「70歳まで繰下げてから年金受給をする」と言っていた夫が受給前に亡くなってしまいました。受け取れなかった年金はどうなるのでしょうか。

配信日: 2025.08.21 更新日: 2025.10.21
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「70歳まで繰下げてから年金受給をする」と言っていた夫が受給前に亡くなってしまいました。受け取れなかった年金はどうなるのでしょうか。
年金を65歳からではなく、70歳まで「繰り下げて受給しよう」と思っていた配偶者が、まだ受給していないうちに亡くなってしまった場合、本来受け取る予定だった年金はどうなるのか気になるところです。
 
このようなケースにおいて、「未支給年金」として遺族が受け取れる可能性のある制度があります。さらに該当すれば遺族年金も同時に支給されることがあります。
 
本記事では、「繰下げ受給」の仕組みから、未支給年金の内容、請求方法、時効や税金の取り扱いまで、分かりやすく解説します。
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繰下げ受給の基本とその目的

繰下げ受給とは、本来65歳から始まる老齢年金(国民年金・厚生年金)を、最大75歳まで受給を遅らせることができ、受給額が一定の割合で増える制度です。毎月0.7%ずつ増え、5年間遅らせると42%増額されます。夫が70歳まで繰り下げようと計画していたのは、より高い受給額を得るための合理的な選択といえるでしょう。
 

「未支給年金」とは何か

では、受給開始前に亡くなってしまった場合、受け取れなかった年金はどうなるのでしょうか。このような場合には、まだ支給されていなかった「未支給年金」として、受け取れるかもしれません。
 
年金は通常後払い方式で、たとえば4月15日に支払われる年金は2月と3月の分です。このため、受給前に亡くなった場合は「支給されるはずだった年金」が未支給年金として扱われます。
 
ところが、増額される予定だった繰り下げ分は適用されず、あくまでも65歳時点の本来の年金額を基準に、亡くなるまでの期間分が支給されるようなので注意が必要です。
 

具体例で見る未支給金額

たとえば、65歳時点で受給する予定だった年金額が年200万円だったとします。もし69歳で亡くなった場合、未支給年金として受給できるのは「65〜69歳までの5年間分」であるため、200万円×4年11ヶ月(※70歳の誕生日の前月で亡くなった直後の場合)=約983万円が遺族へ支払われるでしょう。
 
これは、繰り下げによって42%増額された受給予定額ではなく、あくまでも「本来の年金額」を基に計算されます。
 
前述にもあるように、この未支給年金には「5年の時効」があります。つまり、繰下げ待機期間が5年を超える場合、65歳直後の分からは受け取れず、時効で失効してしまうようなので注意が必要です。
 

未支給年金の請求手続き

未支給年金を受け取るには、まず「受給権者死亡届」と「未支給年金請求書」を提出する必要があります。提出先は日本年金機構の最寄り窓口で、なるべく早く手続きをすることが望ましいでしょう。
 
また、提出には戸籍謄本や住民票、銀行口座情報など、関係を示す書類が必要になるようなので、確認してから提出に行くことをおすすめします。
 

遺族年金との併給について

さらに、遺族年金(遺族基礎年金・遺族厚生年金)の受給資格がある場合には、未支給年金とは別に支給される可能性もあるため、未支給年金(一次金)と、通常の遺族年金(継続的支給)の両方を受け取れることがあります。
 
また、未支給年金は「一時所得」として扱われ、一定の控除のもとで課税対象となります。相続税の対象にはなりませんが、確定申告により所得税・住民税の申告が必要となります。
 

まとめ

70歳まで繰り下げて年金受給を予定していた配偶者が、受給前に亡くなってしまった場合でも、「未支給年金」として、65歳時点での本来の年金額をもとに計算された金額を遺族が受け取ることが可能です。繰り下げによる増額は含まれず、かつ請求には5年の時効があるため、早めの対応が重要です。
 
さらに、遺族年金の対象になる場合には、それと併せて受給できる可能性もあります。手続きや税金の扱いについても留意し、必要に応じて年金事務所に相談するのがおすすめです。
 
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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