生活費が心配で62歳から「年金の繰上げ」を始めましたが、「長生き」すると「損」になることもあると知りました。もらった分を返せば、「65歳からの受給」に変更できますか?

配信日: 2025.08.17 更新日: 2025.10.21
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生活費が心配で62歳から「年金の繰上げ」を始めましたが、「長生き」すると「損」になることもあると知りました。もらった分を返せば、「65歳からの受給」に変更できますか?
年金の受給を62歳で始めると、受給額は繰上げた分だけ減額され、その影響は一生続きます。このような選択をしたものの、長生きすると有利ではないことに気づいた方もいるかもしれません。
 
しかし、一度繰上げた年金を返して、65歳から受給開始に変更することはできるのでしょうか。この記事では、62歳からの繰上げの影響と「変更」について、分かりやすく説明します。
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生活費の不安から「62歳繰上げ受給」を選ぶ人がいる背景

老齢基礎年金の受給開始年齢は原則65歳ですが、60歳から65歳未満の間に繰上げることができます。
 
2024年の総務省統計局の家計調査によると、65歳以上の無職世帯では消費支出が前年より増加しており、具体的には、食料品の価格高騰が支出の押し上げに影響しています。
 
こうした背景から、退職後の収入減に対応するため、年金を前倒しで受け取る選択をする人もいます。早期受給により毎月の生活資金にゆとりが生まれる一方で、その後の長期的な影響も理解しておく必要があるでしょう。
 

繰上げ受給は長生きすると不利?

生活費の補填や早期の資金確保というメリットがある一方で、受給期間が長くなるほど、65歳から受け取る場合と比べて累計額に差が広がります。繰上げ受給では、受給開始を早めた1ヶ月ごとに0.4%ずつ年金額が減額され、その減額は一度始めると生涯続きます。
 
例えば、65歳から満額で年額78万円の老齢基礎年金を受け取る予定の人が、62歳から受給を始めると36ヶ月早めることになり、0.4%×36ヶ月=14.4%の減額率が適用されます。
 
2025年度の老齢基礎年金の満額は、年額 83万1700円(月額:6万9308円)なので、これを14.4%減額すると
 
83万1700円 × (1 − 0.144)=約71万2100円(月額:5万9350円)
 
となり、減額された年金額が生涯続きます。
 

もらった年金を返せば「65歳受給」に変更できる?

繰上げ受給を始めたあと、「もらった年金を全額返せば、65歳からの満額に戻せるのでは?」と考える人もいるでしょう。しかし、日本年金機構の公式説明によれば、「老齢年金を繰上げ請求した後は、繰上げ請求を取り消しすることはできません」と明記されています。
 
返還による受給年齢の変更はできず、減額された年金額がその後も一生続きます。
 
繰上げ受給を選択する際には、条件を理解したうえで申請する仕組みとなっているため、後からの変更や返金による取り消しは認められていません。
 

後悔しないために繰上げを選ぶ前に確認したいこと

繰上げ受給は、一度選べば生涯にわたり金額が低くなります。生活費の不足解消には役立ちますが、将来的な医療費・介護費、物価上昇なども考えて慎重に判断する必要があります。
 
全国の年金事務所・街角の年金相談センターなどでは、年金見込額や繰上げ・繰下げによる受給額の比較試算を受けられるようです。事前に相談し、自身の貯蓄・資産・健康状態なども踏まえて、慎重に判断しましょう。
 

もらった分を返しても「65歳からの受給」に変更することはできない。事前の試算で納得できる選択をしましょう

結論として、一度繰上げ受給を始めると、受け取った年金を返して65歳からの受給額に戻すことはできません。制度上、請求後の取り消しや金額の回復は認められておらず、減額は生涯続きます。
 
そのため、繰上げを検討する場合は、繰上げ・繰下げの試算を行い、自分の健康状態や家計状況、今後の収入見込みなどを踏まえて判断することが大切です。将来の生活費や医療・介護の備えも含めてシミュレーションしておけば、「選んでよかった」と思える受給開始時期を選べるでしょう。
 

出典

日本年金機構 年金の繰上げ受給
日本年金機構 令和7年4月分からの年金額等について
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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