「私たちの老後にはもう年金はなくなっているかも…」という声を聞きますが、実際の年金額ってどうなの? 年々減っているのですか?

配信日: 2025.08.22 更新日: 2025.10.21
この記事は約 3 分で読めます。
「私たちの老後にはもう年金はなくなっているかも…」という声を聞きますが、実際の年金額ってどうなの? 年々減っているのですか?
「私たちの老後にはもう年金がなくなっているかも……」そんなことを考えたことはありませんか? ニュースやSNSで広がる将来不安。実際のところ、年金額は本当に減り続けているのでしょうか?
 
この記事では、私たちの老後を支える実際の年金額について、数字から客観的に見ていきましょう。
FINANCIAL FIELD編集部

ファイナンシャルプランナー

FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。

編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。

FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。

このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。

私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。

実際の年金額は減っているのか? 現状の受給額を確認

少子高齢化の中、年金受給額は「年々減っている」と感じる方もいるかもしれません。しかし、実際の年金額(老齢基礎年金・満額)はここ数年、増額傾向にあり、満額受給の場合の月額は次の通りです。

●2023年度:6万6250円
●2024年度:6万8000円
●2025年度:6万9308円

ただし、満額を受給している人ばかりではありません。例えば、厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、2023年度における国民年金の平均受給月額は5万7700円で、満額の約87%です。また、厚生年金と国民年金が併給される世帯では、平均受給月額は14万7360円です。
 
このように年金受給額は減少どころか、近年は緩やかに増えている傾向にあるといえます。
 

「減った」と感じる背景とは? 物価や制度の仕組みから見る実質の価値

年金額が名目上では増えていても、「実感できない」と感じる理由には以下のような背景があります。

●マクロ経済スライドの導入
●所得代替率の低下
●物価上昇による実質価値の低下

物価や賃金の変動に応じた年金額の調整が行われますが、少子高齢化に伴う制度持続のため、マクロ経済スライドが導入されました。これは、「賃金上昇率」から一定の調整率を差し引いた率で上昇させる仕組みです。2000年以降、賃金下落時には年金も減少、賃金上昇時には上昇を抑える傾向があり、実質的な上昇は限定的です。
 
また、年金受給額が現役世代の手取り収入に対してどれくらいの割合になるかを示す所得代替率は、2019年以降は低下傾向です。このままの傾向が続けば、2060年前後には50%程度まで低下する可能性があると考えられています。
 
たとえ年金額が上昇しても、インフレ分を上回っていなければ、購買力ベースでは低下と感じられます。特に食料品や光熱費など必需品の値上がりが顕著な今、その影響は受給者にとって体感しやすい部分です。
 

年金制度改正や支援制度

年金額は毎年、名目賃金や物価の動向とマクロ経済スライドを勘案して改定されます。2025年度の老齢基礎年金(満額)の増額もこれに基づくものです。こうした調整が毎年行われることで、名目上の支給額は維持・増加されているといえます。
 
支援制度としては、一定所得以下の年金生活者を対象にした「年金生活者支援給付金」があり、条件を満たせば保険料の納付期間に応じて年金に上乗せして支給される仕組みです。
 
年金制度を維持するための制度改革は頻繁に行われており、このような取り組みは「年金が完全になくなる」という不安を一定程度和らげる要素となっています。
 

まとめ

年金は近年、増額の傾向がみられ、制度としても政策上維持されています。そのため、年金が完全に廃止される可能性は低いといえます。ただし、将来的に受給額が減る可能性はあるため、資産運用や貯蓄、iDeCoなど、自助努力による備えも検討しておくことが大切です。
 
「年金がなくなるかもしれない」と不安に思うだけでなく、確かなデータを踏まえ、自らの対策を積み重ねることで、安心できる老後への道筋を描いていきましょう。
 

出典

厚生労働省年金局 令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況 II. 厚生年金保険 (2)給付状況 表6 厚生年金保険(第1号) 受給者平均年金月額の推移(8ページ)、III. 国民年金 (2)給付状況 表20 国民年金 受給者の平均年金月額の推移(19ページ)
 
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

  • line
  • hatebu
【PR】 SP_LAND_02
FF_お金にまつわる悩み・疑問