40年間国民年金を払い続けて「満額」にすると、結局いくらもらえるの?受給額をもっと増やしたいときはどうしたらいい?
資産運用の相談業務
資産運用の相談業務のなかで、貯金・生命保険・投資信託・変額年金保険・投資信託・NISAを取り扱い、職員指導も行なった実績を活かし、お客さまから金融商品に限らず、相続などさまざまな相談を受ける。
現在も日本FP協会のSGに参加し、研修を継続中。わかりやすく正確な最新情報の提供に努めている。
国民年金の基本を確認
令和7年度の老齢基礎年金(国民年金を受け取るときは老齢基礎年金として受け取ります)の満額の受給額は、年間83万1696円です。この金額は40年間保険料を支払い、65歳から国民年金を受給する場合の金額です。令和6年度は年間81万6000円でしたので、少し引き上げられました。
国民年金は、日本に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入者です。
<第1号被保険者>
自営業・農林水産業・学生・アルバイト・無職
(会社員ではなく、厚生年金が適用されない人)
<第2号被保険者>
会社員・公務員・私立学校の教職員
(厚生年金の加入者)
<第3号被保険者>
第2号被保険者の配偶者
20歳以上60歳未満の間、上記いずれかの種別に該当しますので、すべての人が国民年金の加入者です。
すべての期間保険料を納めると、40年(480ヶ月)となり満額の年金を受け取れます。ただし、学生の時または無職の時に保険料を納められず免除の申請をした場合、年金は減額されますので、満額を受け取ることはできないでしょう。
そのような場合、追納制度があります。免除を申請してから10年以内であれば、支払いしていない分を追納できます。追納により満額の年金を受け取ることができます。
60歳に達しても40年(480ヶ月)支払っていない場合は、65歳までの間、足りない期間を任意加入して保険料を支払うことができます。こちらも加入期間を40年とすることで、満額を受け取れます。
受け取る年金を増やす方法はないの?
老齢基礎年金は通常65歳から受け取れます。受け取り開始を60歳または70歳など、繰上げ受給・繰下げ受給を選択することができ、繰上げ・繰下げは1ヶ月単位で行えます。
繰上げ受給は、年金を早く受け取れる分、1ヶ月繰り上げるごとに年金が0.4%減額されます。一方、繰下げ受給は、1ヶ月繰り下げると0.7%増額されます。
66歳(12ヶ月遅らせる)から受け取る場合は、8.4%増えることになり、70歳まで繰り下げると、受け取る年金は42%増えます。このように、受け取り開始を遅らせることで、受け取る年金を増やせます。
ただし、繰上げ・繰下げには注意も必要です。一度繰上げ・繰下げを行うと後から変更はできません。長生きすれば、多く受け取れますが、何歳まで受け取れるかは予想できませんので、よく考えて行いましょう。また、年金額が増える分、住民税、社会保険料の金額が変わる場合があるため注意が必要です。
厚生年金の加入もある場合、繰下げ受給を行うと加給年金(配偶者が受け取る年金)が受け取れなくなる場合があります。
ご自身の状況を考えて、選択しましょう。
その他、受け取る金額を増やす方法
受け取る金額を増やす方法として、
●付加保険料を納める
●国民年金基金に加入する
●iDeCoに加入する
これらの方法があります。すべて公的な年金制度です。
<付加保険料を納める方法>
国民健康保険料を納める際に、付加保険料400円を追加で納めておくと、年金受取時に「200円増×支払った月数」増額された年金を受け取ることができ、2年以上受け取ると納めた付加保険料額の元が取れるといわれています。
なお、付加保険料の納付と国民年金基金は併用できません。
<国民年金基金に加入する方法>
国民年金の第1号被保険者が加入できます。60歳未満または国民年金に任意加入している場合は、65歳未満の方が加入できます。
掛け金の上限は6万8000円で、iDeCoと合算になります。
特徴として、複数のタイプを選択して加入でき終身年金のタイプもあります。掛け金は社会保保険料控除の対象となり、所得税、住民税の負担が軽減されます。受け取りは60歳または65歳から、老齢基礎年金に上乗せして年金として受け取ります。受け取る年金は公的年金等控除の対象となります。
ただし、途中で脱退はできません。会社員になり第2号被保険者になるなど、加入資格の喪失により脱退した場合は、納付期間に応じた年金として受け取ります。
<iDeCoに加入する方法>
iDeCoは、国民年金の第1号被保険者、第2号被保険者、第3号被保険者が加入できます。自営業などの第1号被保険者の場合、国民年金基金と合算で6万8000円まで加入できます。
原則として60歳から年金として受け取れますが、加入期間により65歳など引き延ばされます。特徴としては、金融機関が扱っている商品、預貯金、公社債、投資信託、株式、などから選択して運用する点です。受け取る年金額は確定していません。運用の成果によって決定します。
手数料がかかり、選んだ金融機関により手数料が違います。また、掛け金には所得控除があり、所得税、住民税が軽減されます。
このように、どの制度を利用しても税金面で優遇されるため、加入を検討することも方法の一つでしょう。このほかには、民間の個人年金に加入したり、NISAを利用したりするなどの方法もあります。
おわりに
以上、公的年金について確認しました。受け取ることができる年金額は、ねんきん定期便・ねんきんネットで確認できます。どのような受け取り方をするか、その他の年金制度も利用するか、ライフプランに合わせて選択しましょう。
執筆者 : 神津喜代子
資産運用の相談業務
