あと数日で年金受給開始日だった父が亡くなってしまいました。受け取るはずだった「年金」はどうなりますか?
特に、受給開始直前や受給途中で亡くなった場合、年金の支給額や受け取り方法、手続き期限などは少し複雑な仕組みになっているようです。
この記事では、年金受給予定者が亡くなった場合の年金の行方や、遺族が受け取れる「未支給年金」の仕組み、手続きの流れ、そして税金の取り扱いまで、分かりやすく解説します。
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年金は「死亡月まで」が支給対象
年金は基本的に、受給者が生きていた月までが支給対象となります。たとえば、お父さまが3月15日に亡くなった場合、3月分までは受け取る権利があり、それ以降の分は支給されません。
ここで注意したいのは、年金の支給方法が「後払い」になっている点です。多くの場合、年金は2ヶ月分をまとめて振り込むため、死亡後も一時的に口座に振り込まれるケースがあります。しかし、亡くなった月の翌月分以降の年金は受け取る権利がないため、もし振り込まれてしまった場合は返還しなければなりません。
「未支給年金」として遺族が受け取れる
亡くなった方が生前に受け取る予定だった分は「未支給年金」と呼ばれます。これは、相続財産とは別の扱いで、生計を同じくしていた3親等以内の親族が受け取ることができます。配偶者や子ども、父母、祖父母、兄弟姉妹などが対象です。
たとえば、お父さまが年金の初回支給日を迎える前に亡くなった場合でも、亡くなるまでの期間に受給資格が発生していた分については、遺族が請求することで受け取ることが可能です。これは「相続財産」ではないため、遺産分割協議の対象にならず、受け取る権利は請求した人個人に帰属します。
手続きの流れと期限
まず最初に行うべきは、年金事務所への「受給権者死亡届(報告書)」の提出です。マイナンバーと年金情報がすでに連携している場合、死亡届が不要になるケースもありますが、念のため年金事務所に確認することをおすすめします。
次に、未支給年金を受け取るための「未支給年金・未支払給付金請求書」を提出します。申請に必要な書類は以下の通りです。
・亡くなった方の年金証書
・亡くなった方と請求する方の続柄が確認できる書類(戸籍謄本または法定相続情報一覧図の写し等)
・受け取りを希望する金融機関の通帳
亡くなった方と請求する方が別世帯の場合は「生計同一関係に関する申立書」が必要です。また、戸籍謄本などの書類は亡くなった日より後に交付されたものが必要です。
税金の取り扱いにも注意
未支給年金は相続税の課税対象にはなりません。国税庁によると、「未支給年金請求権については、当該死亡した受給権者に係る遺族が、当該未支給年金を自己の固有の権利として請求するものであり、当該死亡した受給権者に係る相続税の課税対象にはなりません」とされています。
ただし、受け取った年金は「一時所得」として所得税の対象になる場合があります。
一時所得は、年間の総額から特別控除額50万円を差し引いた残りに、さらに2分の1を掛けた金額が課税対象になります。受け取った金額が比較的少額であれば課税されないケースが多いですが、多額の場合は翌年の確定申告が必要になることもあります。
手続きをスムーズに進めるためのポイント
葬儀や遺品整理の忙しい時期に年金の手続きまで行うのは大変ですが、未支給年金は放置しておくと時効で受け取れなくなります。必要書類の多くは役所や金融機関で入手できるため、死亡届の提出と同時に集め始めると効率的です。
また、振り込まれた金額が返還対象かどうかは、年金事務所で確認することができます。誤って使ってしまうと返金時に自己負担が生じる可能性があるため、通帳記録をこまめに確認しましょう。
まとめ
お父さまが年金受給直前で亡くなられた場合でも、亡くなった月までに発生している分の年金は「未支給年金」として遺族が受け取ることができます。ただし、手続きを行わなければ自動的には支給されません。
死亡届と未支給年金の請求を確実に行い、必要書類をそろえることが重要です。また、誤って振り込まれた分は返還しなければならないため、口座管理も欠かせません。
税金面での扱いも理解しておけば、後々のトラブルを防げます。遺族としては大変な時期ではありますが、正しい知識を持って早めに行動することで、故人が残した権利をきちんと引き継ぐことができるでしょう。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
