遺族年金が「5年の有期給付」に改悪! 夫に相談したら「ウチは関係ないから大丈夫」と言われたけど、どういうこと?「38歳専業主婦・夫婦2人暮らし」のケースで解説

配信日: 2025.08.21 更新日: 2025.10.21
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遺族年金が「5年の有期給付」に改悪! 夫に相談したら「ウチは関係ないから大丈夫」と言われたけど、どういうこと?「38歳専業主婦・夫婦2人暮らし」のケースで解説
最近、遺族年金の改悪が話題になりました。施行は2028年度からで、家族構成や年齢などによって違いがありますが、特定の人にとっては確かに改悪となる内容です。
 
しかし、この制度改正は分配の見直しが目的であり、全ての人の給付が減るのではなく、今まで通りの給付を受けられる人や、新たに給付される人がいることも事実です。大事なことは、自分は影響を受けるのかどうかを正しく理解することです。
 
本記事では、遺族年金の制度改正の具体的な内容、「改悪」と言われる理由、改正の影響を受けない人の条件について解説します。
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遺族年金の制度改正が「改悪」と言われる理由は?

遺族年金とは、家族が亡くなったとき、その亡くなった人の収入で生計を立てていた遺族に支給される年金です。遺族年金には大きく分けて「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」がありますが、今回の制度改正で改悪されると話題になっているのは遺族厚生年金です。改悪と呼ばれる2つの理由を解説します。
 

無期給付から有期給付へ変更

改悪と言われる1つめの理由は、子のいない配偶者は今まで遺族厚生年金を無期給付されていましたが、改正後は原則として5年間の有期給付に変更される点です。現在、要件を満たす子のいない配偶者への遺族厚生年金の支給は、配偶者と死別した時点の配偶者の性別や年齢で次のような違いがあります。
 

・配偶者が30歳未満の女性:5年間の有期給付
・配偶者が30歳以上の女性:無期給付
・配偶者が55歳未満の男性:給付なし
・配偶者が55歳以上の男性:60歳から無期給付

 
これが制度改正後は男女の区別をなくし、次のようになります。
 

・配偶者が60歳未満:原則5年間の有期給付(配慮が必要な場合は5年目以降も継続給付)
・配偶者が60歳以上:無期給付

 
制度改正により、死別した時点で30歳以上60歳未満の配偶者の女性にとっては、現状が無期給付であるところから、改正後5年間の有期給付に変わるため、改悪と言われています。
 
施行は2028年からとなっており、男性は2028年4月から、女性は2028年4月からは無期給付を受けられる年齢が40歳以上に引き上げられ、そこから20年間で段階的に有期給付に変更されます。
 

中高齢寡婦加算が段階的に廃止

改悪と言われる2つめの理由は、40歳から65歳までの子どもがいない妻に上乗せされていた「中高齢寡婦加算」が25年間で段階的に廃止される点です。現在の中高齢寡婦加算は、一定の条件を満たす場合に年額62万3800円が支給されます。2028年からこの支給額が徐々に減額され、25年後に廃止される予定です。
 
減額とはいうものの、一度受け取り始めた人は65歳の支給終了まで同じ金額が継続給付されます。しかし、現行制度よりも支給額が減る人が生じることに変わりはありませんので、改悪と呼ばれています。
 

改正の影響を受けない人はどんな人?

ここまで解説した通り、今回の改悪と言われる内容は、どちらも子どものいない女性が対象です。一方で、今回の改正が全ての子どものいない女性に影響するのではなく、影響を受けなかったり、一部分しか影響を受けなかったりする人がいます。具体的に解説します。
 

影響を受けない人

改正内容が施行される2028年度時点で、すでに遺族厚生年金を受給し、かつ中高齢寡婦加算も受給している人は影響を受けることなく、現行の給付内容が維持されます。
 

一部分しか影響を受けない人

2028年度に40歳以上である人については、無期給付が有期給付になる点については対象外となり影響を受けません。ただし、中高齢寡婦加算については、2028年以降に新規で受給を開始する場合は、段階的に縮小された額で受給することになるため影響を受ける可能性があります。
 
今回のケースで言えば、現在38歳の妻は2028年度には40歳以上となっており、無期給付が有期給付に改正される影響は受けないため、夫は妻に「君は大丈夫」と言ったと考えられます。この2028年度に40歳を超えるかどうかが大きな分岐点になることを覚えておきましょう。
 

改正内容を理解して自分への影響を正しく認識しよう

遺族厚生年金が改悪されると言われるのは、無期給付だった人が2028年から段階的に5年間の有期給付に変わることと、中高齢寡婦加算が段階的に廃止されることが主な理由です。しかし、すでに遺族厚生年金を受給している人や2028年度に40歳以上の人は、改正の影響を受けずに従来通りの給付が続きます。
 
例えば、現在38歳の人は改正施行時の2028年には40歳以上になるため、影響を受けません。改悪だという話題に振り回されずに、正しく制度を理解した上で今後のライフプランを考えましょう。
 

出典

厚生労働省 遺族厚生年金の見直しに対して寄せられている指摘への考え方
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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