「子どもの国民年金を親が払うと、親の節税になる」という仕組みがよく分かりません。仮に1年分納付したらどのくらい「得」するのでしょうか?

配信日: 2025.08.09 更新日: 2025.10.21
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「子どもの国民年金を親が払うと、親の節税になる」という仕組みがよく分かりません。仮に1年分納付したらどのくらい「得」するのでしょうか?
現在、国民年金保険料を納付する必要があるのは、20歳から60歳までの40年間です。20歳となるとすでに働いている人もいるでしょうが、中には学生で収入がないケースや、アルバイトはしているものの収入が少なく、親と生計をともにしているケースもあるかもしれません。
 
今回は、親が子どもの保険料を払ったときの節税方法について見ていきます。
吉野裕一

夢実現プランナー

2級ファイナンシャルプランニング技能士/2級DCプランナー/住宅ローンアドバイザーなどの資格を保有し、相談される方が安心して過ごせるプランニングを行うための総括的な提案を行う
各種セミナーやコラムなど多数の実績があり、定評を受けている

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20歳以上は学生でも国民年金保険料納付が必要

基礎年金に当たる「国民年金」には、日本国内に住んでいる20歳から60歳未満の人全てが加入することになっています。現在は会社員で厚生年金に加入している人も、厚生年金保険料に国民年金保険料が含まれています。20歳以上であれば、大学生など収入がない学生でも、国民年金保険料の納付は義務付けられています。
 
ただし学生の場合は、在学中の保険料が猶予される「学生納付特例制度」という制度があります。
 
国民年金は、「老齢基礎年金」を65歳以降に受け取るための条件として、10年以上の納付が必要となっています。
 
この特例を利用することで、老齢基礎年金の受け取り要件の加入期間に猶予期間を加算することができます。ただし、実際には保険料を納付していないので、老齢基礎年金額は増えません。増やすためには追納などの方法で、保険料を納付する必要があります。
 

親が子どもの年金保険料を負担した場合は?

子どもの将来を考えて、学生の間は親が国民年金保険料を納付することもあります。このとき、子どもと親の関係によって税務の考え方が変わってきます。
 
親と生計を一にしている状態であれば、「親が子どもを扶養している状態」と捉えられ、親が負担した子どもの年金保険料は、親の所得から控除することができます。
 
また、まれなケースかもしれませんが、就労し独立している子どもの場合には「親が子どもに対して国民年金保険料を贈与している」と捉えられることがあります。年間110万円までは親が子どもに非課税で贈与することができますが、定期的な贈与の場合は「計画贈与」として捉えられる可能性もあるので注意が必要です。
 
国税庁のホームページでは、「生計を一にする」ことの意義が示されています。
 
子どもの年齢は問われませんが、学生として独り暮らしをしている場合でも、生活費や学資金の送金がある場合には「生計を一にする」とみなされますが、子どもへの送金がない場合などは「生計を一にする」とみなされないケースも考えられますので、注意が必要です。
 

「生計を一にする」とは、必ずしも同居を要件とするものではありません。例えば、勤務、修学、療養等の都合上別居している場合であっても、余暇には起居を共にすることを常例としている場合や、常に生活費、学資金、療養費等の送金が行われている場合には、「生計を一にする」ものとして取り扱われます。
 
なお、親族が同一の家屋に起居している場合には、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合を除き、「生計を一にする」ものとして取り扱われます。

※国税庁 No.1180 扶養控除『「生計を一にする」の意義』より抜粋

 

親が子どもの年金保険料を払うと節税になる?

前項でも少し触れましたが、「生計を一にする」親族の国民年金保険料を支払った場合、保険料全額を親の収入から社会保険料控除として差し引くことができます。
 
例えば、令和7年度の国民年金保険料は月額1万7510円、年間では21万120円となります。親の所得税率が10%であれば、所得税で年間2万1012円の節税、住民税も10%なのでこれと同額となり、合わせて4万2024円の節税となります。
 
なお、国民年金保険料には前納制度があります。1年分の前納であれば、納付書払いやクレジットカード払いの場合は20万6390円、口座振替の場合は20万5720円と、前納を行うことによって割引されます。
 
また、保険料は最長2年分の前納ができ、納付書払いやクレジットカード払いでは2年分で40万9490円、口座振替の場合は40万8150円となります。2年分を口座振替で前納した場合、所得控除4万815円に、口座振替および前納の割引分に当たる1万2090円を合わせた、5万2905円の節約につながります。
 

まとめ

20歳を過ぎた子どもの国民年金保険料を親が納付した場合、「生計を一にする」と認められると、親が扶養しているとされ、親の所得控除の対象になります。親が代わりに保険料を納付すると、親の所得税や住民税の節税につながり、前納を行うことによってさらに節約することも可能です。
 
大学進学時にお金を多く使うことを考えると、早いうちから教育費の準備を行うことも大切です。
 

出典

国税庁 No.1180 扶養控除
日本年金機構 国民年金保険料の前納
 
執筆者 : 吉野裕一
夢実現プランナー

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