負担あり)の保険料率は健康保険料が11.5%、厚生年金保険料が18.3%の合計29.8%です。
 
これを会社と本人が折半して支払います。年収600万円(月収換算で50万円)の会社員の場合は、会社と本人それぞれが健康保険料2万8750円ずつと厚生年金保険料4万5750円ずつを支払っているのです。会社員本人は7万4500円を支払うので、50万円のうち14.9%が社会保険料として引かれていることになります。
 
一方、会社も同額の7万4500円を支払っています。これを本来もらえるはずだった「見えない給料」と考えると、実質的な報酬は57万4500円であったとも言えます。
 
社会保険料として本人と会社で合計14万9000円支払っており、これは57万4500円のうちの約25.9%にあたります。先述した「見えない給料」を合わせて考えると、社会保険料の負担は給料の4分の1以上を占めているのです。
 

社会保険料は元を取れる?

実質的な報酬の4分の1以上を占める社会保険料ですが、実際に払い損になっていないか気になるところです。
 
なお、健康保険料については、病気やけがでどれだけ保険を使うかにより個人差が大きいので、今回は厚生年金について考えていきます。
 
平均報酬が600万円で、月に自己負担分として平均4万5750円の厚生年金保険料を22~60歳まで38年間支払ったとしましょう。38年間で、本人自身は約2086万円、会社負担分を合わせると約4172万円の保険料を支払うことになります。
 
一方で、将来受け取る老齢厚生年金の「報酬比例部分」の試算額は、年額約125万円です。つまり、自分が支払った2086万円を回収するには約16.7年、会社負担分も含めた全額を取り戻すには約33.4年かかる計算になります。
 
65歳から受給を開始する場合、会社負担分を含めた全額を取り戻すためには、約99歳まで受給することが必要です。一方で、あくまでも自分が負担する分だけを考えると約82歳まで生きれば取り戻せることになります。
 

年金は「長生き保険」。遺族や障害への備えも含まれている

先述した期間を長いと感じるかもしれませんが、厚生年金のメリットは「長生きすればするほど得をする」という点だけではありません。老後だけでなく、在職中に障害を負ったときの「障害年金」や、万一の際の「遺族年金」があり、困ったときに自分や家族を救ってくれるものでもあります。
 
なお、遺族年金については、子のいない配偶者にも支給されていた遺族厚生年金が、2028年4月からは原則5年間の有期給付へと変わるなどの改正はあるものの、一概に「長生きしないと元が取れない」と言えるものではないでしょう。
 

思っているよりも社会保険料の負担は大きい

会社負担の社会保険料は、普段は目に見えにくいものですが、実質的には「見えない給料」として確かに存在しています。本人と会社で支払っている分を合わせると、実質的な報酬の4分の1以上が社会保険料として差し引かれているとも考えられ、負担は決して小さくありません。
 
だからこそ、自分が実際にはどれだけ負担しているかを知り、払った分を取り戻せるのかという観点だけではなく、その負担によってどのようなメリットがあるのか、どのような形で自分や家族を守ってくれているのか、制度の仕組みを正しく理解しておくことが大切です。
 

出典

全国健康保険協会 令和7年度保険料額表(令和7年3月分から)(東京支部)
日本年金機構 は行 報酬比例部分
 
執筆者 : 浜崎遥翔
2級ファイナンシャル・プランニング技能士

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