66歳「月給48万円」で働く会社員。現在年金の「一部が支給停止」されていますが、会社を辞めても“戻ってこない”んですか!? 高い給与で働くと“損”なのでしょうか?

配信日: 2025.08.23 更新日: 2025.10.21
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66歳「月給48万円」で働く会社員。現在年金の「一部が支給停止」されていますが、会社を辞めても“戻ってこない”んですか!? 高い給与で働くと“損”なのでしょうか?
高齢になっても、年金を受給しながら働く人が増えています。年金と給与のダブル収入で生活にゆとりができそうですが、実は収入が一定以上になると、年金が支給停止されてしまうのです。
 
「でも停止されているだけだから、退職したら戻ってくるんでしょ? 」と思うかもしれませんが、実際はどうなのでしょうか? 本記事では、老齢年金と給与の関係や支給停止の仕組みなどについて解説します。
橋本典子

特定社会保険労務士・FP1級技能士

老齢年金はどんなときに支給停止される?

老齢年金が支給停止になるのは、老齢厚生年金を受ける人に、一定以上の給与収入があるときです。
 

在職老齢年金のしくみ

在職老齢年金の制度とは、年金を受給しながら働く高齢者で一定額以上の収入がある人に対して、年金の支給を調整する仕組みです。次の両方に当てはまる場合、年金の一部または全部が支給停止されます。

●老齢厚生年金の被保険者が、老齢厚生年金を受給するとき
●老齢厚生年金の「基本月額」と「総報酬月額相当額」が51万円を超えるとき

基本月額とは、老齢厚生年金の年額を12で割った金額です。つまり「1ヶ月分の年金額」といえます。
 
総報酬月額相当額とは、標準報酬月額と、直近1年間の標準賞与額の合計を12で割った金額の合計額です。賞与分を加算した「1ヶ月分の給与収入」と考えるとわかりやすいでしょう。
 

支給停止額はいくら?

基本月額と総報酬月額相当額が51万円(2025年度)を超える場合、「超えた分」の2分の1の額の老齢厚生年金が支給停止されます。
 
本ケースの人の場合で考えてみましょう。基本月額が10万円、総報酬月額相当額が48万円だとすると、合計額は58万円ですから、(58万円-51万円)÷2で、支給停止額は3万5000円になります。
 
なお支給停止されるのは老齢厚生年金であり、老齢基礎年金は停止されません。
 

支給停止の対象になる人・ならない人

支給停止されるケースと支給停止されない人について、例示します。
 
ケース1:給与(総報酬月額相当額、以下同)40万円+年金(基本月額、以下同)10万円
40万円+10万円で、51万円以下なので、支給停止の対象にはなりません。
 
ケース2:給与45万円+年金10万円
(45万円+10万円-51万円)÷2で、2万円が停止されます。
 
ケース3:給与40万円+短時間アルバイト代5万円+年金10万円
支給停止の計算における「給与」は厚生年金に加入している分だけです。厚生年金に加入していない短時間アルバイト分は算入されないため、40万円+10万円で、51万円以下なので、支給停止の対象にはなりません。
 
ケース4:個人事業収入50万円+年金10万円
自営業者は厚生年金保険に加入していないため、たとえ高額な収入があったとしても、支給停止の対象外です。
 

支給停止された年金はどうなる?

一定収入があると停止されてしまう老齢厚生年金。では、退職して給与収入がなくなったら戻ってくるのでしょうか?
 
年金が停止されていた人でも、退職すれば支給停止は解除されます。ただし在職老齢年金の仕組みによって停止されていた分が、後でまとめて受給できるわけではありません。停止されていた年金が、自分のもとに戻ることはないのです。
 
「では、年金が停止されるほど高い給料で働いたら損じゃないの?」と思うかもしれません。
 
確かに、現在の仕事が体力や家庭の事情に多大な負荷をかけているような場合は、労働時間や仕事内容を見直して給与を下げ、年金を満額受給したほうがよいという考え方もあるでしょう。
 
しかし働くことで年金が停止されても、その分の標準報酬月額や標準賞与額は、年金記録に積み上がっていきます。そのため、いずれ退職したときに受給できる年金額は増加するのです。そう考えれば、一概に「損」とも言えないのではないでしょうか。また仕事を続ける意義を、お金だけでなく体力の維持や他人との関わりと考える人も少なくありません。
 

まとめ

在職老齢年金の仕組みは国が決めたことなので変えられませんが、働き方やライフスタイルは個々人が選べます。私生活を大事にして短時間のみ働きたい人、体力の続く限り高給のまま頑張りたい人など、さまざまでしょう。年金の支給停止額だけで損得を判断せず、ご自身の生活の充実度を重視していきましょう。
 

出典

日本年金機構 在職老齢年金の計算方法
 
執筆者 : 橋本典子
特定社会保険労務士・FP1級技能士

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