「年金制度」は今後どう変わっていくことが予想される? 「受給開始年齢」が「70歳」に引き上げられる可能性はある?

配信日: 2025.08.10 更新日: 2025.10.21
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「年金制度」は今後どう変わっていくことが予想される? 「受給開始年齢」が「70歳」に引き上げられる可能性はある?
少子高齢化が進むなか、日本の年金制度の将来に不安を感じる人もいるでしょう。
 
令和6年6月に開かれた経済財政諮問会議では、「高齢者」の定義を5歳引きのばすべきとの案が提案されました。現時点で年金の受給開始年齢を70歳にする法改正や閣議決定は行われていませんが、今後もし高齢者の定義が5歳引き上げられれば、将来的に年金受給開始年齢も70歳へと見直される可能性があるのか、今後の動向が注目されます。
 
本記事では令和6年6月に開催された経済財政諮問会議の内容を基に、令和6年の財政検証の概要、現在検討されている年金制度改革の動きについて解説します。
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年金受給開始年齢が「70歳」に? 経済財政諮問会議で示された提案とは

経済財政諮問会議とは、国の財政や経済についての方針を決める重要な会議です。議長を内閣総理大臣として、経済財政担当大臣や民間の有識者など11名以内で構成されていて、会議は原則毎月開催されています。
 
令和6年6月に開催された諮問会議では、誰もが自分らしく心身ともに健やかに社会とつながって生きられる状態である「ウェルビーイングの高い社会の実現」が議題の1つとして話し合われました。
 
そのなかの一環として、年齢にかかわらずいつでも新たな知識やスキルを身につけることを推進しています。現在では元気に暮らせる期間である健康寿命が延びているため、高齢者の定義を5歳引き上げることを検討すべきと明示されました。
 
高齢者の定義は時代や地域により異なりますが、世界保健機関(WHO)では高齢者の定義は65歳以上としています。
 
今回の会議では、年金の受給開始年齢そのものを70歳に引き上げることが明示されたわけではありません。しかし、高齢者の定義が65歳から70歳に変更になった場合、65歳=高齢者の前提で成り立っていた現行制度が見直しされる可能性はあるでしょう。
 

財政検証における2つのポイント

一方で財政検証とは、厚生労働省が5年に一度行っている公的年金制度の健康診断のようなものです。この制度は、現状の把握と年金制度が将来にわたって安定して運営できるかを確認するために行われています。
 
財政検証では、実際に個人の年金受給額が分かるわけではありません。そのときの物価に応じた「年金の実質価値」と「所得代替率」を基に将来の年金の水準をチェックしています。
 
所得代替率とは、年金の給付水準を示す指標のことで、現役男子の手取り収入に対する年金の比率を指します。50%を下回らないことを1つの目安としていて、例えば、月30万円稼いでいた人が月15万円の年金をもらえば50%です。
 
年金の実質価値は、もらった年金で、実際にどれだけの物が買えるかです。物価が上がると、同じ金額の年金でも買えるものが減ってしまうため、この実質価値が下がっていないかが重要なポイントになります。
 

令和6年財政検証の概要

厚生労働省の「令和6(2024)年財政検証結果の概要」によると、さまざまなケースにおける将来の所得代替率を予測しています。概要は次の通りです。

●高成長実現ケース:56.9%
●成長型経済移行・継続ケース: 57.6%
●過去30年投影ケース::50.4%

現在の所得代替率は61.2%です。今回の検証では、政府が目標としている所得代替率50%という水準を、将来にわたって維持できる見通しが示された結果となっています。
 
ただし、所得代替率が現在の61.2%から将来的に下がる見込みというのは、将来もらう年金が、今より割合として少なくなる可能性があるということです。年金受給額が大きく下がるわけではないかもしれませんが、現役世代の給与に対する割合が減ることになります。結果として、将来的に年金受給額が減ったと感じる可能性はあるでしょう。
 

将来的に年金支給開始年齢が70歳に引き上げられる可能性はある

令和6年6月の経済財政諮問会議で、高齢者の定義を70歳に引き上げるという案が示されました。これは、私たちが以前よりも元気に長生きできるようになったという背景があります。この提案によって、年金をもらい始める年齢がすぐに70歳になるわけではありません。
 
しかし、健康で長く活躍できる社会を目指すなかで、現在の年金制度の前提となっている「65歳=高齢者」という考え方が見直されるとともに、年金受給開始年齢が70歳になる可能性は十分に考えられます。年金制度は、私たち一人ひとりの老後の生活を支える大切な仕組みです。一人ひとりが自身の将来を考え理解を深めていくことが大切です。
 

出典

厚生労働省 令和6(2024)年財政検証結果の概要
 
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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