今年から年金「15万円」の受給開始。現役なので「月に30万円」の収入があるのですが年金の壁は心配ないでしょうか?

配信日: 2025.08.20 更新日: 2025.10.21
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今年から年金「15万円」の受給開始。現役なので「月に30万円」の収入があるのですが年金の壁は心配ないでしょうか?
在職老齢年金について、仕組みや支給条件が気になっている方もいるでしょう。
 
働きながら年金を受け取る場合、収入によっては年金の一部が調整されることがあり、制度の内容を理解していないと、支給停止や減額につながるおそれもあります。
 
働きながら年金を受け取るためには、年齢や収入に応じた制度のポイントをおさえておくことが大切です。今回は、在職老齢年金制度の概要と仕組みについて解説します。
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在職老齢年金制度とは

在職老齢年金制度は、厚生年金を受給しながら働く60歳以上の人を対象にした仕組みで、一定以上の賃金がある場合に、老齢厚生年金の一部またはすべてが一時的に支給されなくなる制度です。
 
この制度には、年齢によって2つの枠組みがあります。1つは60歳代前半を対象としたもので、もう1つは65歳以降の人に適用されるものです。60歳代前半の仕組みは、まだ定年を迎えていない就労期間中であることを前提に、収入が低い人の生活を支える目的で設けられてきました。
 
一方、65歳以降については、年金を受け取りながら働き続ける人が増えている中で「働くことによって損をしないようにする」「賃金が高い人には、年金の給付を一定程度おさえることで、制度全体の支え手としての役割も期待する」という2点をふまえて制度が調整されてきました。
 
2020年の法改正(2022年施行)では、60歳代前半に支給される「特別支給の老齢厚生年金」にも、65歳以降と同じ計算ルールが適用されるようになりました。この変更により、年金の支給停止基準が緩和され、働いている高齢者が不利になりにくい仕組みへと近づいています。
 

年金の壁とは

在職老齢年金制度では、その月の標準報酬月額(賞与を含めた月割り分)と加給年金額を除いた老齢厚生(退職共済)年金(報酬比例部分)の月額の合計が一定の金額を超えると、年金の一部が支給されない場合があります。
 
報酬とは、基本給に加えて、役職手当や通勤手当、残業手当などの各種手当を含む、毎月決まって支払われる金額のことです。ただし、臨時的に支払われるものや、3ヶ月を超える間隔で受け取る賞与などは含まれません。
 
この報酬月額は、8万8000円から65万円までの範囲で32段階の等級に分類されており、該当する等級に応じた金額が「標準報酬月額」として年金制度の計算に使われます。
 
現在の制度のもとでは標準報酬月額と、加給年金額を除いた老齢厚生(退職共済)年金(報酬比例部分)の月額の合計が一定額を上回った場合、その超過分の50%相当額にあたる老齢厚生年金が支給停止となります。令和7年度は、その合計金額が「51万円」と決められています。
 
この金額は年度によって変わるため、確認が必要です。また、老齢基礎年金や加給年金については影響を受けません。65歳以降に厚生年金に加入していた期間がある場合は、年金の受給開始を繰り下げても、停止となった部分が後から増額されるわけではない点に注意が必要です。
 
さらに、70歳未満で厚生年金に加入している場合は、働いているあいだも引き続き保険料を支払う必要があります。このように「年金の壁」は、働きながら年金を受け取る際の調整制度であり、収入の状況によっては手取り額に影響が出る可能性があるため、制度の仕組みを理解しておくことが重要です。
 

30万円の収入がある場合年金は受給できるのか

今回のケースの場合、年金15万円と給与30万円を合わせると、月の合計は45万円になります。この金額は、現在の在職老齢年金制度における支給停止基準である「51万円」を下回っているため、原則として老齢厚生年金の支給停止は起きないと考えられます。
 
また、計算の際に注意が必要なのは、年金15万円の内訳です。この中には老齢基礎年金や加給年金が含まれています。これらの年金は支給停止の対象外であり、実際に調整の対象となるのは、老齢厚生年金の報酬比例部分のみです。さらに、給与に関しても、各種手当や賞与を月割した金額を考慮する必要があります。
 
したがって、支給停止の有無を判断する際には、「45万円から老齢基礎年金と加給年金を差し引いた額」に「手当および賞与の月割り額」を加えた金額が51万円を超えるかどうかがポイントになります。賞与の有無や金額によっても状況が変わるため、年間を通じた収入見込みを確認しておくとよいでしょう。
 

年金15万円で月に30万円の収入がある場合は老齢厚生年金の支給停止はしない

今回は、在職老齢年金制度について解説しました。在職老齢年金は、年金を受け取りながら働く人の収入に応じて、老齢厚生年金の支給額が一部調整される仕組みです。
 
制度のしくみを理解することで、年金受給と就労の両立に向けた計画が立てやすくなります。特に、60歳代前半と65歳以降では制度の位置づけが異なるため、自分の年齢や収入に応じた対応が必要です。
 
支給停止の基準となる収入額は定期的に見直されており、給与や賞与の組み合わせによって支給額が変わる可能性もあります。年金を減らさずに働くためにも、制度の内容を確認しておきましょう。
 

出典

厚生労働省 第10 在職老齢年金・在職定時改定 在職老齢年金とは
日本年金機構 年金の繰下げ受給 繰下げ加算額
公益財団法人生命保険文化センター 在職老齢年金について知りたい 年金+月給などが「51万円超」なら年金額を調整
日本年金機構 60歳以降も引き続き勤めます。勤めていても年金は受けられますか。働きながらでも老齢年金を受け取ることができます。
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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